2018.11.29 おもしろい論文レポート[21]


Seabird foraging tactics and water clarity: are plunge divers really in the clear?
Haney, JC; Stone, AE
Marine Ecology Progress Series (1988) vol. 49, pp. 1-9
doi: 10.3354/meps049001

要約:

空中から水中へ飛び込む「plunge dive」によって餌を取る鳥類の個体数や群内での割合は、採餌エリアの水の透明度が高いほど高くなるという仮説(Ainley 1977)の検証を試みた論文。この仮説は、透明度が高いほど空中からの餌発見率が高くなるはずという推測に基づいている。

陸から沖に向けて徐々に透明度が高くなる海域で、センサスによるplunge diver(ネッタイチョウ、カツオドリ、アジサシ)の個体数調査と水の透明度の計測を実施した。結果は仮説とは真逆で、透明度が高いほどplunge diverの個体数も割合も少なくなっていた。本研究では、水の透明度が海鳥の採餌戦略に与える影響を明確に示すことはできなかった。


客観的な意義

・これまでは特定の種のみについて仮説検証がされてきたが、この研究では複数種を同時に見ている。Ainleyの仮説は元々後者を想定しているので、その意味では初めての検証となった。

・捕食者の採餌成功率は、餌の発見率(detectability)と餌の存在量(abundance)に左右される。視覚に頼って餌探索をする動物の採餌戦略(ここではplunge or pursuit diveのこと)と餌発見率の関係を検証した。


この論文を選んだ理由

・オニアジサシ Caspian tern の研究をしていて、どのような環境条件がplunge diveに適しているのか興味があった。

・仮説を全くサポートしないネガティブな結果が発表されているのはあまり見たことがないけれど、このような姿勢も重要だと思った。


気になったこと

・clarityだけじゃなく、水面の波立ち具合(風環境と関係?)も餌の視認性に影響を及ぼすのではないかと思った。

・餌側の分布はclarityの影響を受けているのだろうか。この可能性は論文内でも触れられている。

・この調査海域では、透明度が陸からの距離とともに高くなっていく。距離が関係しているかどうかはわからないが、沖に出ると鳥の個体数自体が激減していることから、透明度以外の物理的な要因の影響が強すぎるようにも思える。日によって透明度が大きく変わるような海域で検証するのがよさそう。

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