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手術をしない漏斗胸の治し方

私の子供は2歳ごろにはすでに漏斗胸でした。

痛くて苦しかったに違いありません。

ですが子供はうまく声が出ず、それを伝えることもできませんでした。私の手をそっと持って自分の胸に押し当てて、切ない目でこちらを見てくるのです。

病院に連れて行っても「小学校になってもまだへっこんでたら手術をしましょう。その時は専門の病院を紹介します。それにまだこれだけしかへっこんでないっし、もっと悪くなったら来て。それに今は小さすぎて手術は難しいから大きくなってからじゃないと何もできないよ…」と言われるばかりでした。

「もっと悪くなったら来て理論」は障害児あるあるだと思いますが親が知りたいのは「予防」だと思います。そういう知識は全く共有されていなかったのでとても不安でした。

そこで整体の先生に相談すると「まだ間に合うよ!寝てるときの姿勢でこうなったんだからね!ちゃんとした寝かせ方をすればまだ大丈夫!手術しなくても治るよ!」とかなり前向き!


漏斗胸を治す寝姿勢の補正

基本的には正しい寝かせ方を徹底していきます。

・寝かす方向を一定にしない
・抱き枕などを使って補正して背骨をまっすぐにしてやる

片方を向いて寝ていると自分の半身と腕の重みで下になったほうの肋骨に負荷がかかって曲がってしまいます。

健康な普通の子供にはそういうことはありませんが、体が柔らかい低緊張の子供はたったそれだけでも大きな荷重がかかってきます。抱き枕を使って補正して背骨をまっすぐしてやることは大事です。

時折はこのように抱き枕に抱き着くようにして寝させてやると良いです。うまく呼吸ができるなら胸の形も安定してきます。


胸を凹ませる原因

そもそもなぜ低緊張の子供が漏斗胸になったのかというと、理学療法で受けていた「飛行機ごっこ」の遊びだと思います。ちょうどその訓練をするようになってから子供の胸が凹んできました。

低緊張の子供の子供の体は柔らかいんです。骨も関節も筋肉も柔らかい。だから子供の体を空中にあげて「ブーン」とやると大人の手の指が骨をぐっと押すのでそのままへっこみます。右利きの大人がやれば左よりも右の方に力が入るので、子供の体の左側の胸がへこみます。

低緊張の子供の肋骨は柔らかいので不安定な体勢で一部分に力がかかるようなことをしていると、命取り。理学療法士さんに教わった「早く首が座る運動」というのがまさにそれで、後になって整体の先生にとても怒られました。

「知らないで患者さんにそういうことをしてる人は本当に恐ろしいね。ちょっと考えればわかることなのにね。別に誰に教わらなくても。学校で教わったことだけをしてる人は恐ろしいね。良かれと思ってそれっぽいことやってるつもりなんだろうけど何にもわかってないんだろうね。これから医者だけじゃなく学校の先生にもそういう人が現れると思うから、親がよぉく考えて何をしたらいけないのかがわかるようにならないといけないよ。どんな人間に子供を預けるかはそれで決めればいい」

定型発達の子供にとっては何でもないことですが障害のある子供には危険な行為です。「みんながやること」の中には危険なことがあるので、なんでも当たり前だと思ってやるのではなく、ちょっとよく考えてみることが大事です。親はなおさら考えながらいろいろなことを選択し続けていかなければなりません。


してはいけない抱き方

胸を凹ませるような抱き方もいろいろあります。通常赤ちゃんを抱くときはお尻の下から抱きます。ある程度大きくなってからも低緊張の子供は柔らかいので普通の子供を抱くように胸を持って抱き上げるのは難しいです。それは重い水の袋を抱き上げるようなもので、一見小さいからだのように思えても持ち上げる人の腰にズシリと力がかかって大変だからです。

低緊張の子供に慣れていない人は普通に抱き上げようとして「重っ!!!」と驚きますが、それはお尻や背中を支えて抱き上げないからです。体の芯がしっかりとしていないのでグラグラとします。安定させようとしていると自然と重く感じます。そのため振り回すようにして持ち上げようとする人がいます。それは胸に指がぐいぐいと押し込まれて圧がかかり骨が曲がる原因になります。


じぃじ×あかちゃんマンでしてはいけない抱き方を再現してみましょう。

①わきの下に手を入れて両手で胸を押さえながら持ち上げる

一般的に子供の抱き方はこれだと思っている人もいると思います。低緊張の子供をこうやって抱いたら骨が変形します。右利きの人は左側の胸、左利きの人は右側の胸を凹ませがちです。力のある人ほどこのようにしやすいです。

②後ろからわきの下に手を入れて抱く

わきや胸に負荷がかかって、足がだらんとしているようなときは頭が前に来れば来るほど体重が胸の一点にかかります。前から抱いても後ろから抱いても胸を直接握って持ち上げるのは危険な行為です。



③腕を胸の前に通して持ち上げる

力のない女性や高齢者がやりがちな抱き方です。子供がある程度成長して重くなると手で持ち上げられないので後ろから腕をわきの下に通して手首から肘にかけての太い部分で胸を支えて持ち上げようとするとかなりの負荷が胸に集中します。

④かつぐ

これも胸に負荷がかかります。普通の子供は体を自分で持ち上げて頭を上にあげることができますが、低緊張の子供は自力で姿勢を保持することが難しいので油断をするとすぐに体を肩に預けてしまいます。その時に胸を圧迫すると凹みます。


⑤無理やり立たせて歩かせようとする

歩けない子供を歩かせようとするとどうしても手を胸に入れて支えるようになります。その時にどの部分を持っても後や前から支えると胸に負荷がかかります。歩けない子供はこのような訓練をしたからと言って歩けるようにはなりません。体を痛めつけるだけなのでしない方が早く歩けます。胴体を持って握りこむことの方が重大な過失です。


結局は凹んでいる部分を触ってはならないというだけのことです。シンプルですごく簡単なことですが、子供の世話をするのは親だけではありません。いくら自分が気を付けていてもほかの人は案外うっかり「いつも通り持っちゃった」ということになりがち。

だってその抱き方は、普通の子供には問題がないからみんなやっていることなんですよね。「それは危険なんです」とお願いしても、急にはやめられないんです。

そこで学校では「子供は抱っこしないルール」を作ってくれました。小・中学生のお兄ちゃんお姉ちゃんは遊びの中で小さい子を抱っこしてくれようとしますが一切禁止。ハグはOKだけど持ち上げないと決めればかなり違います。

学校の先生も「抱き上げるときはお尻から」になれるまでは声を掛け合ったり、紙に書いたものをゼッケンのように貼ったりして徹底してもらいました。


うつ伏せで治す!うつ伏せ遊び!

漏斗胸を治すには寝ているときの補正で可能です。

「横を向いて寝るときは左右に寝返りをたくさん打たせて一定の方向を向かせない」
「横を向いたときは胸や腰に力がかかりすぎないように抱き枕を使って背骨がまっすぐになる用に補正する」

この2つは就寝中必要なことですが、もう一つあります。

「うつ伏せで寝かせて遊ばせる」ことです。

ただ私の子供は小さいころうつ伏せにすると肺が圧迫されて呼吸ができなくなり苦しんだのでそれはできませんでした。ある程度体が大きくなってきてうつ伏せにしても窒息しない程度に元気になってから始めました。

親とやってもなかなか面白くないらしく、一時預かりなどでほかのお友達と一緒の時にみんなでうつぶせで遊んでもらいました。するとさすがに楽しいみたいでその姿勢を長く続けてくれました。

夜寝るときは大人が常に見ているつもりでもうっかり自分も寝てしまいがちです。そのまま呼吸が止まって死んでしまうということもあるので、うつ伏せにするトレーニングは日中だけにしておいた方がよさそうです。


重い掛け布団をかけずに寝る

私はどちらかというとある程度布団の重さがあるほうがぐっすり寝れるタイプの人間なので家にある掛け布団はどれも重かったのです。それなのに私の子供は赤ちゃん用の布団をかけてやると嫌がって、私と同じ枕、私と同じ布団で寝たがりました。私のことが大好きなのが伝わってきてうれしかったのですが、掛け布団をかけるとやはり嫌がって数分で蹴り飛ばします。

重いのかな?

と、思い軽めの布団を購入してみたのですがそれでもしばらくすると嫌がります。徐々に軽い布団に買い替えていたのですが最後は何もかけずに寝るのが一番良いようだと気づきました。タオル1枚でも嫌がるので。エアコンなどで室温を調整しておけば問題がないようです。

胸を圧迫する要素は限りなく減らしてやると良いようです。


寝姿の補正が大事といっても「ただ寝てるだけでそんなに治らないでしょ?」と言われたことがあります。ですが私がしたことはこれだけです。そして今ではある程度治りました。

2年くらいでこの通り。ほとんどわからないくらいになってきました。

低緊張の子供は柔らかいので、簡単に凹みますが頑張れば自力で治せます。

「もう手遅れだ」「頑張っても治らない」

そう思ったら負けです。
子供の生命力を信じて、寝ている間の補正を続けることです。

低緊張の子供は変な姿勢で寝ていて、変形してしまうと自力で寝姿を戻すことができなくなるのでまっすぐ寝れるように寝相を治してやることはとても大事です。治しても治してもまた変形する寝姿。それを延々と治し続けていくことは難しい作業ではありませんが大変なことです。

親の愛と根性を試される場でもあります。

これこそが薬も手術も要らない親にしかできない治療です。

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