#72 「フレックスジャパン・アドバンテック事件」大阪地裁(再掲)
2005年1月26日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第72号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【フレックスジャパン(以下、F社)・アドバンテック(以下、AD社)事件・ 大阪地裁判決】(2002年9月11日)
▽ <主な争点>
派遣スタッフの大量引き抜きによる損害賠償
1.事件の概要は?
本件は、人材派遣会社F社の従業員であったAら4名が同社在職中および退職後にわたって、同業のAD社と共謀して違法な方法によりF社の派遣スタッフを大量に引き抜いたとして、F社がAら4名およびAD社に対し、雇用契約上の債務不履行または不法行為に基づき、その引き抜き行為による損害の賠償を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<F社、AらおよびAD社について>
★ F社は、特定労働者派遣事業* 等を目的とする会社であり、平成12年4月1日当時、金沢営業所の派遣スタッフ数は114名、派遣先企業数は14社、富山営業所の派遣スタッフ数は68名、派遣先企業数は8社であった。
*「特定労働者派遣事業」・・・その事業の派遣労働者が常用雇用労働者のみである労働者派遣事業であり、届出制となっている。
★ AらのF社における退職直前の役職は、Aが金沢営業所の所長にあたるマネージャー、Bがそれに次ぐ地位のキャップ、Cが金沢営業所等を統括する北陸ブロックのエリアマネージャー、Dが富山営業所の所長にあたるマネージャーであった。
★ AD社は、広告代理業、出版・印刷業、特定労働者派遣事業等を目的とする会社であり、金沢市内に支店を設置している。
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<AらがF社を退職するまでの経緯>
▼ 12年初め頃、AD社はBがAD社と密接な関係にあるT社へ入社することを内諾し、AD社とT社の社名が記載された名刺をそれぞれ作成して、Bに交付した。Bは同年3月から4月頃にかけて、F社の派遣先企業の1つであるX社をしばしば訪れて、派遣スタッフにF社金沢営業所が閉鎖されるなどの虚偽の事実を述べて、AD社への入社を勧誘し、この名刺を渡した。
▼ Cは同年3月中旬頃、F社富山営業所が管理する派遣先企業Y社への派遣スタッフに対し、「F社は赤字である。自分は4月一杯でF社を退職して、AD社に移籍するが、一緒に移籍しないか」とAD社への移籍を勧誘した。
▼ 同年4月22日、BはX社への派遣スタッフ15名ほどを飲食店に集めて会合を持った。会合にはAおよびT社の代表者も同席し、Aは自分もF社を退職することを告げて、AD社に転職後も従前同様にX社に派遣されることや給与額を今よりベースアップし、入社祝い金として各人に3万円を支給するとの利益供与を申し出て転職を勧誘した。なお、この会合における派遣スタッフの飲食代はBが負担した。
▼ F社本社に「金沢営業所において、Bが派遣スタッフに対してAD社への入社を勧誘している」旨の情報が入ったため、F社のO常務らは同年4月28日、AおよびBから事情を聞くため、金沢営業所に赴いた。
▼ 同日その席でAら4名はO常務らに対し、一身上の都合により同月25日をもってF社を退職する旨の記載のある退職届を差し出し、O常務らはこれを受け取った。後日、F社はAらからの求めに応じて、離職票を交付した。なお、Aらは退職に当たって、後任者に対して何ら引継ぎ事務を行わなかった。
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<F社を退職したあとのAらの動向>
▼ 同月30日、F社の金沢営業所および富山営業所の派遣スタッフ合計182名のうち80名(金沢営業所59名、富山営業所21名)が突然一斉にF社を退職し、そのうちのほとんどが翌日にAD社に入社し、F社在籍中と同じ各派遣先企業にAD社から派遣された。
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