2018.6.8 おもしろい論文レポート[10]

Flack, A., Nagy, M., Fiedler, W., Couzin, I. D., Wikelski, M. (2018).
From local collective behavior to global migratory patterns in white storks. Science, 360(6391), 911-914.

【要約】
初めて渡りをするシュバシコウ(white stork)の幼鳥にGSMタイプのデータロガー(携帯電話用のネットワークを使ってデータを送る)を装着し、移動経路と加速度を最初の5日間は高周波で断続的に記録、その後は低周波で連続記録した。

得られたデータから同じ群れの中にいる27羽のサーマルソアリング中の行動を解析したところ、リーダータイプとフォロアータイプに分かれることがわかった。リーダーは上昇気流を発見し、フォロワーよりも少ないはばたき運動でより高いところまで上昇した。そしてその後は、より高い高度を、より長い時間と距離、滑空で移動していた。つまり、フォロワーはリーダーに追随することで上昇気流を見つけることができる一方で、群れからはぐれないようにするために上昇気流を最大限に活用することはできず、移動コストが相対的に大きくなっていた。

さらに、渡りの開始から4週間で移動した距離は、リーダーの方が大きい傾向があった。本研究により、野生の渡り鳥における群れ行動がもたらすメリットとデメリットを明らかにすることができた。


【客観的な意義】
・野生の渡り鳥、しかも幼鳥の群れ行動を追い続けることは難しいが、それを実現した。

・局所的な個体間相互作用と、ラージスケールで見た渡り行動との関係を明らかにした(ただし因果関係は不明かも?)。


【おもしろいと思ったポイント】
・followerの方がはばたいている時間割合(移動コスト)が大きく、結果的に渡り距離が短いという傾向がとてもはっきり出ていた。しかし、遠くまで行くメリットは何なのだろう?

・とにもかくにもすごいデータセット。


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