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オニ太郎を泣かせないための「システム思考」 - 学習する組織#1
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「ボクのお父さんは、桃太郎というやつに殺されました。」
このクリエーティブを目にした瞬間、私の頭の中で、ただの忘れられた無機物のように散らばっていたいくつかのアイディアが立ち上がり、組み上がり、マリオネットのように踊りだした。こんなにシンプルな一枚が、こんなに雄弁であり得るなんて。私にとっては2013年度と言わず、10年が経とうとしている今なおこれほど記憶に刻まれたクリエーティブはない。
桃太郎の話は、以下のような考え方で成り立っている。つまり、人間が苦しんでいるのは鬼が村を襲うからだ、だから鬼を退治すれば人間は苦しみから開放されるに違いない、と。
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でも、本当はそれで万事うまくいくわけではない。桃太郎が退治した鬼にも、家族がいるのだ。凶暴な人間の突然の襲撃によって、鬼一家の幸せな暮らしがある日突然崩壊する。そしてその不幸な出来事を耐え、乗り越えて大きくなった子供のオニ太郎は、多分高校(?)の卒業文集でこう書いていることだろう。「ボクは強くなる。そして、お父さんを殺した人間に復讐するのだ」
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これは「相手の気持ちも考えようよ」という道徳の話じゃない(もちろん考えるべきだけど、主題はそこじゃないということ)。私が言いたいのは、「桃太郎さん、オニ退治では問題は解決しませんよ!むしろあなたが不幸の悪循環の元凶なんじゃないですか!?」ということだ。
もしも桃太郎が、いや、彼がだめだったとしても犬とか猿とか雉とか、誰かしらが、オニ退治という安易で暴力的な解決策に走る前にこんなシステムを描いていたら。もしくは不意打ちなんて卑怯な真似をするのではなく、まずは鬼と外交のテーブルに着き、双方で現状理解をする機会を持っていたら。多分、このままではいけない、と気がついたのではないか。
悪循環の連鎖を断ち切る
仮に誰かがこのシステム図を描き、双方への攻撃という悪循環のシステムを理解したとしたら?「分かったとしても、どうしようもないじゃないか」と思うだろうか。いや、そうでもない。システムを変える事ができる。
例えば、「まずは貧困を解決しよう」と考える事ができる。鬼は農耕技術を持っておらず、また岩場に住んでいるから、不安定な狩猟生活だったかもしれない。そこで、人間が里の山の一部を提供し、荒れ地を開墾して畑をつくり農耕技術を教える。鬼はもともとフィジカルが強いから、人間よりも高い生産性を発揮して食べ物に困らない生活が送れるようになるかも知れない。そうなったら、人間の村を襲撃する動機自体が存在しなくなる。このバッドループ自体が消滅するのだ。
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システムを共に描く。そして介入点を探す。
「システム思考」のエッセンスは以上。骨格はとてもシンプル。関係者で共同して現在のシステムを炙り出す。そして効果的な介入点を慎重に探し出す。川の流れを堰き止める様な力技ではうまく行かない。堰き止めるのではなく流れを変える。上の例で言えば、鬼の持っている強力なフィジカルパワーを、襲撃ではなく開墾に向ける様に。
もちろんここで扱っているシステムは、超単純なものだ。私達が実際に向き合わなければならない問題はもっとはるかに複雑だ。だけど、私がここでやりたいことは、「システム思考」を最も簡単に理解するヒントを提供すること、そして何よりも、「『システム思考』がどのように有効に機能するものなのか」その価値と可能性をシンプルに伝えること。もっと本格的なシステム思考はそれこそ「学習する組織」そのもので紹介されているし、他にも理解を深める事ができるコンテンツは沢山あるのでそちらにおまかせしたい。
他の4つのディシプリンについてもこんな調子で行こうとおもう。できるだけ多くの方に、「学習する組織」に興味を持ち理解してもらうきっかけを提供したい。誰に頼まれているわけでもないので需要があるのかどうかは知らないけれど、ともかく自分としてはぜひ書き残しておきたい。
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