2018.7.6 おもしろい論文レポート[13]

Coevolving avian eye size and brain size in relation to prey capture and nocturnality
Garamszegi et al.
Proc. R. Soc. Lond. B (2002) 269, 961–967  
DOI: 10.1098/rspb.2002.1967

【要約】
眼のサイズが大きくなるとそれに伴って脳のサイズも大きくなる*という仮説を、約150種の鳥類の標本を用いた種間比較によって検証した研究。さらに、眼や脳のサイズが餌のタイプ(植物、動物、など)や水中採餌をするかどうか、そして夜行性度合いと相関しているかどうかを調べた。眼のサイズと脳のサイズはどちらも体重が大きいほど大きくなる傾向にあり、両者の間にも正の相関関係があった。また、夜行性度合いは眼および脳のサイズ、餌タイプは眼のサイズと相関していることも明らかになった。一方、水中採餌をするかどうかは眼と脳のどちらのサイズとも有意な相関関係は認められなかった。以上の結果から、行動面での適応に伴って眼(知覚システム)と脳の相対サイズが共進化する可能性が示された。

*この論文では、眼のサイズ=体積、脳のサイズ=重さ

【客観的な意義】
・眼のサイズが大きくなると視細胞の数が増え、より多くの情報処理をするために脳も大きくなるという仮説が以前からあったが、それを検証した研究はどの分類群についてもこれまでになかった(surprisingly, not yet been analyzedと書いてあった)。

【おもしろいと思ったポイント】
・前回のレポートにも書いたけれど、脳や知覚器官と行動の関係に興味がある。
・全部で2700羽を超える標本を計測したらしい。すごい。
・夜行性の霊長類では、眼は大きくなるが脳は大きくならないらしい。視覚よりも嗅覚や聴覚など他の器官が発達するためではないかと書かれている。鳥類ではいずれにしても飛行のために視覚を発達させる必要があるから、他の器官を発達させるという方向には行かなかったのだろうか。

【疑問】
・眼の大きさとの関係を見るのなら、脳全体の重さではなく視覚に関わる領域だけを比較するべきではないか?...と思ったらDiscussionで言及されていた。
・餌タイプ、水中採餌度合い、夜行性度合いを3段階のスコアで表しているが、そんなにはっきり分類できるものだろうか? そして、図鑑から得た情報はどこまで正確なのだろうか?(handbook, field guideで調べた、としか書かれていない)
・目(もく)レベルなど、もう少し狭い範囲で種間比較をしたらどんな結果になるだろう。


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