#513 「エーザイ事件」東京地裁
2020年6月10日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第513号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【エーザイ(以下、E社)事件・東京地裁判決】(2019年9月5日)
▽ <主な争点>
希望退職制度の優遇措置の適用から除外する取扱いなど
1.事件の概要は?
本件は、E社の従業員であったXが、同社が希望退職制度の優遇措置の適用から除外されること(本件制度)を知りながら自己都合退職届(本件退職届)を平成30年10月15日に受理した後、同月25日に希望退職者を募集することを決定・公表し、その後にXからの本件退職届の撤回に応じなかったことが不法行為に当たるとし、本件制度の優遇措置が適用された場合にXが受領するはずであった割増退職金相当額の損害を被ったと主張して、E社に対し、民法709条(不法行為による損害賠償)に基づき、Xが自己都合退職したことによる退職金合計額との差額である損害賠償金3322万円余の支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<E社およびXについて>
★ E社は、医療用医薬品の製造等を業とする会社である。
★ Xは、平成7年4月からE社において医薬品の製造、品質保証等の業務に従事していた者である。
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<Xの退職、本件制度等について>
▼ Xは平成30年10月5日、E社に対し、同年11月30日を退職日とする退職届(以下「本件退職届」という)を提出し、同社は10月15日、これを承認した。
▼ E社は同年10月25日、従業員に対して希望退職者を募集することを決定し、これを公表した(以下「本件制度」という)。
★ 本件制度では「第1回募集退職日の前日である31年3月30日以前の日を退職日として退職届が提出され、承認されている場合などには優遇措置の適用が除外される」旨定められていた。
▼ Xは30年10月30日および11月2日、E社に対し、本件制度に応募することを求め、本件退職届の取下げを申し出た。同社はすでに本件退職届が受理されていることなどを理由に退職日を延期して本件制度を適用することはできない旨回答した。
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