俺の青春はやる夫スレにあった

先日知人と話をしていたらインターネットアイドルやる夫を知らないという。

学生時代の大半をやる夫スレで過ごした身としては、この先歴史の断層に埋もれていくことが不憫なためこの記録を残そうと思う。

1.やる夫スレとは

某アフィブログで活用されているAAの横長の方という説明が一番伝わるのでは?と考える。
そもそもAAって何?と返されると気絶してしまうので考慮しないものとする。

毎回ついてるがこれいる?

やる夫とは2ちゃんねるで生まれた内藤ホライゾンと呼ばれるAAをアップで表現されたもので主に煽りを目的として活用されていた。

この頃はまだ名前がなく、そろそろ名前を決めようと安価でつけられたのが『ニュー速でやる夫』だった。

ここで語りたいのはやる夫ではなくやる夫スレなので説明はここまでとする。

小ネタだが実は声優がついておりなんと若本規夫である。

2.黎明期のやる夫スレ

・刺身の上にタンポポのせる仕事の採用試験に受かったお!!!

最初のやる夫スレと言われている短編やる夫スレ。
2007年に投稿され、それまではただの煽りとしてでしか使用されることのなかったやる夫と物語を組み合わせ短編ストーリーと化した。
これよりも以前にストーリー性のあるスレ(通称、紀元前やる夫スレ)は存在したとも言われている。

今でも見かけるAAが使用されている

・やる夫が小説家になるようです

俺がやる夫スレにハマるきっかけとなった作品。
こちらも2007年に投稿されブームの火付けとなった。

ニートのやる夫が小説家を目指すためにシナリオライターのやらない夫へ押しかけ享受してもらいながら様々な登場人物と出会い成長していく話である。

以降、暇を持て余したやる夫がやらない夫へ小便をまき散らしながら押しかけ様々なことを教えてもらう「やる夫で学ぶシリーズ」が増えた。
また涼宮ハルヒの憂鬱の長門有希が登場し、やる夫御三家と呼ばれる原作のあるキャラクターたちが登場することが主流となった。

どちらも2007年の作品だが翌年には四大長編と呼ばれる作品が投稿され始めているため黎明期といえばこの2作品になるのだろう。

3.やる夫御三家

やる夫御三家についての説明をここでいれる。
やる夫スレではほぼすべてのスレでヒロインが登場する。
そのヒロインたちはアニメやゲーム、マンガなどに登場したキャラクターをAA化したもので現在出回っているキャラクターAAはやる夫スレのために作られたものも多くあると言っても過言ではないと思う。

前章で述べたやる夫御三家というのは
・涼宮ハルヒの憂鬱
・らき☆すた
・ローゼンメイデン
の3作品のことである。

黎明期から成長期にかけてのやる夫スレを10開けばすべてにこの作品の誰かが登場しているという状態であった。
特にローゼンメイデンは『翠星石がやる夫のせいシリーズ』以降、活用される頻度が増え、8姉妹(薔薇水晶含む)がそれぞれ原作にないキャラ設定などがどんどん追加されていった。
俺は原作よりもやる夫スレの薔薇乙女たちの方が付き合いが長い気がする。

やる夫スレのせいで好きな薔薇乙女は薔薇水晶

特に翠星石はビジュアルやツンデレ要素も相まってやる夫のヒロイン役として活躍する場が多かった。
あまりも多すぎてしまったためどのスレを開いても翠星石がいるなどという状態となり翠星石ショックと命名されるぐらい一時期荒れていた。

他にもやらない夫のヒロインは真紅、水銀燈は英語ができない、雪華綺晶はシスコンなど原作勢からするとなぜそんなことに?という設定が多発していた。
ちなみに彼女たちはドールサイズではなく基本的には人間サイズまで巨大化している。

I megu daisuki!

涼宮ハルヒの憂鬱、らき☆すたについても当時アニメ放送直後ということもあり頻繁に登場したがこちらはあまり大きくキャラが崩れた印象はない。

もちろん御三家以外にも数多くのアニメ、ゲーム、マンガのキャラクターがやる夫たちと交流してきたのだった。

4.やる夫派生

やる夫スレには上記のような原作のある既存キャラクターだけでなくやる夫そのものから派生したキャラクターも多数登場する。
いくつか例をあげる。

・やらない夫

某アフィブログにいる顔が縦長の方。
元々はやる夫の横顔だったがあまりにも似ていないため独立したキャラクターとなった。
「○○だろ…常識的に考えて…」が口癖の通り真面目な性格が多くやる夫がやらない夫に助けを求め様々な事を教えていく「やる夫で学ぶ○○シリーズ」の講師役だった。
その後独立した人気が出始めやらない夫板までできあがっていった。
朝倉涼子、真紅とカップリングを組むことが多い。

いつの間にか筋肉キャラになっていた

・できる夫

やる夫の特徴ある鼻が取れた姿。
優等生キャラ。
丁寧な口調で話すことが多くやる夫の友人だったりいけ好かないライバルだったり便利キャラだった。
金糸雀とカップリングを組むことが多い。

・できない夫

やらない夫とできる夫を足した姿。
出演作が少なく印象が薄い。

・やる実、やらない子、できない子

それぞれやる夫、やらない夫、できない夫の女性派生キャラクター達。
できる子も存在するが印象にない。
それぞれ派生元と血縁関係にあることが多いができない子だけは別。

どうみてもDTBの銀

その他にも猟奇的な見た目をしたキル夫や老人の見た目をしたやる蔵など10や20程度では収まらないやる夫派生が存在する。

5.成長期のやる夫スレ

主に2008年から2011年ごろだと思っている。
先ほど述べた四大長編と呼ばれる作品が投稿され始め、これまで単発で完結していたストーリーが日を跨ぎ何週間、何か月とシリーズ化するようになった。

四大長編

・やる夫がときめきメモリアルな体験をするようです

ときめきメモリアルを原作とした長編スレ。
全31話に加え番外編などもあり半年近く投稿された。
やる夫を主人公、御三家キャラをヒロインとした青春物語である。
各ヒロインをピックアップしつつマルチEDなど作風もとても凝った作品である。
当然原作設定からかなり崩壊しているキャラもいる。

・やる夫が空を目指すようです

ブレスオブファイアVを原作とした作品。
全16話、約3か月かけて投稿された。
ただ原作通りに進むだけでなくオリジナル要素もあり、そこも評判がいいという珍しい作品。
俺はこれを読んで原作を中古(500円)で買った。

ワンコインで買える神ゲー(激ムズ)

・やる夫のロマンシングなサーガいきなり3

ロマンシング サ・ガ3を原作とした作品。
全22話、約2か月かけて投稿された。
やる夫・やらない夫・翠星石をメインとしたキャラクターの掛け合いなどが魅力。
やる夫・やらない夫・翠星石の3人を指す「YYS」ややる夫のあだ名「白饅頭」など様々なワードの起源でもある。
同人誌化されたという話もあるが読んだことはない。

・やる夫が徳川家康になるようです

以降多発することになる歴史系の始祖。
全35話、約3か月投稿された。
歴史系はあまり興味がないので読んでない。

長編といわれてはいるものの後期の作品と比べると話数自体はとても少ない。(最近では平気で100話越え、数年単位での投稿もある)
当時リアルタイムで追っていた身としては次に投稿されるまでの期間もあり長く感じていたのだと思う。
改めて読むとあっさり読めてしまうと思う。

なおやる夫スレまとめサイトの閉鎖が相次いでいるため読めない作品も多い。

四大長編に影響されこの成長期では多数の長編やる夫スレ画投稿され盛り上がりを見せた。

以下好きな成長期の作品たち
・やる夫が妹たちのために頑張るようです
・やる夫がお隣のお姉さんを孕ませたようです
・やるラヴ
・やらないキッチン
・やらない夫の月は綺麗なようです

支援絵が100枚を超えてるのはすごい!

しかし当然ブームが起きれば良いことだけではない。
読者が増えた結果スレ内だけでなく専用板(当初はニュー速などで投稿されていたが数が増えやる夫板などで投稿されるようになっていった)全体で荒れたり前述した翠星石ショックなど様々な問題も起こった。

またやる夫スレにはエタるという言葉がある。
この界隈でしか聞いたことが無かったが元々はフリーゲームなどのゲーム制作で生まれた単語らしい。
物語が作者の都合により未完のまま終わることを指す。
作者自身がエターを宣言することもあるが作者失踪のまま更新が止まるケースが大半を占める。
数年後で突然復活するケースもあるがブームに乗り乱立したやる夫スレの中には完結しないまま埋もれて行った名作もあるのだ。

6.成熟期のやる夫スレ

2012年から2016年辺りのことを指すと考えている。
この頃は本当にやる夫スレが多かった。
成長期の頃からすでにやらない夫が主人公のスレがあったができる夫やできない子などの派生キャラ、そしてこの頃から登場することが増えた東方シリーズやまどかマギカなど原作のあるキャラが主人公を務めることも増えた。
場合によってはやる夫が登場しないケースもあった。

これも元ネタはやる夫の登場しないやる夫スレ

成長期にはなかった変化としてR18系が見かけられるようになる。
以前より一部存在はしたがこの辺りから一気に増え始めた印象がある。
理由としてはエロAAが増えたことだと思う。
信じられないことだがこの時代ではやる夫スレのためにAAが作られることがあり既存のAA同士を組み合わせ新しいAAを作ったりイラストを元にAA化したりなどブームと合わせて発展してきた。
そうした中で一度しか使われないようなAAやエロAA、グロAAなど使用用途が限られるものも増えて行った。

いったい何が彼らをここまで動かすのか…まぁエロか…

他にも読者も参加できる安価スレが出始めた。
やる夫スレでは作者が物語を描き読者はそれを見守り感想を言うだけであったがやる夫の行動を安価で指定し即興で描く作品が生まれた。
世間ではFate/Zeroのアニメが話題となり、やる夫に聖杯戦争に参加させ安価で行動させるスレなどがあった。

作品スレではなく作者スレが立ち始めたのもこの頃だと思う。
後述するがやる夫スレの衰退の原因だと考えている。

以下好きな成熟期の作品たち
・彼らは友達が皆無
・やる夫は魔眼を手に入れるようです
・できない子は"悪魔"と呼ばれるようです
・やる夫はカードを引くようです
・やる夫vs
・白頭と灰かぶりの魔女

完結したら読むと言い続けて6年がたった

7.衰退期のやる夫スレ

2017年から現在。
この頃にはもう既存の作品や話題になった作品しか読んでいない。
ここでは衰退の原因について述べる。

まず作者が減り始めたこと。
この頃は小説家になろう等インターネット上で手軽に物語を投稿できるサイトが増え始めた。
やる夫スレでは物語を書くだけではなく文章にあったAAを選出する必要がある。
俺自身、作品名は伏せるがやる夫スレを執筆したことがありとてつもない労力だった。
小説という原点には返るが執筆のしやすさ、窓口の大きさなど人が流れていくのも当然だと思う。
事実やる夫スレ作者が小説家デビューしてるケースも珍しくない。

次に読者が減り始めたこと。
理由は作者と読者の馴れ合いだと考える。
成長期以降、同じ作者が別の作品を書くことが増え作者名そのものが知名度をあげていくことが増えた。
その結果、作者専用スレが立ち読者との交流やちょっとした短編などの投稿などが見られるようになった。
また前述した安価スレや、ダイス機能を使ったあんこスレなど作品そのもので作者と読者が交流しながら進める作品も多くなり馴れ合いが増えた。
こうした馴れ合いは既存ユーザーにとっては楽しいかもしれないが新規層にとっては壁でしかなく入り込む隙間がない以上、人は減っていくしかない。
やる夫スレに限った話ではないが。

こんな光景に入る勇気はない

制作者と消費者が減れば同然文化は衰退していくのである。

以下好きな衰退期の作品たち
・できない子とSCP
・やる夫はこの世界でたった一人の出来損ない勇者
・やる夫がプレイ済みの異世界で冒険者になるようです
・エージェントやる夫の日常茶飯事

なぜできない子だけここまで人気になったのか

2020年以降はほぼ読んでいない。

2019年には突然「傑作やる夫スレ4作が一挙にラノベ化」などどいう企画が発表がされた。
話題にはなっていたが火付けにはならずほとんどが打ち切りになった。
あと黒歴史なのか知らんが公式サイトは消えた。

8.やる夫スレに思うこと

青春を過ごしてきた場所が衰退しペンペン草程度しか残っていない。
現代風にいうとずっと続けてきたソシャゲがサ終、応援し続けてきたVtuberが引退するようなものだ。

DQR、帰ってきてくれ…

「傑作やる夫スレ4作が一挙にラノベ化」には少し心ときめき浮足立ったが、発表が一番盛り上がるという古のゲームリメイクを見ているかのような結果だった。
実際どうなのかは不明だが書籍が打ち切られたショックか、元ネタのやる夫スレそのものもエタる悲しい事件も起きた。

他にもまとめサイトへの転載に激怒し更新をやめた作者もいた。

やる夫スレの話がエロゲーにパクられお気持ち表明することもあった。

作者が別の作者と喧嘩した結果、掲示板の管理人と揉めてすべてのスレが消えることもあった。

きっと俺の知らない作品や騒動なんてたくさんあるんだろう。

元々はやる夫スレはなんなのかを説明するつもりで書き始めた文章だがなぜかこちらに相当なダメージが入ってしまった。

色々述べてきたがなんだかんだでやる夫スレの復興を望んでいる。

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