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#65 「東日本電信電話事件」東京地裁

2004年12月1日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第65号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【東日本電信電話(以下、H社)事件・東京地裁判決】(2000年11月14日)

▽ <主な争点>
違法な業務命令、嫌がらせを受けたことによる損害賠償

1.事件の概要は?

本件は、日本電信電話会社(以下、N社)の従業員であったXがN社から人事面において不当な取扱いを受け、上司から通常の業務命令の範囲を大きく逸脱した職務命令を受けたり、さまざまな嫌がらせを受けるなど、職場において極めて不当かつ非人間的な処遇を受けたとして、不法行為に基づく損害賠償の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<X、N社およびH社について>

▼ Xは昭和42年4月、日本電信電話公社(以下「公社」という)に見習い社員として雇用され、公社および公社の一切の権利義務を承継したN社に所属し、平成11年7月からはN社の再編によって誕生したH社に勤務している従業員である。

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<Xがフリーダイヤルの番号管理業務から外れるまでの経緯等について>

▼ 平成元年7月、XはN社東京情報センター第二情報販売推進部(以下「第二情販」という)に異動し、架電者が電話料金を負担しない事業者向けのサービス業務であるフリーダイヤルの業務担当となった。

▼ XはS主査の下で、フリーダイヤルの番号管理業務に従事していたが、他の社員が保留にしていた番号を支店等に提示した結果、番号の重複選定が生じたり、廃止後1年間は使用できないはずの番号を提示して顧客から苦情を受けたことがあった。

▼ Xがパソコンの使用が禁止されている時間帯にパソコンを操作したためにシステムダウンを起こし、業務に支障をきたしたことがあったことから、同年10月、S主査はXにはパソコンを使用しての業務から外れてもらうことにした。

▼ 4年11月、支社等のフリーダイヤル担当者から第二情販にアンケートについての問い合わせがあり、フリーダイヤルに関して、支店等に第二情販の担当者の勤務に関する評価等を内容とするアンケートの実施依頼がされている事実が発覚した。

▼ Xの上司であるN課長がアンケートについて調査を開始し、Xは支店から相談を受けただけであると関与を否定したが、同課長が支店等に聞き取り調査を行った結果、Xがアンケートの実施に積極的に関与していることが明らかになった。Xがアンケートの実施について、事前に上司らに報告・相談を行ったことはなかった。N課長とその上長であるY部長はXをフリーダイヤルの番号管理業務から外した。

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<Xが苦情処理委員会に申立てをするまでの経緯等について>

▼ 6年1月、Xはハローダイヤル(電話加入権者のうち特定の登録業者を募集して登録料を徴収し、一般顧客からの問い合わせに応じて登録業者のサービス内容を紹介し、顧客の要望に合致する登録業者を検索して紹介するという番号案内サービス)の業務担当に配置換えとなった。

▼ 同年3月、T部長が着任し、前任者のD次長から業務の引継ぎを行ったが、Xについての引継ぎは「Xが常々自分は能力があり、皆と同じルーティン業務をする人間ではなく、企画的な仕事がしたい等と発言したことから、ハローダイヤル担当に異動させ、販売促進のための企画的な業務を担当させている」というものであった。

▼ 8年4月、オフィスのフロア全体のレイアウトが変更された。Xは隣席の机に積まれた書類が自分の机に倒れそうになっているとして、隣の社員に何度も怒ったことがあったため、Xの机そのものは他の社員と同じ事務机であるが、隣席とのトラブルを避けるため、Xの机の周りを1メートル程度の高さのパーテーションで囲った。なお、Xの机の反対側にはプリンターが置かれていた。

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