君の文学

其れがこの世の何より憎かった。ずっと消えない呪いとして私の中に在り続けた。君の好きなあの娘と、君の好きな愚筆家の彼を私は一生愛することはできないのだろう。

思えば好き勝手して来なかった人生だった。
結局其れが好き勝手している現在に繋がっていたとしても、あの頃の少女はそうだったから。
君に言われた、「きっときみは誰でも良いのだろうね。」という言葉を少女は喚き散らして受け入れようとしなかったけれど、今は大きく頷いてしまう。
ただ、誰でもいいという訳ではなくて、君じゃなくて良いだけだったのだと思う。それを必死になって否定していたから苦しかったのだ。
私は今も、君の読んでほしがった本を読むことが出来ない。タイトルも筆者も把握しているのにその総てを見るのが未だ怖い。君のことなんてもう愛していないのに。寧ろ君のことなんて辟易する程嫌いなのに。多分これは少女だった私を殺さない為に私が自己防衛の為に存在している気持ちなのだと思う。

君の書く文章が嫌いだった。
君の考えが嫌いだった。君を沈めたあの娘が嫌いだった。君の好きなもの総てが嫌いだった。君をつくる総てが嫌いだった。
君が、嫌いだった。

私は未だ ゆめを見ている。

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