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がれきのはなし

「復興が遅い」「いつまで瓦礫の山なんだ」
そのようなコメントにはもうお腹いっぱいすぎて、現地の事情をまとめました。
言い訳したり時間がかかることを肯定したいんじゃない。
時間がかかっていることの背景を知ってもらって、まだまだ長期戦を強いられる能登のことを応援して欲しい。奥能登の能登町出身者がそんな思いでまとめました。

①所有権

家屋のがれきは、家の持ち主に所有権があるため、自治体が所有者の同意なく撤去すると、民法上の不法行為に問われる可能性がある。

読売新聞オンライン(2024/1/29)

まず以て所有権問題。解説不要。

②住人不在による同意取得の難しさ

市外の親戚宅などに身を寄せたり、2次避難したりする住民が多いため、市の担当者は「住民と連絡がとれず、同意を得るのが難しい」と頭を悩ませる。

読売新聞オンライン(2024/1/29)

自宅倒壊した人にとっては一時帰省する際の宿泊場所も課題。

③相続登記

公費解体に係る問題(NHK)(2024/4/2)

公費解体における問題点。空き家問題も同時発生。
なお、輪島市等では相続人全員の同意無しに申請できる緩和措置を実施。他の市町についても検討中。
北國新聞(2024/4/5)

④倒壊家屋に対する人々の思い

 能登半島地震で甚大な被害に見舞われた石川県珠洲市では、発生から2カ月以上が経っても瓦礫の山が手付かずで残っている。しかし、被災者にとっては瓦礫の中にも大切な思い出が埋まっている。

Yahoo!ニュース(2024/3/9)

家族写真、行方不明になったペット、貴重品、仏壇、趣味の品々…どうしても手元に戻したい、そんな思いに応える活動も。倒壊、はい撤去…とはいかないもの。また、品々を取り出せたとしても保管する場所やサービスが無くて頭を悩ませている、という話も数多く耳にする。

「災害NGO結」様活動

一方、公費解体に待ったがかかるケースもある。

北國新聞(2024.5.9)

倒壊したビルの所有者は公費解体を申請しているが、当該ビルの倒壊に巻き込まれ家族を亡くした居酒屋の店主は、倒壊した要因の調査が終わるまで解体に取り掛からないよう、輪島市に申請している。

⑤瓦礫より現地で生きる方の支援を

珠洲市の今後の通水予定(2024/4/29現在)

本記事編集している日付は2024/4/29。
この時点での珠洲市の通水状況は上記の通り。
また、通水したと言っても敷地内の水道管破裂による断水、という状況も少なくないのが現状。更に下水はまた別問題。

地元の方の声。まずはそこに生きる人を。

補足:解体工事と水の関係

解体工事では、建物や構造物を取り壊す過程で大量の粉塵が発生します。これらの粉塵は、作業員の健康や周辺環境に悪影響を及ぼす可能性があるため、散水による飛散防止策が非常に重要です。

解体ワンストップ×三好不動産(2024/4/12)

側溝と排水溝の違いは、道路脇に設置され、主に道路に溜まった雨水の排水を行うための水路のことを側溝といい、キッチンやお風呂、トイレの水を排水するために作られた人工的な水路のことを排水溝と呼びます。

OCN不動産・賃貸

解体工事にも水が必要であり、更にその水が流れる水路も必要。側溝・排水溝が棄損している住宅においてはこういった観点からの問題も内包している。

⑥安否不明者の捜索

石川県内では、3月4日時点であわせて7人の安否が分かっていませんが、警察はあわせて300人態勢でこの日の捜索を行いました。 警察は、安全を確保しながら捜索できる範囲での捜索が終了したことなどから、4日でいったん捜索作業を中断します。

日テレNEWS NNN(2024/3/4)

安否不明者の捜索地域については当然ながら捜索を見守ることしかできない。3月4日まで捜索が続けられていたということは、何も進めることができなかった地域が存在していたということ。

⑦災害ごみ・処理方法

倒壊した建物の廃材などで、県の年間ゴミ排出量の7年分に相当する。特に建物1万棟以上が被害を受けた珠洲市では、同市の年間ゴミ排出量132年分にあたる58万トンのゴミが発生した。

日経新聞(2024/2/6)

被害の大きかった地域は半島最奥部に位置するため「陸路」では輸送経路が限定され、運搬を担う道路も深刻な被害を受けた。そんな中、「海路」も活用し、できるだけ迅速な処理を目指す。2年間で完了したい考えだ。

北國新聞(2024/2/25)
1棟につき約10日かけ、分別しながら解体が行われる
陸地に限らず海からも輸送実施。石川県会見資料参照(2024/3/7)。

なお、地理的条件が全く異なる熊本地震においてでさえ公費解体に苦戦を強いられていた上、公費解体完了まで2年弱はかかっている(別途後述)。
日経新聞(2016.6.15)
産経新聞(2017.10.14)

⑧地理・道路状況

過去の大震災における被災地へのアクセス手段と能登半島の特異性(2024/3/3)

過去の震災における被災地では多方面からの支援を受けることができたが、今回は半島という地理的制約が支援活動に影響を与えている。特に被害の大きい奥能登4市町へ続く大動脈であるのと里山海道において、依然全面復旧(対面通行可能な状態)には至っていない。

能登半島地震で大きな被害が出た奥能登地域では、金沢市などの建設業者が実施してきた道路の応急工事がほぼ完了し、今後は本格的な復旧工事が進められることになります。

NHK(2024/4/19)

「応急」工事が終了したのが4月になってから。
本格的な「復旧」工事が進むのは本当にこれから。

⑨業者の宿泊施設問題

被災地では水道の復旧や仮設住宅の建設など今も多くの課題を抱えており、十分に手が回らないのが実情だ。

読売新聞オンライン(2024/4/26)

作業員の宿泊場所の確保も大切だ。業務を効率的に進めるには、県内外から多くの作業員を集める必要があるが、現地には宿泊施設や宿舎を建てる土地が少ない。周辺自治体や県は、土地の提供や宿舎探しに協力してほしい。

読売新聞オンライン(2024/4/26)

水が出なければ作業員も長期間滞在できない。
発災直後は工事現場に入る方は数日間の車中泊を余儀なくされ、ボランティアの方も金沢往復6~8時間かけ、活動時間は数時間という日が続いていた。
現在では宿泊施設状況も改善されてきつつはあるものの、依然課題が残る。

石川県珠洲市では能登半島地震で被災した建物の公費による解体・撤去が今後、本格化するのを前に、作業員の宿舎の確保が課題になっています。地震のあと被災者の自主避難所の1つとなっていた施設が作業員宿舎として使われることが決まり、自主避難所としては、3月31日で閉鎖されることになりました。

NHK(2024.3.31)

⑩熊本地震では2年以上

熊本地震では、3万5000棟を公費解体するのに2年余りかかったという。長期的な視点に立ち、息の長い支援が必要だ。

読売新聞オンライン(2024/4/26)

2016年の熊本地震で約4万3000棟が全半壊した熊本県では、地震後2年8カ月で3万5675棟が公費解体された。だが、マンパワー不足などで、早い自治体でも解体開始は地震後2カ月以上たってから。半年後でも、解体されたのは申請棟数(約2万2000棟)の3割にとどまった。

Yahoo!ニュース(2024/4/22)

多方面から支援を受けられる立地の熊本県でさえ上記の状況。半島という地理的不利の状況ではより時間がかかってしまう。

⑪行政負担・専門知識性

公費解体を進めるうえで、自治体職員のノウハウ不足も悩みの種だ。穴水町では、2016年の熊本地震を経験した熊本市の応援職員から必要書類や手続きなどの助言を受け、準備を進めている。

読売新聞オンライン(2024/3/3)

災害対応の経験が豊富な自治体職員は環境省の「災害廃棄物処理支援員制度」(人材バンク)に登録されているが、公費解体の分野では全国で53人しかいない。この2か月で石川県内の市町に派遣されたのは延べ29人。環境省の担当者は「人材不足は否めず、リモートでもいいので現地を支援する態勢を整えたい」と話す。

読売新聞オンライン(2024/3/3)
北國新聞※有料(2024/5/13)

現地調査や解体費用の算出を行う職員も増員予定とのこと(4/25時点91人▶︎5月末159人予定)。公費解体が申請されることと、実際に着手できることは全くの別問題。ボトルネックがどこにあるのか、常に意識する必要がある。

補足:予算

県は能登半島地震からの復旧・復興に向けた費用として、合わせて7830億円を計上しています。~中略~石川県の新年度予算は一般会計の総額で初めて1兆円を超え、1兆1101億円となりました。

NHK(2024/3/11)

⑫ボランティア関連

進まないボランティアの受け入れ 支援強化へ 宿泊所整備も検討(2024/2/19)
被災地のボランティア宿泊拠点を穴水町に設置 運用開始(2024/2/26)
能登半島地震2か月 ボランティアなど活動時間制限が大きな課題(2024/3/1)
ニーズの把握に課題(2024/4/3)

■何度も言うけど

現地の人が苦しくて辛くて弱音を吐くならわかるけど。
遅いとか見捨てられてるとか、現地のことを知ることもせずに言ってくるような人に言われたくない。
地理的にも不利な半島という地で生き抜く能登の人たちのことをもっとちゃんと知って、寄り添って欲しい。これからも応援して欲しい。

どうか、どうか宜しくお願い致します。

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