コラボディナーの裏話

2020年、2月7~9日に長野で行われた
アップルライン復興プロジェクトによるコラボディナー。
このたび私、梅田が
二日目のゲストシェフとして参加させていただきました。
非常に熱量の高いイベントでしたので
裏方としても、皆様にお知らせしたい事がいっぱいありました。

イベントの趣旨は皆様もご存知の通り
2019年台風19号による洪水被害に遭った
長野のりんご農家さんの復興のために
フルプロ農園の徳永虎千代さんが中心になって立ち上げた
クラウドファンディング企画のリターンです。

もちろん、僕も被災の現状を見て心を痛めています。
ですから、楽しい部分にスポットを当てるという事は
趣旨とはちょっと違っているかもしれませんが
それもまた意義があるのではと思います。
コラボディナーに参加したシェフとして
ここでは「厨房から見たディナー」に
スポットを当てて書かせていただきました。

当日参加された皆様には、その時の空気を思い出してお読みいただければ幸いです。

発起から準備まで

僕が参加する事になったのは、ちょっとした偶然です。
「発起人の神谷隆幸シェフ(以下タカさん)とお知り合いだったから」と
「その神谷シェフがコラボに参加できる長野県のシェフを探していたから」です。

3日間のディナーに
日替わりで3人のゲストシェフを招へいするという事ですから
ゲストシェフはあと2人。
お一人は東京・横浜に展開するイタリアン、
カステリーナグループの統括料理長の関口シェフ

もうお一人は
神奈川県、戸塚のフレンチHitotsuの
オーナーシェフでいらっしゃる野田シェフ

タカさんはご存知の通り南仏カーニュ・シュル・メールで
奥様でパティシエールのクレールさんと
ご自身のレストランを経営されています。

そしてもう一人
今回は裏方として信州食材の手配を仕切ってくれた
長野県出身の三石シェフ
(今回は仕事のため当日の参加はできませんでした)

僕以外は
元々皆さんお知り合いですし、僕は最後の参入だったので
コラボディナー参加シェフのグループチャットに混ぜていただいた時点で
既に議論が始まっていて

直感的に「あ、こりゃ熱い」と思いました。

その中で「僕は僕にできる事を」という事で
この時期の信州食材のご案内や、現場の視察など
地の利を生かしたサポートを心がけていました。
そして、僕の立ち位置としては
お客様に「一歩踏み込んだ信州を感じてもらえるように」
を意識しました。

皆さん仕事が忙しい中、次々に試作品の写真をアップして
企画を発表し、食材を確認し、道具や動線、お皿など
現場の環境も把握しつつ
「絶対にお客様に喜んでもらいましょう!」と。
半端ない意気込みです。
(これ全員ボランティアなんですよ・・)

もうこれね。乗るしかないんです。

当日のメインディッシュのお肉に、なんと
あの「信州プレミアム牛」の協賛が決まったのも驚くばかり。
(うちのディナーでは2万円以上のコースじゃないと出さないやつです)

イベント直前、タカさんが信州入りして
買い出しに同行した際に協賛の経緯を聞いたのですが、その中で
「信州プレミアム牛って部位どこですか?」って話になって
タカさん、しれっと
「部位どこがいいですか?って聞かれたからフィレって答えちゃいました」
それって、一番高いやつだよね。。
(プライムミート様、協賛ありがとうございました)

当日を迎えて

何をするにも初日というのは色々と大変なものです。
仕込みも一からだし、状況も始まらないと掴めない。
僕も関口シェフの初日の様子をTwitterで追っかけながら見ていました。
困難は色々とあったと思いますが
とっても楽しそうな様子が伝わってきました。

前夜にできる仕込みを完璧にして
当日の10時に会場入りしましたが
タカさん、クレールさん、ホントに疲れた顔をしてました。
それでもテキパキと仕込みを進める姿に感動。
来日してからずっとずっと頑張ってきたお二人には脱帽です。

夕方にはホールを担当する
オステリア・ガットさんのスタッフさん達も集まり
さっとミーティングをして、すぐさま作業開始
連携の取れている素晴らしいチームです。

いよいよディナーのスタートです。

僕の担当したアミューズは
「冬の里山デギュスタション」
この時期の信州で手に入る様々な食材を少しずつ味見していただく一皿。

・信州鹿のコンソメとクネル
・信州猪のパテドカンパーニュ
・信州胡桃の赤ワイン煮
・信州産とら豆で作ったフムス

そこに、当日即興で作った
和歌山県産の柑橘を色々使ったジュレを添えて
(これも協賛で届いていたものです)
アミューズに足りなかった酸味をプラスする事ができました。

タカさんの前菜
信州福味鶏と菊芋(トピナンブール)南仏トリュフのパイ包み
トリュフはタカさんがフランスから持ってきた本場物
お客様への「お土産」って言ってました。
すごくいい香りしてましたよね。

僕の魚料理
「信州サーモン・Le jardin de KARUIZAWA(軽井沢の庭)」
信州サーモンは信州特産の養殖サーモンで
生食でも美味しい、きめ細やかな身質が特徴のプレミアム食材。
(前述・三石シェフの手配です)
軽い火入れのサーモンに、信州産のビーツのピュレ、
信州産チーズ工房として、今や有名なボスケソチーズラボの
フレッシュチーズとハーブのクレーム
胡桃と九条ネギのクランブル、芽キャベツなど

当日即興でもう一つ
芽キャベツのピュレを作りました。
葉をむしった後の、芽キャベツの芯が残っていたのでピュレにして
たまたま大分からタカさんの元に
差し入れで届いていた国産の粒マスタードがあったので
それをアクセントに。これまた最高でした。

食材や調味料に制約がある中で、
たまたま欲しい物が揃ったのは奇跡でしたね。

タカさんのメインディッシュ
信州プレミアム牛のロティ
木の子えのきとコスモタケ

木の子えのきは軸の部分をローストに
コスモタケは傘をソテーにして軸をネギと共にプレッセにしてありました。
非常に細かい仕事でした。

僕はこの時裏方に回って
低温ローストされた牛フィレに
最後の焼き目を付けてカットする作業をしていたのですが・・
「何これ。スジも鎖もヘッドも尻尾も付いてない!」
業界用語では「ぐる剥き」と言われる贅沢な下処理です。
もうこれ、ほぼシャトーブリアン。
「信州プレミアム牛のシャトーブリアン」ですよ奥さん!
しかも厚切り!そりゃもう美味しいわけです。
(数ぴったりで味見できなかったけど・笑)

フロマージュはボスケソチーズラボの
ミマキ・キモトと山羊乳セミハードに
フランスナンバーワンのクレールマリ(クレールさんのブランド)のコンフィチュール
プルーン(非売品だそうです)とアプリコット
やばいです。

  クレールさんのアヴァンデセールは
白馬そだちのイチゴとリンゴのエスプーマ
坂城葡萄酒シナノゴールドのグラニテ
繊細な組み合わせにセンスが光ります。

続いてクレールさんのグランデセール
今回の主役、フルプロ農園のリンゴを使った
サンフジのプレッセ、マスカルポーネのクリーム
クランブルとキャラメル
りんごのピュレに、りんごの皮のシロップに、
バトネにカットしたりんごのデコレ

これは凄い仕事だ。。
りんごのピュレをちょっとだけ味見したけど、美味しかったなぁ。
(作り方教えてもらっちゃった)

さらに一流の作り手さん達から届いた
圧倒的なミニャルディーズオールスター!
(三つ星レストラン並みだね)

そして貴重な坂城葡萄酒のワインペアリング。

価値高過ぎですよ、このディナーww

お客様がお帰りになって
前日入りで到着した野田シェフを迎え、バトンタッチして僕の出番は終了。

僕は解説できませんが
1日目、関口シェフ
3日目、野田シェフのお料理も素晴らしかったですよね。
Twitterで追いかけて、よだれを垂らしていました。

お客様も本当に楽しそうでしたし
我々もテンション上がりっぱなしでした。
非常に多くの人がかかわっているからこそ
この熱量。
特別というのはこういう時に使う言葉ですね。

携わった者として感じるのは
同じ事はもう2度と起きないでしょう。
多分再現も不可能です。
これはもう伝説として歴史に刻んでいただけたらと切に願うばかりです。

とりあえず熱が冷めないうちにと思い
写真もリンクの挿入もなしに一気に書きました。

あとで加筆修正するかもしれません。

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