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#446 「日本郵便事件」東京地裁

2017年10月4日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第446号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【日本郵便(以下、N社)事件・東京地裁判決】(2015年4月23日)

▽ <主な争点>
高齢再雇用制度に基づく再雇用など

1.事件の概要は?

本件は、N社において雇用され、定年を迎えたXが改正前の高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年法)9条2項所定の「継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準」(継続雇用基準)を満たす者を採用する旨の制度により再雇用されるべきであるのに再雇用しなかったと主張して、同社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認ならびに同契約に基づく月額賃金等の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<N社およびXについて>

★ N社は、郵便業務、銀行窓口業務、保険窓口業務、印紙の売りさばき、地方公共団体からの受託業務、上記以外の銀行業、生命保険業および損害保険業の代理業務、国内・国際物流業、不動産業、物販業等を行う会社である。

★ Xは、昭和51年4月、N社の前身である郵政省東京中央郵便局に採用され、郵政事業庁、日本郵政公社等を経て、N社において勤務していた者である。なお、後述の定年制によるXの退職日は平成25年3月31日であった。

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<N社の定年制、継続雇用制度等について>

★ N社の社員就業規則では、「社員は、定年に達したときは、定年に達した日以後における最初の3月31日に退職する。」(14条1項)、「前項の定年は、年齢60歳とする。」(同条2項)と規定されている。

★ N社は高年法9条1項2号、2項所定の継続雇用制度の導入として、高齢再雇用社員就業規則(ただし、25年3月31日以前)において「会社は、社員就業規則14条の規定により退職した者のうち、高齢再雇用を希望する者の中から選考により適格と認めた者を・・・採用する」(4条1項)、「前項の規定により会社が適格と認めるのは、次の各号の全てに該当するときとする。(1)選考における面接試験および作文試験の評価が著しく低くない場合 (2)退職前2年間の勤務成績が不良でない場合 (3)身体検査の結果、就業可能と判断された場合」(同条2項)、「(上記高齢再雇用をされた場合の)雇用契約期間は、毎年4月1日から翌年3月末日までとする」(8条2項)、「雇用契約期間が満了した場合、次の各号のいずれかに該当しないかぎり、雇用期間を更新する。(1)本人の希望がない場合 (2)満65歳に達した日以後における最初の3月31日が到来したとき (3)雇用契約期間満了時に、傷病のため勤務していない社員または休職中の社員であって、早期の職場復帰が困難と認められる場合 (4)業務能力または勤務成績が不良で契約更新に達しない場合」(9条1項)と規定していた。

★ 高齢再雇用社員の採用については、継続雇用基準に基づいて、応募者の中から作文試験、面接試験、身体検査および退職前2年間の勤務成績(人事評価結果)により選考する。

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<Xに対する選考試験の実施および結果等について>

▼ Xは25年3月末で定年退職が予定されていた者として、N社の25年度高齢再雇用社員選考試験に応募し、24年10月、作文試験と面接試験を受験した。

▼ 上記選考試験の結果、Xの作文試験の評価は著しく低いものではなく、身体検査についても、従前の定期健康診断の結果、就業自体は可能と判定された。他方でXは200点満点で点数化した直近2年間(22年度および23年度)の人事評価結果において80点未満が存在し、かつ、面接試験の評価が「良好」である場合に該当する「C」以上の判定に至らず、高齢再雇用社員就業規則4条2項等所定の継続雇用基準を満たさない者として、上記選考試験において「不合格」と判定された(以下「本件不採用」という)。

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