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第3号被保険者制度(3号年金)を批判する・その5〜「女性の貧困元年」1

ここからは参考にしたサイトなどを出しつつ、個人的な思いをつらつらと書いていこうと思います。

1985年は「女性の貧困元年」

3号年金が1985年に男女雇用機会均等法と同時に始まったことを初めて知ったのは、下記のサイトを読んだ時でした。

3号ができた年を「女性の貧困元年」とはっきり断定している人がいることを知って驚きましたし、心の奥底にずっと転がっていた疑問の答えを得られたようで深く納得しました。

3号はただ単に家父長制ボーナス制度というだけではなく、全女性の経済力を奪うことを目的に始まって、その意図通りに女性差別を深めてきた元凶だった。

(執筆者がシングルマザーだから主に一人親の貧困に焦点が当たっていて、『「総合職」の女性は、多くが男性並みに働く代償として、結婚や出産を諦めざるを得ない人生を強いられてきた』なんてことがサラッと書いてあっておいおいという部分はありますが。)

これを読んで以来、3号擁護の欺瞞を裏まで見通せるようになりました。

また、「女性の貧困元年」という言葉は、2009年に発行された下記の冊子に寄稿されている藤原千沙教授による論考が初出だそうです。

論考によると、3号制度制定に至る経緯として、まず1979年に『日本型福祉社会』が自民党から発表されました。日本の福祉は「家庭と企業による福祉を前提として、民間の保険で補って、国は最終的な生活安全保障の場面にのみ登場する」という形が目指すべきものだとされたそうです。
そんなにはっきり福祉は家族と民間で責任負うべしと言ってたのすごいですね。しかも1979年って国連で女子差別撤廃条約が批准された年ですよね。

その目標に沿って1985年までに下記改革を次々と実現。
・介護を担った相続人の取り分を増やす寄与分制度
・パート労働者の非課税枠の引き上げ
・夫と死別した妻への遺族年金制度を導入
・離婚したシングルマザーへの支援は二段階にして、実質的に削減
そして満を持して、最も特権度が高い大本命の3号年金の採択となりました。

さあ「女性の貧困元年」の幕開けです。
ついでに3号制度等が採択された2年後、1987年に、配偶者特別控除制度も始まりました。

私は今回は3号だけにスポットライトを当てていますが、配偶者扶養控除も遺族年金も腹立ちますね。
それが全て3号と同時進行だったとは。ついでに片親支援を手薄にしたと言うんだからどんだけ女を結婚に追いやりたかったのか。
(それにも関わらず、非婚化がどんどん進んだんだから素晴らしいですよね!)

1979年に国連で決まった女子差別撤廃条約。
そんな国際条約に負けない強い家父長制社会を作り上げるために、6年かけて小遣い稼ぎ労働優遇などを仕込んで片親家庭支援を削減。そして男女雇用機会均等法を受け入れると同時に、その強烈なカウンターアタックとなる遺族年金と3号年金を採用。万全の体制で女子差別撤廃条約を正式に採択した。

「日本スゴイ!」と叫びたくなりましたよ。
男女を同等に扱えとかいういけ好かない男女雇用機会均等法を骨抜きにするために、国際条約に従っているふりをしながらやれるところまでやり尽くした。

上記の冊子の発行は2009年なので15年も前ですが、「女性の貧困元年」と喝破した論考がある通り、全体の内容は今でも色褪せていません。
逆に言えば女性の貧困問題がこの頃から一切変わらず放置され続けているということなので悲しくはありますけれども。

ついでにこの頃は「派遣村」(ワーキングプア向けの炊き出し支援)が話題になった時期で、『派遣村は良い取り組みだけど、男に非正規が広がって初めて社会問題として認識されるんですね。女性はずっと前からワープアでしたけどね』という悔しみが漂っていたりして、読み応えがあって面白かったです。

また、冊子中にひとつ、まさに3号に関わる匿名の生々しい声があって頷くことしきりだったので、引用します。

大卒後1年正社員で働いて病気になって以来、ずっと非正規で働いている。大手スーパーでパート雇用されていた時、残業や日曜の割り増しをカットすると言われて反発を感じたが、パート仲間の主婦は「時間が増えると103万円以上になるから、かえってよかった」と。夫が正社員の主婦に「本当にあなた大変よね、生活があるから」と言われると、「お前が年金払わないから私が払うんだよ!」と怒りがわく。女性同士のネットワークは組みたいけど、正直、夫に養われている人との共闘は難しい。

『女たちの21世紀 No.57 2009年3月号』p.10 「会場の声」より

ここにはこれから私が書こうとしていることがほぼ完璧に要約されています。15年も前の怒りなのに、つい昨日新聞に投書されたと言われてもおかしくないほどの新鮮な内容で驚きました。
2009年って東京で最低賃金791円だった頃なんですよね。地方なら600円台。非正規雇用の独身女性がどれだけ搾取され続けていたか。

この引用を掲載しただけでもう満足しかけていますが、もちろん私なりに盛大に愚痴りたいと思っていたことをこれから出していきますよ。

(次回に続く)

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