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#24 「K公庫事件」東京地裁(再掲)

2004年2月4日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第24号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【K公庫事件・東京地裁判決】(2003年6月20日)

▽ <主な争点>
採用選考時に本人に無断で肝炎検査、B型肝炎感染を理由とする内定取消など

1.事件の概要は?

本件は、K公庫の採用選考に応募したXが、B型肝炎に感染していることのみを理由として内定を取り消されたこと、Xに無断でB型肝炎の検査をされたことにより精神的苦痛を被ったとして、不法行為による損害賠償を同公庫に対して求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<Xについて>

★ Xは、平成9年、K公庫の翌春大学卒業予定者を対象とする採用選考に応募し、5月末に行われた四次面接終了後、同公庫に対し、「私は今後、信義にもとる行為は行わず、指示に基づく注意事項を遵守します」という旨の書面を提出した者である。

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<本件ウィルス検査等について>

▼ 6月1日の適性(知能・性格)検査に続き、Xは翌2日K公庫による健康診査を受診した。その後、同公庫のJ職員の指示により、Xは最初に面談を受けたM職員(Xの大学OB)と連絡をとったところ、同職員から「おめでとう」等の祝いの言葉をかけられて、食事に招待された。

▼ K公庫はXに対し、肝臓の数値が高いので再検査を受けるように指示し、Xは同月18日に肝機能の検査を受けた。

▼ 上記検査結果でも基準値を超えていると判断したK公庫はXに対し、も
う一度検査を受けるよう指示し、これに応じたXは同月30日に検査を受けた。この検査には肝機能検査のみならず、B型肝炎ウィルス感染の有無を判定するための検査(以下「本件ウィルス検査」という)も含まれていたが、Xはウィルス検査をすることを知らされていなかった。

▼ 検査を行った医師はK公庫に対し、「ウィルス検査の結果は陽性であり、XにはB型肝炎ウィルス感染による肝炎の所見がある」旨を伝えた。

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<本件精密検査、本件不採用に至った経緯等について>

▼ 7月9日、K公庫から指示を受けたXは同公庫の産業医であるI医師による肝臓の精密検査(以下「本件精密検査」という)を受けたが、健康診査においてB型肝炎ウィルス検査の結果が陽性であったことや肝炎を発症している疑いがあることは知らされていなかった。

▼ 同月23日、I医師はXに対し、B型肝炎ウィルス感染による慢性の活動性肝炎であり、定期的な医療機関への受診が必要である旨の診断を告げ、Xは自分がB型肝炎ウィルスに感染していることを初めて知った。

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