The Beatles『In My Life』ピアノソロにまつわる妄想話

 ドレスコーズの志磨遼平さんが某ラジオ番組にゲスト出演した際、ビートルズのこぼれ話をしていました。端的に抜粋すると『A Day In The Life』という曲にまつわるエピソードで、エンディングのEコードを世界一長い音符にしたいという、言うなれば昨今のyoutuberにも通じる遊び心を実現させるため、音の減衰に合わせフェーダーの増幅を用いることで力技的に実現したというもので、これはなかなか面白い話でした。

 個人的に同曲はビートルズ史上、そして二十世紀のポピュラーミュージック史上最高の曲だと思っているのですが、実はもう一曲外せない曲があります。結論から言えば『In My Life』な訳ですけれど、厳密には曲自体はそれほどフェイバリットというわけではなくて、あのピアノソロの部分が大好きなんです。
 チョー有名な話なんで今更ですけど、あの部分はメンバーではなくプロデューサーのジョージ・マーティン氏がプレイしており、wiki情報によると"描いていたバロック調のフレーズを弾くのは困難だった"ということで、半分の速度でテープを回し1オクターブ下で弾いたものを通常の速度で挿し込むことによって解決。倍速のためピアノの音がチープになりチェンバロっぽくなったということです。面白いですねー。

 ここからが本題の妄想話になります。確かにこのフレーズ、特に最後の下降部分はめちゃくちゃ速いので難しいのは確かです。<最速♩=104の32分音符>
 とはいえ子供の頃からピアノを弾き、音楽学校ではピアノを専攻しメンバーよりも一回りも年上でキャリアもあるミュージシャンがあの8小節を弾けないわけがないと私は思いました。Aのメジャースケールの下降なのでそれほど難しい指使いというわけでもないのです。

 つまりまず前提として<実はジョージ・マーティン氏はあのピアノソロを弾けたのではないか>という仮定から入りますね。そしてその後には「ではなぜ?」が続きます。
仮説①
技術的困難が立ちはだかった時、この若者たちはどういう手で不可能を可能に変換するのか?を試したかった
仮説②
レコーディング技術が日進月歩の六十年代に、自らのプレイテクニックというフィジカルな技術をレコーディング素材として彼らに提供することで新時代の音楽に参加したかった

 どうでしょう。ありそうでもありなさそうでもありますね。もちろん話の通り本当に弾けなかったのかもしれません。それでもこうしたあーでもないこーでもない噂と仮説と事実が随所に散りばめられている事こそがThe Beatlesの魅力なのだと私は思います。


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