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#99 「エープライ事件」東京地裁(再掲)

2005年8月10日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第99号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【エープライ(以下、A社)事件・東京地裁判決】(2003年4月25日)

▽ <主な争点>
会社からの損害賠償請求(競業会社への不正な製品送付指示/忠実義務違反等)

1.事件の概要は?

本件は、A社の元従業員Xが業務上の必要がないのに競業他社へ自社製品を送付するよう指示し、またA社が受注予定であった売買において、買主を同業他社に紹介するなどし、A社に損害を与えたとして、同社がXに対し、雇用契約上の債務不履行または不法行為に基づく損害賠償請求等を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<A社およびXについて>

★ A社は各種工業用および家庭用電気機械器具の販売、設置工事等を業とする会社であり、本店以外に神奈川県相模原市と福岡県福岡市に事業所をおいている。

★ また、A社は平成11年以前から高速道路の料金所ブースに設置する竪型エアーカーテンの製造、販売を行っており、特に九州地区ではほぼ独占的に販売していた。

★ Xは5年7月、A社に雇用され、6年12月から九州支社の責任者であったが、11年7月中旬、A社から事業所移転のため自宅待機命令を受けた。同月末、XはA社から出社命令を受けたが、これに従わず、同年8月上旬に懲戒解雇された。

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<Xによる本件指示について>

▼ Xは11年7月、相模原事業所に勤務していたBに対し、竪型エアーカーテン(以下「二号機」という)一式をFD社へ送付するよう指示し(以下「本件指示」という)、Bはこれに応じて、二号機一式をFD社へ送付した。

★ 二号機は、A社の元代表者C(以下「C社長」という)が考案した製品であり、11年3月頃から出荷を始め、その頃からA社では二号機のみを販売していた。なお、一号機はDが考案し、FD社で組立調整し、A社が販売していた製品であるが、二号機はFD社にて制作したり、取付工事をしたりすることはなかった。

★ FD社はE(A社の社外取締役をしていたが、11年3月に辞任)が代表をつとめる会社であり、A社との取引もあった。

▼ 本件指示によりFD社に送付された二号機は、11年8月にA社の従業員が発見したときには梱包が解かれて放置され、新品として出荷できない状態であった。

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<FC社が受注した売買について>

★ FC社は、11年3月までA社の取締役で従業員であったDが取締役として、同年6月に設立した会社であり、設立当初の本店所在地はFD社と同一であった。また、FC社の定款の目的は、A社とほとんど同じであり、XはFC社の設立の際、約190万円を出資し、その株主となった。

▼ FC社は下記(a)(c)の通り、M社をはじめ3社との間から高速道路の料金所ブースに取り付けるエアーカーテン等の売買およびブースへの取付工事(以下「本件各売買」という)を受注した。

(a)M社との売買
▼ 11年5月、M社からエアーカーテンの見積書提出を依頼されたXは「売買価格は200万円で現金取引のみである」旨を伝えたところ、M社がこれに難色を示したので、別の業者としてFC社を紹介した。

▼ 同年6月、M社がFC社に問い合わせたところ、「価格は180万円で半分は手形払いでよい」との条件を聞き、FC社に正式発注した。

(b)L社との売買
▼ 11年4月、L社はエアーカーテンをA社に発注したが、その際、注文書の名宛人はXらの依頼により、FC社とされた。当時、L社は「FC社はA社の協力会社ないし関連会社であり、受注者をFC社としたのはA社の都合」と考えていた。

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