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#442 「Y社事件」東京地裁

2017年8月2日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第442号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【Y社事件・東京地裁判決】(2015年12月25日)

▽ <主な争点>
痴漢行為を理由とする諭旨解雇処分など

1.事件の概要は?

本件は、Y社から諭旨解雇処分を受けたXが同処分は無効である旨を主張して、同社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに解雇日の翌日以降の各賃金等の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<Y社およびXについて>

★ Y社は、旅客鉄道事業の運営等を営む会社である。

★ Xは、平成19年4月、Y社との間で期間の定めのない雇用契約(以下「本件契約」という)を締結し、駅係員として勤務していた者である。

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<本件行為から本件処分に至った経緯等について>

▼ Xは25年12月12日、Y社が運行するZ線の車内において痴漢行為(以下「本件行為」という)をしたとして、東京都の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(以下「本件条例」という)違反の容疑で逮捕された。

▼ Xは26年2月、本件行為に関し、本件条例違反の被疑事実で罰金20万円の略式命令(以下「本件略式命令」という)を受け、同年3月には罰金を納付し、本件略式命令が確定した。

★ 本件略式命令に係る公訴事実は「Xは正当な理由なく、25年12月12日午前7時24分頃からZ線の電車内において、当時14歳の被害女性に対し、その右臀部付近および左大腿部付近を着衣の上から左手で触るなどし、同女性を著しく羞恥させ、かつ、不安を覚えさせるような行為をした」というものであった。

▼ Y社は26年4月25日、「Xが逮捕され、本件略式命令が確定したことは同社の名誉を著しく損ない、社員としての体面を汚すものであること」を理由に就業規則(以下「本件就業規則」という)の規定により、同日付で諭旨解雇とする(以下「本件処分」という)旨通知した。

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<本件就業規則の定めについて>

★ 本件就業規則には、以下の内容の規定がある。

 Y社の社員に職務の内外を問わず同社の名誉を損ないまたは社員としての体面を汚す行為があったときは、社長が当該社員を懲戒する。
 懲戒は、懲戒解雇、諭旨解雇、停職、減給、けん責の5種とする。
 諭旨解雇は、予告期間を設けないで即時解雇する。
 懲戒は、懲戒委員会の議を経ることを要する。
 懲戒委員会に関する規則は、本件就業規則とは別に定める。
 Y社の社員は、必要があって解雇されたときは、社員の身分を失う。

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