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#94 「トピック事件」東京地裁(再掲)

2005年7月6日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第94号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【トピック(以下、T社)事件・東京地裁判決】(2002年10月29日)

▽ <主な争点>
経営悪化を理由とする給与減額の合意の有無/解雇の意思表示の有無等

1.事件の概要は?

本件は、Xが(1)T社は経営悪化を理由に2回にわたる給与減額をしたが、承諾していないとする未払い賃金支払い請求、(2)T社は解雇の意思表示をしたとする解雇予告手当支払い請求、(3)解雇に対する慰謝料の損害賠償請求をそれぞれ求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<T社とXについて>

★ T社は自動車の販売およびリース、自動車の修理および整備などを業とする会社であり、本社の他に板金工場、整備工場がある。

★ XとT社は平成12年4月、以下の内容で雇用契約を締結した。また、Xの担当業務は、整備工場での売上・工程管理、コンピュータの設定、自動車整備士の教育などであった。

(a)期間・・・定めなし
(b)給与・・・年俸600万円とし、毎月50万円ずつ支払う。

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<T社がXの給与を減額するまでの経緯>

▼ T社は12年11月当時、前年ほど売上が伸びず、約700万円の営業損失を計上したため、同年12月分以降、代表者Aの役員報酬を月額80万円から60万円に、取締役B(Aの妻)の役員報酬を月額50万円から20万円に、そして取締役C(Aの息子)の役員報酬を月額40万円から36万円にそれぞれ減額した。

▼ また、T社は責任者的立場にあるXに対し、経営状態が厳しいことを理由に給与の一割減額を要請するとともに、13年8月の決算後に賞与を支給する可能性があることを示唆した。そして、T社はXの12年12月分の給与を45万円へと減額した。

▼ T社は営業損失が約1100万円に拡大したため、13年1月、Xに対し、再度給与の減額を要請し、その結果、Xの同月分以降の給与を月額35万円に減額した。

▼ Xはさらに給与を減額させられるのではないかと不安を抱き、13年4月、T社に対し、電子メールで今後の給与や待遇について書面による約束を交わしたいと伝えたところ、T社は後日、Xに対し、「これ以上給与を減額しない」と口頭で約束したが、書面は作成されなかった。

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<Xが退職に至るまでの経緯>

▼ 同年7月2日、T社で毎月定期的に行われる全体会議の際、Xは報告すべき事項を準備してこなかった。そのため、T社は後日、Xに対し、会議における準備不足を指摘するとともに「会社で教育を担当する者がそれでは困る。どう改善するか、進退も含めて考えて下さい」と注意した。

▼ T社がXに対し、明確に解雇を通告したり、退職日を具体的に指定したりすることはなかったが、Xは上記全体会議の件をきっかけにT社に在職し続けることはできないと考えるようになった。

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