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#444 「新生銀行事件」さいたま地裁

2017年9月6日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第444号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【新生銀行(以下、S社)事件・さいたま地裁判決】(2015年11月27日)

▽ <主な争点>
給与減額改定に対する同意についての心裡留保や錯誤など

1.事件の概要は?

本件は、S社で勤務していたXが給与制度の改定による減給についてした同意は心裡留保または錯誤等により無効であるとして、賃金支払請求権に基づき、上記減給前後の給与差額の合計390万円等の支払を求めるとともに、会議で上司から罵詈雑言を浴びせられ、うつ病と診断されて給与が劣る部署への異動を勧められるなどして退職を強要されたとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき、1年間の基本給に相当する損害額1500万円等の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<Xについて>

★ Xは、平成19年4月、S社との間で期間の定めのない雇用契約を締結した者である。なお、給与については月次給100万円および住宅補給金25万円の合計年額1500万円の基本給を支給することとし、その他に賞与を支給する旨合意した。

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<本件減給、Xが退職するに至った経緯等について>

▼ Xは入社以来、東京本社に勤務していたところ、23年10月、市場営業部の大阪営業推進室長に就任し、単身赴任することになった。

★ S社は収益の悪化を受け、24年4月から人事制度を変更することに伴い、各行員の位置付けを従前の1ないし9の等級からIないしVの等級(管理職層はIおよびII)に変更することとし、給与も新しい等級に応じて見直すことになった。

▼ 24年2月、市場営業部長のAはXに対し、新しい行員の位置付けによると、II等級のaランクとなる結果、同年4月から月次給を74万円、住宅補給金を月額18万5000円とし、年間報酬が1110万円に減給となる旨(以下「本件減給」という)通知した。

▼ Xは本件減給について同意するかに関して、Aや市場営業本部長のBとそれぞれ面談をし、「月次給と給与体系の改訂について」と題する書面(以下「本件同意書」という)の「私は上記の内容を確認し、これに同意します」という文言の下に署名押印をして提出した。

★ Xは24年4月から本件減給を受けたが、同年9月までの間は調整給が支給された。

▼ 24年9月、市場営業部員全員が参加する電話会議(以下「本件定例会議」という)が開催され、Xも出席した。

▼ Xは同年10月、医院にて受診したところ、「気分変調症(軽度うつ病)」と診断された。

▼ Xは人事部と異動先を相談し、東京本店での勤務を希望していたことから、金融法人営業部の社内公募に自ら応募し、同年11月、同部に異動した。

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