「復興が遅い」「いつまで瓦礫の山なんだ」
そのようなコメントにはもうお腹いっぱいすぎて、現地の事情をまとめました。
言い訳したり時間がかかることを肯定したいんじゃない。
時間がかかっていることの背景を知ってもらって、まだまだ長期戦を強いられる能登のことを応援して欲しい。奥能登の能登町出身者がそんな思いでまとめました。
①所有権
まず以て所有権問題。解説不要。
②住人不在による同意取得の難しさ
自宅倒壊した人にとっては一時帰省する際の宿泊場所も課題。
③相続登記
公費解体における問題点。空き家問題も同時発生。
なお、輪島市等では相続人全員の同意無しに申請できる緩和措置を実施。他の市町についても検討中。
→北國新聞(2024/4/5)
④倒壊家屋に対する人々の思い
家族写真、行方不明になったペット、貴重品、仏壇、趣味の品々…どうしても手元に戻したい、そんな思いに応える活動も。倒壊、はい撤去…とはいかないもの。また、品々を取り出せたとしても保管する場所やサービスが無くて頭を悩ませている、という話も数多く耳にする。
一方、公費解体に待ったがかかるケースもある。
倒壊したビルの所有者は公費解体を申請しているが、当該ビルの倒壊に巻き込まれ家族を亡くした居酒屋の店主は、倒壊した要因の調査が終わるまで解体に取り掛からないよう、輪島市に申請している。
⑤瓦礫より現地で生きる方の支援を
本記事編集している日付は2024/4/29。
この時点での珠洲市の通水状況は上記の通り。
また、通水したと言っても敷地内の水道管破裂による断水、という状況も少なくないのが現状。更に下水はまた別問題。
補足:解体工事と水の関係
解体工事にも水が必要であり、更にその水が流れる水路も必要。側溝・排水溝が棄損している住宅においてはこういった観点からの問題も内包している。
⑥安否不明者の捜索
安否不明者の捜索地域については当然ながら捜索を見守ることしかできない。3月4日まで捜索が続けられていたということは、何も進めることができなかった地域が存在していたということ。
⑦災害ごみ・処理方法
なお、地理的条件が全く異なる熊本地震においてでさえ公費解体に苦戦を強いられていた上、公費解体完了まで2年弱はかかっている(別途後述)。
→日経新聞(2016.6.15)
→産経新聞(2017.10.14)
⑧地理・道路状況
過去の震災における被災地では多方面からの支援を受けることができたが、今回は半島という地理的制約が支援活動に影響を与えている。特に被害の大きい奥能登4市町へ続く大動脈であるのと里山海道において、依然全面復旧(対面通行可能な状態)には至っていない。
「応急」工事が終了したのが4月になってから。
本格的な「復旧」工事が進むのは本当にこれから。
⑨業者の宿泊施設問題
水が出なければ作業員も長期間滞在できない。
発災直後は工事現場に入る方は数日間の車中泊を余儀なくされ、ボランティアの方も金沢往復6~8時間かけ、活動時間は数時間という日が続いていた。
現在では宿泊施設状況も改善されてきつつはあるものの、依然課題が残る。
⑩熊本地震では2年以上
多方面から支援を受けられる立地の熊本県でさえ上記の状況。半島という地理的不利の状況ではより時間がかかってしまう。
⑪行政負担・専門知識性
現地調査や解体費用の算出を行う職員も増員予定とのこと(4/25時点91人▶︎5月末159人予定)。公費解体が申請されることと、実際に着手できることは全くの別問題。ボトルネックがどこにあるのか、常に意識する必要がある。
補足:予算
⑫ボランティア関連
進まないボランティアの受け入れ 支援強化へ 宿泊所整備も検討(2024/2/19)
被災地のボランティア宿泊拠点を穴水町に設置 運用開始(2024/2/26)
能登半島地震2か月 ボランティアなど活動時間制限が大きな課題(2024/3/1)
ニーズの把握に課題(2024/4/3)
■何度も言うけど
現地の人が苦しくて辛くて弱音を吐くならわかるけど。
遅いとか見捨てられてるとか、現地のことを知ることもせずに言ってくるような人に言われたくない。
地理的にも不利な半島という地で生き抜く能登の人たちのことをもっとちゃんと知って、寄り添って欲しい。これからも応援して欲しい。
どうか、どうか宜しくお願い致します。