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勝手に名言紹介 [2]

(バイオロギング研究会 会報 2018年6月号より)

どうして研究者になったの?

『研究者が一番安定しているから』(某教授, 2015年)

小学生の頃から高校3年生まで、私の将来の夢はずっとフリーターでした。今思えば、私がなりたかったのはフリーターではなくニートだったのですが、まだそういう言葉は存在してなかった時代のことです。

なぜそんな人間になってしまったのか、「なにもしないで生きていけたらお得だなぁ」と思っていて、実際かなり怠けた生活を送っていました。そんな青春時代を過ごしたことについての後悔は様々な場面で湧き上がるのですが、研究者を目指したきっかけを聞かれた時に、「こどもの頃から海や山で遊ぶのが好きでー」とか「こどもの頃から生き物に興味があってー」という風に答えられないことも、(どうでもいいけど)コンプレックスです。ステキな自分ヒストリーを捏造しようと思ったこともありました。

ある共同研究者の方と雑談をしていた時、何かの話の流れで「どうして研究者になろうと思ったの?」という質問をしました。その方がこどもの頃からバードウォッチング好きだったことは聞いていたので、「きっと私が羨ましくなるパターンだ...」と心の準備をしていたところへ返ってきたのが冒頭の一言です。

英語で話していたこともあり(しかも電車の中だった)、「あれ、聞きまちがいかな...?」と混乱して「え?」と聞き返したのですが、「研究者になるのが一番安全な道だったから」とのことで、どうやら私の耳のせいじゃないようです。いや、確かに世界的に有名な大学の教授となられた今ならばとても安定しているし安全かもしれないけれども...?

よくよく聞いてみると、こういうことでした。10代の頃に彼女の将来の夢は3つあり、その1つが研究者になること、残り2つの選択肢は画家とダンサーだったそうです。そう言われてみれば、確かに研究者が一番安定しているかもしれない...。あぁ、すべては相対的な問題であるのだなぁとハッとさせられたことです。というか、将来の夢がどれもかっこよすぎてやっぱり羨ましいパターン。

謎が解けた

この話を聞いて、ふとわかったことがありました。

私はこれまで、研究者になろうとしていることについて両親から反対されたり心配されたりしたことがありません。覚えている限りでは(忘れてるだけかもしれないが)、「どうして研究者になりたいのか」とか「本当になれるのか」とか一度も問われたことがないのが前々から不思議だったのですが、両親からしてみれば、働かずに生きていきたいとか言ってる娘が家でゴロゴロしてるよりはうんとマシだと思っていたからなのかもしれない。相対的には。

勝手に名言分析

名言が名言たる理由は様々ですが、いつのまにか染み付いていた固定観念を緩めたりずらしたりしてくれるようなタイプの名言というのがあると思います。今回紹介した言葉も、私にとってはその一つです。

そういえば以前、某先輩が「ほとんどの形容詞は、基準を示さない限り相対的な表現でしかない」と言っていました。つまり、自分自身で基準をどう設定するか次第とも言えるかもしれません。


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