菜月とひまわり


〜母の手伝い〜

7月26日 今日から小学校の夏休みが始まる

菜月は母を訪ねて勤務先まで来ていた

「菜月!この朝顔そっちの日陰まで一緒に運んで!
このままじゃ 枯れちゃう!1時間以内に大至急お願い」

菜月は不満そうだ 
「なんで休み前にお願いしなかったの?」

ええ〜だってわたし忙しかったのよ

〜無理だぁムリむり 絶対むり〜 

竹谷竿竹カーが目の前を通過していく

「変ね 竿竹屋さん 諦めモードなんて 景気のせいかしら?」

「どうせお母さん計画性ないからね」

「失礼なー おっちょこちょいって言ってよね」

「はいわかりました!ドジということで」

菜月は不満そうだ
「やりたくない よぉ😢」

「後でラムネ買ってあげるから」「は〜い!」

菜月は母と一緒に炎天下を何度となく往復する

「あ!ねぇ 例の商談ってどうなったの?」

「さあ?猫好きさんって営業さんと猛者っていう課長さんだよ」

「は?へ?モサって誰?」

「猛者っていうのは平家物語の猛き者もついには滅びぬの略だよ」

‥‥

理系の母には猛者すら けむくじゃらの妖怪に思えるのだろう

「そのモサモサと猫さんが担当者なのね。
可愛くていいんじゃない? 母は楽しそうだ」

そうゆう問題じゃないんだけどな〜と首をかしげる菜月

「わたし猛者にこの前 ツンツンされたんだよ」

「へぇ モサモサの妖怪さびしいんじゃない?」

「そうだよ!横にすわったらタブレットのペンシルでツンツンされた」

「菜月はいじられてるわけね」
母は図星よ!という様子で頷く

朝顔の鉢を片付けていくとそこには 大きなひまわりが植えられている
花壇があった 

「お母さん これを助けたかったの?」

「そうよ!朝顔が元気すぎてこの子に絡みついていたからね」

「はい!剪定ばさみ渡しておくから ツタ切っておいてちょうだい
わたしは例のとってくる👋」

菜月は祖父のことを思い出す

菜の花には土壌の浄化作用があり 
ひまわりは太陽と復活のシンボルなんだよ

麦わら帽子を被った祖父は軍手で ひまわりを撫でていた

〜そうだよね 太陽がこの世になかったら
世界は明るく照らされない〜

これは深田さんに教えてあげないとな 

金欠で困っていたモサモサの妖怪もこれみたら喜ぶ?

スマホに太陽に輝くひまわりを残すと

菜月はピロティーに向かって歩き出す

「菜月!はい ご褒美ね」

「‥‥ お母さんこれサイダーじゃないよね?」

母が差し出すのはなぜかコーヒーゼリー

大きなタッパーに入ったゼリーと
デコレーションケーキのごとく厚塗りされた生クリーム

「どうしてよ!!」

「ごめんね サイダー 校長先生に飲まれちゃったの!」

「いいけど これなにさ?」

「職員用のコーヒーと給食室の余り物で作っといたの!食べてみて」

スプーンを受け取り 菜月はクリームを一口すくう

「おいしいね!」「でしょ💕」

「全部食べていいから 後で採点も手伝ってちょうだい!!」

「ダメ!先生じゃないから 却下します」

「ええー 仕事多すぎてもうぶちまけちゃいたいぐらいなの!」

ガシャーン!!ドサドサ ズテッ

えっ?母娘は後ろを振り返る

そこには床に散らかる 掃除用具とバケツ 

そしておまけのように 水溜りに転がる小太りのおじさん

「春田くん 助けてくれ〜 ロッカー開けたら
全部でてっちゃったんだーー」

用務員さん風のおじさん 

「お母さん これって誰なの?」

母は顔をしかめ 菜月は困り顔だ

「校長先生!!後でわたしがやるって言いましたよね」

いやぁ〜 春田くんが娘さんと一緒にいるから

見守っていたんだよ

「お母さん この人って竿竹屋さんじゃない?」

「そういえば さっきなんか変な掛け声したわ」
母は片付けのことを想像しているせいか 顔色が悪い

足元を濡らしながら 校長先生は立ち上がる

「校長先生 着替えなら 更衣室でしてください!」

校長先生を叱る 母はキャリアウーマンの貫禄に満ちていた

















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