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#335 「X電業事件」東京地裁(再掲)

2013年5月8日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第335号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【X電業(以下、X社)事件・東京地裁判決】(2012年11月14日)

▽ <主な争点>
上司からの暴行等を理由とする損害賠償請求など

1.事件の概要は?

本件は、X社の従業員であったYが、(1)上司であったAから暴行を受け、全治約2ヵ月を要する遅発性脾破裂の傷害を負ったとして、Aに対し不法行為(民法709条)に基づいて、X社に対し使用者責任(民法715条)または安全配慮義務違反(民法415条の債務不履行)に基づいて損害賠償(治療費、慰謝料等)を求め、(2)X社から「Yは覚せい剤を使用していた」と事実無根の理由で不当解雇されたとして、同社に対し不法行為(民法709条)に基づいて損害賠償(逸失利益、慰謝料等)を求めるとともに、(3)解雇したX社に対し解雇予告手当(労働基準法20条)の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<X社、YおよびAについて>

★ X社は、金属製品および建物の塗装、ケーブル延焼防止工事、内装工事等を業とする会社である。

★ Yは、平成22年1月、X社と労働契約を締結して、入社した者である。

★ Aは、X社の従業員で、Yの上司であった者である。

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<本件暴行行為、本件解雇に至る経緯等について>

▼ Yは22年6月24日、X社のC取締役およびAから、前日正午頃にT社工場の現場(以下「本件現場」という)を引き上げた経緯について、説明を求められたところ、同僚であるBの指示に基づいて本件現場を引き上げた旨説明したが、Bの話と食い違いがあったため、Bとの間で押し問答となった。

▼ その際、Bは持っていた図面でYの顔を叩き、引き倒した上で腕や足を蹴った。Bの暴行が終わった後、その場に倒れていたYはAから安全靴で左脇腹から背中付近を思い切り蹴り上げられ、倒れ込んで悶絶しているところをなおも同様に蹴られる等の暴行を受けた(以下「本件暴行行為」という)。

▼ Yは本件暴行行為のため腹部を中心に激しい痛みを覚え、暴行を受けた当日は痛みに耐えながら仕事を続けたものの、翌日の朝、現場に向かう途中であまりに調子が悪くなったため、最寄りのクリニックに担ぎ込まれ、同クリニックから都立病院に搬送され、そのまま緊急入院した。同病院において、Yは本件暴行行為に起因する遅発性脾破裂(以下「本件傷害」という)のため全治約2ヵ月の診断を受けた。

▼ Yは本件暴行行為による受傷により入院中の同年6月26日、X社から「Yが覚せい剤を使用していた」等という理由で解雇された(以下「本件解雇」という)。

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