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盗人猛々しい話

ある日通って2回目程度の店で、会計の際に財布が無いことに気づいた。

どこかに落としたか、忘れたのか…?
失くなってしまったものは仕方ない。
後日会計分を支払うことで了承してもらい、その日はことなきを得た(2,3日後に支払いに行った)

少し経ったある日、わたしは担当の家に招かれた。
普通に(?)お家デートを楽しんでいると、担当に1本の電話が掛かって来た。
電話の間、手持ち無沙汰で部屋を眺めるとテレビ台の下に見覚えのあるレザーの何かがあることに気づいた。

引っ張り出してみる。
紛れもなく、わたしが使っていた財布だった。
違うことと言えば、中身が全て無くなっていることくらいか🙄

ただ一つ、当時母くれたお寺のお札がポケットの奥に残されており、わたしはそれが紛れもなく自分の財布であると認識したのである。
そっと自分のカバンに入れて、その日は帰った。
担当には特に何も言わなかった。

数日後…
携帯に見覚えのない電話が入った。
ちょうど父と出掛けている最中だった。

「○○署○○係の○○です。」
「身に覚えがあるだろう?」とか、「洗面器用意して待ってろ。」などと言う、本当に警察か?と思いたくなるような口ぶりで呼び出しをくらったのである。

言ってる意味が全くわからないので、その場で父に相談すると、一緒に警察署まで行ってくれることになった。

何課かは忘れたが、出向くと個室に通された。
どうやら、担当が財布の窃盗の被害届けを出したらしい。
冗談じゃない。
もともとはわたしの財布である。

刑事が話す。
「○○さんの家からエルメスの財布を持ち帰りましたね?」
「あれはもともとわたしの財布です。」
「ふざけたこと言ってるんじゃないよ。」
などの会話が繰り広げられた。

1から説明するが、わたしが盗ったの一点張りである。
お札の話も信じてもらえない。
そりゃそうだ。
自分が盗んだ財布を盗られたと被害届を出すバカが居るなんて、警察も思わないのだろう。

わたしと父は途中から可笑しくなって笑いを堪えるのに必死だった。
だが話が一向に通じないので、とうとうネタばらしをするしかないな、と思った。



「その財布って、これなんですけど…
父が韓国で買って来たコピーなんです。見ればわかると思いますけどw」

わたしがバッグから取り出した財布を手に取った刑事の表情が変わる。

「確かに素材が…」
固まる刑事。
この辺りで父が吹き出し、爆笑しだした。

「相手、エルメスって主張してるんですよね?w
これ、明らかに粗悪なコピー品です。
わたしは面白いのでわかって使ってましたけどw」

かくして、この様にしてわたしの罪は無かったことになり、反対に担当が被疑者となったのであった。
(甲と乙を入れ替えて書いていて大変そうだった)


自分で財布を盗んでおいて、それを持ち帰ったら被害届を出すなどどれだけ面の皮が厚いのか。
盗人猛々しいどころの騒ぎではない。

ついでにわたしはそいつが持っていたカラフルな可愛い絵柄のついた錠剤のことなども刑事さんにペラペラお話して、すっきりとした笑顔で警察署を後にしたのである。


父には帰りの車の中でしこたま怒られた(あたりまえ)


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