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#104 「キヨウシステム事件」大阪地裁(再掲)

2005年9月21日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第104号で取り上げた労働判例を紹介します。


■用語の解説

競業避止義務」とは、労働者が使用者の利益に反するような競業(営業上の争いをすること)をしないという義務。たとえば従業員が在職中に知り得ることとなった技術や情報をもって、退職後に元使用者の事業と競合するような事業を始めたり、同業他社に再就職したりするような場合に問題となる。

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■ 【キヨウシステム(以下、K社)事件・大阪地裁判決】(2000年6月19日)

▽ <主な争点>
損害賠償(元従業員が移籍した競業会社への請求/有期契約従業員の競業避止義務)

1.事件の概要は?

本件は、K社が同社を退職後競業関係にあるショウワコーポレーション(以下、S社)へ就職したXらに対し、同人らが退職後6ヵ月間は同じ職場にある同業他社への就職を禁止されていたにもかかわらず、これに違反したとして、またK社に損害を与える意図をもって、充分な事前通知期間を置かず引き継ぎもせずにS社へ移籍したとして、債務不履行ないし不法行為に基づき損害賠償を、さらにS社およびその代表に対して、違法にK社従業員の引き抜き行為を行ったとして、不法行為に基づき、損害賠償をそれぞれ請求したもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<K社およびS社、Xらについて>

★ K社およびS社は商品検査業の請負等を目的とする会社であり、いずれもN社から場所と機械を借りて、同社の業務処理を請け負っていた。また、S社の代表取締役であるAはかつてK社の営業所の所長であった。

★ XおよびYは平成9年11月、それぞれ期限を決めてK社に雇用され、その後契約を更新してきた。XらのK社との最終の契約期間は、10年12月21日から11年3月20日までの3ヵ月間であった。

★ XらはK社の従業員として、N社のI工場で機械のオペレーターとして働いていたが、同工場で働くに際し、特段の事務引き継ぎや機械の操作その他仕事の段取りを教えてもらったことはなかった。

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<XらがK社からS社へ移籍した経緯>

▼ XらはK社のもとで就労中に新聞の折込広告等でS社の方がK社より時給が100円高いことを知り、S社に移りたいと考えるようになった。

▼ 11年3月上旬、XおよびYはそれぞれ別個にAにS社で雇ってもらえるかどうかを確認し、Aがこれを了承したことから、Xらは同月20日付でK社を退職した。

▼ AはXらを引き続きI工場の同じ職場で働かせることをN社に了承してもらい、S社は同月22日付でXらを採用し、従前と同じI工場の組立三係で就労させた。

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<本件条項等について>

★ XおよびYとK社との雇用契約書の中には同社に対する誓約書が添付されており、これには退職後6ヵ月以内は現在勤務する職場のあるK社の取引企業および同じ職場にある同業他社には就職しないとの条項(以下「本件条項」という)があり、Xらは上記誓約書に署名押印している。

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