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#470 「特例有限会社甲社事件」高松地裁

2018年9月19日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第470号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【特例有限会社甲社事件・高松地裁判決】(2017年4月18日)

▽ <主な争点>
元代表取締役、元従業員による割増賃金、賞与・退職金、損害賠償等の請求など

1.事件の概要は?

本件は、Aらが甲社に対し、労働契約に基づき、(1)時間外労働等による平成25年3月から12月までの割増賃金、(2)労働基準法114条に基づく付加金、(3)25年の冬季賞与および(4)退職金を請求し、(5)いわゆるパワーハラスメントによって精神的苦痛を受けたことを理由とする不法行為、債務不履行(安全配慮義務違反)または会社法350条に基づく慰謝料および弁護士費用相当額の損害賠償等を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<甲社、乙およびAら3名について>

★ 甲社は、インターネットを利用した小売業(ネットショップの運営)を主たる業務として行う特例有限会社である。

★ 乙は、甲社設立時の代表取締役であり、平成17年1月に代表取締役を辞任した後も25年10月まで取締役を務めていた者である。乙は当時、甲社の発行済み株式の85%を有していた。

★ Aは、23年4月に甲社に雇用され、25年9月から代表取締役として登記され、同年12月に同社を退職した者である。

★ Bは、25年3月に乙が全株式を保有する丙社の代表取締役に就任し、26年1月に辞任した者である。

★ Cは、24年3月から26年1月まで甲社に雇用されていた者である。

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<甲社の規定、Aらの給与の支給状況等について>

★ 甲社には就業規則がなく、賞与や退職金の支給について定めた規定も存在しない。

★ Aは25年3月から12月まで毎月、甲社から基本給13万円、残業手当1万5000円、技能手当4万円、役職手当6万円の合計24万5000円が支給され、25年8月分までは社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料)、所得税および家賃が控除されていたが、同年9月分以降、雇用保険料は控除されていない。

★ Bは25年3月から12月まで毎月、丙社から基本給15万円が支給され、健康保険料、厚生年金保険料および所得税が控除されていた。また、同期間に毎月、甲社から基本給15万円が支給され、所得税が控除されていたが、社会保険料は控除されていない。

★ Cは25年3月から12月まで毎月、甲社から基本給13万円、残業手当3万8000円の合計16万8000円が支給され、社会保険料および所得税が控除されていた。

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<Aらが退職に至った経緯等について>

▼ 25年9月頃、Aと乙との関係が悪化し、乙は同年10月にAらとの間に信用がなくなったなどとして甲社を解散する旨のメールを送信するとともに、同社の取締役を辞任した。また、乙は同年12月、弁護士とともに甲社を訪れ、株主総会決議があったとして、Aを代表取締役から解任することを宣言した。

▼ Aらは26年1月、弁護士を通じて、甲社に対し、Bが丙社の代表取締役および取締役を辞任すること、Cが甲社を退職することなどを伝えた。

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