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#429 「阪急バス正社員登用試験事件」大阪地裁

2017年1月25日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第429号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【阪急バス(以下、H社)正社員登用試験事件・大阪地裁判決】(2016年2月25日)

▽ <主な争点>
正社員登用試験の受験機会を付与しなかったことが債務不履行に当たるかなど

1.事件の概要は?

本件は、H社が契約社員であったAら3名に対して、平成25年1月中旬に実施された正社員登用試験を受験する機会を与えなかったことが同社の債務不履行または不法行為に該当するとして、AらがH社に対し、慰謝料ならびに弁護士費用およびこれらに対する遅延損害金の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<H社およびAら3名について>

★ H社は、バスの旅客運送を業とする会社である。

★ Aは平成20年9月、Bは同年10月、Cは同年11月にそれぞれ契約社員としてH社に雇用され、共に25年4月26日付で同社の正社員となった者である。なお、Aら3名は契約社員として入社した後、数度にわたる契約更新を経て、いずれも遅くとも24年末までには契約社員としての雇用期間が満4年に達していた。

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<H社契約社員就業規則の定め、本件試験の概要等について>

★ H社の「契約社員就業規則」(25年4月1日改訂前のもの)には、以下の定めがある。

第7条の1
雇用契約期間は1年以内とする。ただし、会社は、本人が契約更新を希望し、なおかつ、次の各号に該当しない者は、特別の事情がある場合を除き契約を更新する。
(1)精神もしくは身体の状態が悪く、業務に耐えられないと認められる者
(2)事故多発の者
(3)勤務成績が不良の者(傷病欠勤が引き続き6ヵ月以上、または事故欠勤が引き続き1ヵ月以上に及んだ者等)
(4)第7条の2に定める正社員への登用試験に合格せず、契約社員としての雇用期間が満7年に達する者
(5)その他勤務状況等から、継続雇用が不適格と判断された者

第7条の2
契約社員としての雇用期間が満4年に達した者のうち、前条に該当しない等、勤務成績や健康状態等が適格とみられる者について、所属長の上申に基づき正社員への登用試験の受験資格を与える。なお、受験回数は3回を限度とする。(以下、同条分を「本件条文」という)

★ 24年度第2回目の正社員運転士採用(登用)試験(以下「本件試験」という)の概要
ア 受験資格
契約社員(運転士)として、20年7月末までに入社した者で所属長の推薦のある者
イ 採用(登用)試験実施要領
(ア)受験前過去2年間の勤務成績
(イ)実技および面接試験
ウ 試験予定日
25年1月中旬

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