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読書感想文

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読んだ本の読書感想文を中心に公開しています。 あくまでも主観・雑感で、作者様の意図するところとかけ離れている場合もありますのでご了承ください。
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#志賀直哉

志賀直哉『流行感冒』 感想文

 神経症とは主観的事実の病である、という文章を目にしたことがある。  例を挙げると、心臓の病で急死した知人の死に慄き、自分も同様の病に見舞われ死ぬのではないかという恐怖から生じる自らの感覚のみを唯一の事実として認識してしまい、主観に囚われることである。  すると普段気にも留めない心臓のちょっとした違和感や、日常生活動作で起こりうる多少の動悸でさえも件の病と結びつけ、死と結びつけてしまう。まるで風に揺れる柳の葉を幽霊と信じて疑わないようなものだ。  これに対し客観的事実は、概ね

志賀直哉『小僧の神様』 感想文 〜小僧のロックスター〜

      『小僧の神様 感想文 〜小僧のロックスター〜』 「若者にとって最大の暴力は崇拝するロックバンドの解散であり、ロックスターの死である」  大昔に読んだあるロックミュージシャンの伝記の一説を思い出した。  社会の中の自分が確立していない年頃とは、あらゆる感動に対し極めてセンシティヴなものである。それは例えば音楽であったり漫画であったり、はたまた文学作品に感銘を受けるとか、職場の先輩に連れられ暖簾をくぐった居酒屋のお通しがこの上なく美味かったといった体験だったりする