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脳性麻痺の反り返りに効く漢方薬

脳性麻痺の子供は夜中に背中をひどく反り返らせて苦しみます。一度反ってしまうと自分で元に戻すことは難しく「うう~」「あああ」と声を上げて助けを求めます。正しい姿勢に戻してやるとまた眠り始めるのですが一定時間ごとに反るので熟睡できるはずもなく苦しそうです。

どのくらい反るのかというと、ほぼ首を90度曲げたまま反ります。

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具合が悪くなればなるほど反る角度は大きくなります。誰でも想像がつくと思うのですがこの状態で反ったまま体がつってしまって身動きが取れなくなったら痛くてたまらないでしょう。寝るたびにへとへとになっていました。隣で一緒に寝ている親もそのたびに起こされるので毎日寝不足です。

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小児科で反り返りについて質問をすると「こういう病気の子供は皆なる、どうしたらいいかはわからない」と言われて途方に暮れました。


反り返りには甘麦大棗湯

漢方薬局で相談したところ「いいお薬が2つあります。1つは抑肝散、もう一つは甘麦大棗湯です。どちらかを試してみて1つが効いたらもう一つは効きません。」と言われて2つ試しました。

私の子供に効果があったのは「甘麦大棗湯」でした。もともと甘麦大棗湯は夜泣きや足がつるときに使う漢方薬です。甘麦大棗湯は血糖値をある一定のレベルで保持する作用があります。夜間低血糖に効果があるお薬なんです。

甘麦大棗湯
  甘草(カンゾウ)
  小麦(ショウバク)
  大棗(タイソウ)

甘麦大棗湯はとてもシンプルな処方で3つの生薬でできています。甘草が入っているので筋肉をやわらかくする効果があります。低緊張なのに夜間は筋緊張が強く出るためやわらかくする薬を夜寝る前に飲ませます。するとやわらかくなって少し楽に眠れるようになりました。

このお薬は反り返り以外にも「歯ぎしり」に効果がありました。甘麦大棗湯を飲んでいる日はギリギリという音がしませんでした。隣の部屋にいても聞こえるほどの大きな音で歯ぎしりをするので心配していました。歯科や小児科で聞いても「ストレスでしょう」と言われる程度だったのに、甘麦大棗湯を飲んだとたんに歯ぎしりもおさまったのです。

素晴らしいお薬だと思っていたのですがしばらくすると体調不良になりました。よく眠れるからと言ってそのまま連用していたら体が柔らかくなりすぎて指があり得ない角度に曲がったりして困ることになりました。

ほどほどの度合いを見極めて投薬と休薬の波を作ることはとても難しいです。思った以上に少ない量で効き目を強く感じすぎない程度にしてのが無難です。柔らかくなりすぎるのはケガなどのリスクが上がります。


化痰薬が効いた!

そこでまた漢方薬局で相談しました。「低緊張が強く出てしまって困っている。夜眠れないし、反り返りは良くなったけれどやっぱり頻繁に目を覚ましてしまう」と。

その時に私が違和感を感じた症状はそれまでとは異なっていました。甘麦大棗湯で体質が少し変化したのでしょう。

・夜なかなか寝ない(興奮)
・夜中に反り返って体を固くしている、また日中の低緊張が反動で強く出ている
・精神的な落ち込みがあってちょっとしたことで凹む
・乾いた咳
・うんこの色が薄く、ネットリしている
・唾液に泡が立つようになってねばついている
・ねばりけの強い鼻くそが大量にたまっている
・体温が高い

これに対して漢方の先生は「そういう時は漢方の世界では脳もねばついていると考えるんです。粘り気を取ることを化痰と言います。化痰薬を使いましょう。」と、痰湿を取るために温胆湯を紹介されました。

温胆湯にはいくつか種類がありますがこの時選んだのはイスクラというメーカーの温胆湯です。少しずつ入っている生薬が違うことと添加物の関係で一番様子が良かったのがイスクラ製でした。

イスクラ 温胆湯
  ハンゲ 6.0g
  ブクリョウ 6.0g
  ショウキョウ 1.0g
  チンピ 3.0g
  チクジョ 2.0g
  キジツ 1.0g
  カンゾウ 1.0g
  オウレン 1.0g
  サンソウニン 3.0g

このお薬を飲み始めてすぐに私は子供の様子に変化を感じました。

・言葉がたくさん出るようになった
・とにかく滑舌が良い
・声が大きくなった
・活発におもちゃで遊んだり活動する時間が長くなった
・日中よく動くので夜よく眠る
・うんこの粘りがなくなった
・空咳が減った

ガツーン!と効いた印象です。しゃべれるようになったので「関節の痛み」を的確に訴えてきて1日中「痛い痛い」と言っていました。体中に麻痺があれば動くたびに痛いに決まっています。もともとぶつけたりしたときに「痛いでしょ?」とだれもが心配するようなときでも感覚鈍麻がひどく平気な顔をしていたのに適切な痛みを感じられるようになってきていました。

このお薬を始めて使った頃は私は糖鎖の知識がほとんどありませんでした。今考えると温胆湯は糖鎖分解酵素を調整することで糖鎖を溶かさず粘らないようにしているのだとわかります。

甘麦大棗湯によって反り返りは効果がありましたが、その後体質が変わって温胆湯が効果がありました。粘り気が落ち着いてきた頃から温胆湯を使うのをやめ、夜間の反り返りと痰湿の症状(粘るうんこや鼻くそ)が出てきたら頓服的な使い方で時々温胆湯を使うようにしました。


麻痺を取るために麻黄湯を使う

もう一つよく効いた漢方薬があります。それは麻黄湯です。これは風邪の薬ですが麻痺が取れました。

ある時、「風邪をひくと良くないのだけど治った時にはいつもちょっと麻痺が取れて体の動きが良くなって筋肉がついている気がする。風邪もひいてみるものだ。」と、薬剤師さんに言ったら「それは風邪のせいなの?風邪の時に飲む薬は何を飲んでいるの?薬のおかげだと考えるのが普通じゃないかしら?」と言われたのです。その時飲んでいた風邪薬は麻黄湯だけでした。

麻黄湯を飲んでいたと言うと、「麻黄湯の麻は麻痺の麻ですからね~」とニヤニヤされたのです。そこで風邪をひいているわけではないけれど、麻痺が本当に取れるかどうかを試すためにしばらく飲ませてみました。

結果はプニョプニョしていたやわらかい腕や足が固くなって筋肉らしいものを感じられるようになりました。

麻痺を取りたくて飲ませたのになぜか筋肉がついたんです。もちろん麻痺もしっかり取れていました。

小児科医に相談してみたところ「麻痺が取れて動けるようになったから筋肉がついたのか、筋肉がついて動けるようになったから麻痺が取れたのかはわからない。でもこんなこと聞いたことがないしとにかく驚いた」と言われました。そのフワッとした言い回しにどこか引っかかる部分があったので、「麻黄湯の麻は麻痺の麻」という部分についてもっと掘り下げて勉強したほうが良いのではないかと思い調べ始めました。

日本語のサイトにそれらしい記述は見つからなかったので英語や中国語の漢方のサイトなどをじっくり見ていると脳出血や脳梗塞の麻痺の改善に麻黄湯にほかの漢方薬を組み合わせて使う方法があることを知りました。何よりボディビルダーの団体によってはドーピングの禁止薬物に麻黄湯をあげているところもありました。筋肉がつくから麻黄湯をアスリートは使ってはならないというなら、私の子供は筋肉がつかない病気だしもういっそ禁止薬物を積極的に使っていってもよいのではないか?と思うようになりました。

そこからボディビルをやっている人に相談するようになり、アンドロゲン補充療法を始めることになりました。


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