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【国際ニュースを分かりやすく解説!】タイで軍事予算に対する批判が高まる


タイ政府の軍事予算に対する批判が高まっています。国民からは、政府の軍事支出が過剰であるとの声が挙がっており、特に教育や公共サービスなど他の重要なセクターへの投資が不十分であるとの懸念が表明されています。この問題は、国内の社会経済的優先事項に関する広範な議論を引き起こしており、政府の財政管理と資源配分の透明性に関する問題が浮き彫りになっています。また、軍事予算の増加が国の安全保障にどのように貢献しているのか、その有効性についても疑問が呈されています。

タイはそもそもどんな国か

1. 第二次大戦後のタイの歴史

 第二次世界大戦後のタイの歴史は、民主化と軍事政権の交代を繰り返す複雑なものでした。1947年、軍事クーデターによって成立した軍事政権は、民主的な政治体制への移行を約束しました。しかし、その後もタイは数回のクーデターと民主化への試みを経験しました。
 1957年、さらに強力な軍事政権が樹立され、国内の開発と経済成長に重点を置きました。これにより、1960年代には経済的な成長が見られましたが、政治的自由は制限され続けました。1970年代に入ると、学生運動や市民による抗議活動が活発化し、1973年には民主化への大きな動きが見られました。
 この時期、一時的に民主的な政府が成立しましたが、1976年には再び軍事政権が樹立されました。1980年代後半になると、タイは経済的にも政治的にも成熟し、1992年の「ブラックメイ」事件後には、より民主的な政治体制への移行が本格化しました。
 しかし、2000年代に入ると、政治的な不安定さが再び顕在化し、2006年と2014年には軍事クーデターが発生しました。これらのクーデターは、政治的対立と国内の分裂を背景にしていました。タイの歴史を通じて、民主化と軍事政権の交代は、国の政治的、経済的発展に影響を与えてきました。
 この流れは、民主主義の脆弱さと、軍事力が政治において依然として重要な役割を果たしていることを示しています。また、民主主義と軍事政権の間の緊張関係は、タイの政治的な将来において依然として重要な課題です。

2. 現在のタイは軍事政権下にある

 2024年1月現在のタイの政権は、2014年の軍事クーデターの後に樹立された軍事政権に由来しています。このクーデターは、タイ国内の政治的対立と混乱に対する反応として発生しました。現在のタイの政治状況は、軍事政権による厳しい統制が敷かれています。この政権下では、自由な発言や行為が規制され、国民の間に恐怖感が広がっています​​​​。クレディ・スイスの調査によると、タイは人口の1%が国富の66.9%を保有している「世界で最も不平等な国」の一つとされています​​。1980年代以降の経済成長にも関わらず、首都バンコクと農村地帯の間の格差は拡大し続けています​​。
 軍事政権は、選挙での勝利を確保するために選挙制度を変更し、2016年には新しい憲法草案の賛否を問う国民投票を実施しました。この草案は軍事政権に有利であり、賛成票が61%で承認されましたが、この結果は多くの民主活動家の逮捕につながりました​​​​。さらに、2014年の軍事クーデター以降、メディアや民主活動家に対する規制が強化されています​​。

軍事予算に対する批判の背景にある国民感情

1. 実はタイの軍事予算は対GDP比で減少している

 軍事予算については、タイの最新の軍事費の対GDP比率は1.16%で、2021年の1.3061276571085%から減少しています​​​​。これは、1979年以来、軍事費の対GDP比率が最も多かった時期よりも低い水準です。2023年度の予算案では、歳出が2.7%増加しており​​​​​​、軍事予算に関する国民の懸念が引き続き存在すると考えられます。

2. なぜ批判が高まっているのか

  1. 軍事政権と民主化のバランス
    2014年の軍事クーデター以降、タイでは軍事政権が統治を続けており、厳しい規制が敷かれています。これにより、民主派野党連合が下院総選挙で過半数の議席を確保するなど民主政権の樹立への期待がある一方で、司法判断や再度の軍事クーデターによる軍事政権回帰の可能性も残されています​​。

  2. 経済成長の鈍化と格差の拡大
    タイでは、近年の経済成長の鈍化が国民の不満に拍車をかけています。2014年から続くプラユット政権下で、タイの経済成長率はASEAN諸国と比較して低水準となっており、貧富の差が拡大しています。新型コロナウイルス感染症の影響や急速なインフレも国民生活に大きな影響を及ぼしています​​。

  3. 軍事費と社会的優先事項のバランス
    タイの軍事費の対GDP比率は1.16%で、過去よりも低下していますが、国民の間では軍事予算が過剰であるとの認識が強いようです。これは、軍事政権による強い統制、経済成長の鈍化、社会的格差の拡大など、国の社会経済的な課題が複雑に絡み合っていることに起因している可能性があります​​​​。


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