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#240 「独立行政法人 宇宙航空研究開発機構事件」東京地裁

2009年8月19日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第240号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(以下、U機構)事件・東京地裁判決】(2007年8月8日)

▽ <主な争点>
定年退職後、特別の欠格事由のないかぎり再雇用するという労働慣行が成立していたか否か等

1.事件の概要は?

本件は、U機構を定年により退職したXが、同機構においては、定年退職者は、特段の欠格事由がないかぎり、希望者すべてを再雇用する労働慣行が存在したのにもかかわらず、不当に再雇用されなかったとして、再雇用を前提とした労働契約上の地位の確認と賃金(月額40万円)の支払いをU機構に対し、求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<U機構およびXについて>

★ U機構は、平成15年10月に設立された宇宙航空分野における研究開発の事業を営む独立行政法人である。同機構は、同年12月に再雇用規則を定め、定年退職者等を招聘職員として再雇用する制度を設けた(以下「本件再雇用制度」という)。

★ Xは、昭和44年10月、U機構の前身である宇宙開発事業団(NASDA)設立時に採用され、以来上記独立行政法人移行後もここに勤続して、「宇宙オープンシステムの研究開発」等に従事してきたが、平成17年2月28日、満60歳に達し、同年3月31日をもって定年退職した者である。

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<本件再雇用制度等について>

★ U機構は、その就業規則において、「職員が年齢60歳に達した日以後における最初の3月31日を迎えた場合」を退職事由と定めていた。

★ U機構の前身であるNASDAにおいても、平成13年度から定年退職者を嘱託職員として再雇用していたところ、その実績は次のとおりであった。
   平成13年度(14年3月末)・・・5名(希望者6名中)
   平成14年度(15年3月末)・・・2名(希望者3名中)

★ U機構は、高齢者労働力の活用、年金制度改革(満額給付開始年齢変更)という社会動向に対応した再雇用制度を整備するため、定年を迎えた者を招聘職員(任期付き職員)として再雇用し、定年以降は年金給付を考慮し原則非常勤とし、最低限、基礎年金部分を補うことを概要とした本件再雇用制度を設けることとし、15年12月、これに関する再雇用規則を定めた。

★ これによると、定年退職者等を再雇用により招聘職員に任命する場合には、「(1)従前の勤務実態が良好な者、(2)健康状態の良好な者、(3)知識・技能を引き続き有している者、(4)再雇用を希望し、勤労意欲のある者、(5)原則として他に就業の予定がない者」の要件をすべて満たす者の中から業務必要性に応じて行うものとされ、上記(1)の要件については、人事考課による総合評価(S、A、B、C、D、E)に「E」が3回以上ないことという内部の基準が設けられていた。

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