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コウモリさんの一泊二日は大騒動

タイトルの通りのことが起きました。
家の中にコウモリが入って来てしまったのです。
それはまさに悪夢のような出来事でした。

1 大きな黒い虫が家の中を飛び回る

六月某日の深夜二時頃、私は玄関の戸を開けた。
その時、カサリ、という音を聞いたような気がした。
私はそのまま外へ出た。
夜風に当たるためだ。
目が覚めてしまったので、ちょっとそこまでなんて思ったのが運の尽きだった。

気がすんで家へ入った。
すると部屋の中を何か黒くて大きな虫のようなものが勢いよく飛んでいた。
うぐぎゃあーーー!!! と我ながらみっともない悲鳴を上げてしまった。
見たことのない虫だった。
私はさっき聞いたカサリという音を思い出した。
あれだ。

私はその虫と対決する気持ちが全く沸かなかった。
あれはやばい。
急いで洗面所へ逃げた。

あれはなんなのだろう?
私は考えた。
Gではないな、形が違うしサイズも違う。
まさか新種のGで大きくなったとか?
絶対に嫌だ。
そうだ、バッタかもしれない。
あの黒い虫、15センチくらいあったと思う。
それに玄関の所にいたし。

私は以前、玄関ドアのすぐそばで大きなバッタを見たことがあった。
15センチほどの黄緑色のバッタだ。
私はそのサイズに慄いた。
バッタってこんなに大きく育つのか!

でもバッタだとしても、色が違う。
部屋を飛んでいた虫は真っ黒だった。
じゃあ、イナゴかもしれない。
イナゴは変身して色が変わるというし。
でも茶色くなるんじゃなかったっけ?

新種の外来種かな?
そういえば近所で新築の家が建設中だった。
その資材についてきてしまったのかもしれない。
あんな虫、見たことないし妙に迫力があるし。
さすが外来種!

私は朝まで洗面所に籠ることにした。
再び、あの虫と対面したくなかったからだ。
熟睡している相方を起こすのも気が引けた。
深夜にのこのこ外へ出て、大きな黒いバッタが部屋に入ってしまったから捕まえてほしいなんて、とてもじゃないが言えない。

2 外来種のバッタに家の外へ出てもらう作戦

朝になって部屋の中を探した。
しかしあの外来種のバッタは見つからなかった。
どこかに隠れてしまったらしい。

さっそく捕まえてもらえると思っていたので残念だった。
あのバッタと同居するのかと思うとゾッとした。
虫のことはあまり考えないようにして一日を過ごした。

夜になった。
やがて私たちが寝静まった頃、カサカサと何かが動く音がした。
はっとして飛び起きて、相方と対応した。
相方は箒を持ち、私はビニール傘を広げた。
傘は盾の代わりだ。
殺虫剤は使わなかった。
なんとなく殺虫剤如きでは、外来種のバッタを倒せるとは思えなかったからだ。

とにもかくにも、そのバッタは私の方にばかり飛んできた。
そしてビニール傘にぶつかってくるのだ。
私は悲鳴を止められなかった。
第一回目のバッタ退治作戦は失敗に終わった。

作戦会議が行われた。
バッタは飛び回るか、隠れるかしかしない。
飛び回る時はかなり素早い。
しかも私の方にばかりに飛んで来る。

バッタを退治するのは諦めて、家の外へ追い出す作戦に変更した。
早く外へ出ていって欲しい。
玄関の戸を開けて、懐中電灯で外を照らし、部屋の明かりを消した。

私たちは廊下へ出て、その時を静かに待った。
しばらくすると、部屋と廊下の境のガラス戸にバッタが飛び回る影が映った。
微かな懐中電灯の光が当たってできた影だった。
それはかなり不気味だった。
だがやがて、その影が見られなくなった。
外来種のバッタはようやく、家の外へ出ていったのだった。

3 家の中に入ってきたのは、どうやらコウモリだったらしい

悪夢のような二晩が終わった。
私はクタクタだった。
あんな虫がこの世にいるなんて、信じられない気持ちだった。
出ていってくれて、本当によかった。

それにしても恐ろしい虫だった。
黒くて大きさは羽を広げると15センチ以上あるような感じだった。
羽根の形はトンボみたいだった。
先端が丸いのだ。
胴体もしっかりしていた。
でも、それ以上の特徴はわからなかった。
なにしろ飛ぶ速さが早くて、飛ばない時はどこかに隠れてしまう。
虫のくせに知能が高い気がした。
本当に虫だったのだろうか?

私は玄関の外のたたきの上に気味の悪い黒い塊を見つけた。
あの虫がいたあたりの場所だ。
虫のかけらだろうか?

あまり見たくなくて、すぐに家の中に戻った。
家の中にも黒い小さなかけらを数個見つけた。
あの虫の残骸だろうか?

ふと、閃いた。
もしかしたらあれは虫ではないのかもしれない。
例えば?
コウモリだとか?
でも羽の形がコウモリっぽくない。
ネットで調べてみた。

4 悪夢のアブラコウモリ

結論として、あれは新種のバッタなどではなかったようだ。
おそらくアブラコウモリだったと思う。
別名イエコウモリともいうらしい。
住宅地で見られるコウモリはほぼこのアブラコウモリだそうだ。

夜に行動することやその習性などを考慮すると、コウモリだとしか思えない。
そして決め手は玄関の外の黒い塊。
あれは糞だった。
小さいくせに量がすごかった。

コウモリは一晩に300匹の虫を食べるらしい。
私はこれまでコウモリの生態にあまり興味はなかった。
でも調べてみたら、虫を大量に食べてくれるありがたい生き物だと知った。

ありがたいけれど、やはり同居は無理だ。
コウモリの方だって、無理だろう。
だからお互いに十分に距離を保って、今まで通り上手に共生できるといいなと思う。

今回、なぜ私の家にコウモリがいたのだろう。
あのコウモリは羽の形がちょっと変わっていた。
写真で見るアブラコウモリのものとは違っていた。
でもコウモリに違いない。
まだ子供だったのだろうか?

私の家を好ましく思ったのだろうか。
でも、お互いに散々な目にあったのだ。
二度と来ることはないと願いたい。

それにコウモリはウイルスを持っている。
やはりお互いに離れて暮らすことが何よりだ。

もし、コウモリの今まで住んでいた環境が破壊されたのだとしたら。
そして新しい住処を探していたのだとしたら。
どこかに住みごごちのいい巣が見つかっているといいなと思う。
短い間だったけれど、一緒に暮らした仲なのだから。
悪夢のような夜だったけれど、お互いに。
























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