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#279 「ユニプラ事件」さいたま地裁熊谷支部(再掲)

2011年2月16日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第279号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【ユニプラ(以下、U社)事件・さいたま地裁熊谷支部判決】(2010年3月31日)

▽ <主な争点>
会社の不法行為または安全配慮義務違反による債務不履行に基づく損害賠償責任等

1.事件の概要は?

本件は、U社に営業職として雇用されたXが、同社工場での現場研修業務の際、積み上げられた機材(布または紙の原反)が荷崩れを起こして、Xの両膝にぶつかるという事故(以下「本件事故」という)が発生したとして、Xは本件事故およびU社の従業員から命じられた鉄芯を持ち上げる作業時に、膝を捻ったり床に強く打ち付けたりといった動作を繰り返したことが原因となり、右膝半月板損傷等の両膝関節機能障害を発症した旨主張し、U社に対し、不法行為または安全配慮義務違反による債務不履行に基づく損害賠償(計821万2729円)を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<U社およびXについて>

★ U社は、要部滑部機材(オイルレスベアリング)および合成樹脂製品等の製造および販売等を目的とする会社である。

★ X(昭和44年生の男性)は、平成15年1月、U社に営業職として雇用され、同社工場で実施された現場研修業務(以下「本件業務」という)に従事した後、同月下旬から営業部の従業員として稼働していた者である。

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<Xの傷病、退職するまでの経緯等について>

▼ U社は、Xが営業職として営業活動をするためには、同社の製品について、製造工程も含めた知識を要するため、工場における本件業務を受けさせることとした。

▼ Xは15年1月20日以降、本来の業務である営業活動に従事したが、工場での本件業務を終えた頃から、両膝、特に右膝にこれまでに感じたことのない痛みを感じるようになっていた。

▼ Xは同年3月、S病院を受診し、同月、O病院において両膝の膝関節のMRI検査を受けた結果、同年4月、S病院のF医師は「右膝外側半月板損傷および左膝内障」とする診断書を作成した。

▼ Xは同月、発生日時を同年1月16日、発生状況を「原反現場にて原反を整理中、原反が転がり膝に当たった。径500mm×1.5mの鉄芯を持ち上げる際に膝を捻った。」とする「労災および通災事故報告書」(以下「本件報告書」という)を作成し、U社に提出した。本件報告書には、事故の現認者をU社の従業員であるAとする旨の記載があるが、Aが事故を現認した事実はなかった。

▼ Xは同年7月、労働基準監督署長に対し、療養補償給付たる療養の給付請求書を提出し、Xに対し、療養補償給付が支給された。また、Xは16年、同労働基準監督署長に対し、労働者災害補償保険法に基づく障害補償給付の支給を請求した。

▼ 労働基準監督署の事務官は、Xの訴える両膝痛は業務上の負傷により発症したものと認められる旨の意見を付した調査書を作成した。

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