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#239 「大阪大学事件」大阪高裁

2009年8月5日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第239号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【大阪大学(以下、O大学)事件・大阪高裁判決】(2008年11月27日)

▽ <主な争点>
23回更新を繰り返した大学非常勤職員の雇い止めの効力等

1.事件の概要は?

本件は、昭和54年11月から平成16年3月までは、国立大学であったO大学に期限付任用に係る非常勤の国家公務員として勤務し、16年4月から18年3月までは、国立大学法人化されたO大学に、同様に雇用期間を定めて雇用される短時間勤務の非常勤職員として雇用され、いずれも大学付属図書館で事務補佐員として稼働してきたところ、期間が満了したとして雇用契約の終了をO大学から告げられたXが、同雇用契約は期間の定めのないものであると主張して、雇用契約上の権利を有する地位の確認および賃金の支払いをO大学に対し、求めたもの。

原審である大阪地裁(平成20年7月11日判決)は、XとO大学間の雇用契約は期間の定めのないものではなく、期間満了により終了したとして、Xの請求を全て棄却したため、これを不服とするXが控訴した。

2.前提事実および事件の経過は?

<O大学およびXについて>

★ O大学は、国立大学法人法の施行に伴い、従前、国立大学であったものが、平成16年4月1日、国立大学法人O大学となったものである。同大学は、吹田地区、豊中地区、中之島地区にキャンパスを有する。

★ X(昭和20年生で、平成17年に満60歳となった)は、昭和54年11月、国立大学であった当時のO大学に事務補佐員として採用され、同大学が設置する附属図書館に勤務するようになった。当初の任期は昭和55年3月30日までであった。

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<XとO大学との間の雇用契約について>

▼ Xは昭和55年3月30日、任期満了に伴い、退職したものとされ、同年4月1日、O大学に事務補佐員として採用された。任期は、翌56年3月30日までであった。

▼ Xは56年4月1日、O大学に事務補佐員として採用され、附属図書館の医学情報課で勤務することとなった。任期は、翌57年3月30日までであった。

▼ Xは57年4月1日以降平成15年4月まで、毎年4月1日に翌年3月30日までを任期とし、O大学に事務補佐員として採用されていた。なお、少なくとも、15年4月1日付任用の際における任期の定めの効力については、当事者間で争いがある。

▼ Xは16年3月30日、任期満了に伴い、退職したものとされた。なお、この退職の効力については、当事者間で争いがある。

▼ O大学が国立大学法人化された16年4月1日、Xは同大学と雇用契約を締結した。なお、同雇用契約中には、「雇用期間を16年4月1日から17年3月31日までとする」旨の条項があるが、同条項およびその関連条項の効力については、当事者間で争いがある。

▼ Xは17年4月1日、雇用期間につき、「17年4月1日から18年3月31日までとし、期間満了により終了し、更新はしない」旨の記載のある雇用契約書に署名押印した。なお、上記の雇用契約の期間に関する当事者の主張と関連し、雇用契約書の法的評価、なかんずく雇用期間に関する記載の法的評価については、当事者間で争いがある。

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<O大学における就業規則について>

★ 国立大学法人O大学非常勤職員(短時間勤務職員)就業規則(以下「非常勤職員就業規則」という)には、次のとおりの定めがある。

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