Tokyo COVID-19; 10/11/2021
東京都における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する10月11日のノート
概要
・10月11日の報告日ベースの陽性者数は49名、週末が絡む参考値ではあるが、減少傾向は続いている。
・検査数は大幅に減少して来たが、減少速度は鈍り始めている。東京都の発熱相談センターへの相談件数の減少ペースは、陽性者の減少に比較すると鈍って来ている。発症日別の陽性数を見るとベースラインが初めて減少して来ている。またこれより算出される実行再生算数(Rt)は一時期0.6を切るまで下がった。ただし、直近の値では緩やかな上昇傾向にある。
・重症者数に関しては、10月11日現在で若年層は20代1名、30代1名と減少が続いている。40代から60代は40代9名、50代30名、60代14名と依然として重症者の中心を占めている。50代を中心に減少が続いているが、直近では減少が鈍り始めた懸念もある。重症者の中心であった70代は5名で、9月2日に43名と1月20日に記録した過去の最大値59名の70%に達した後は緩やかに減少している。
・死亡日別の死亡者は7月20日前後から再び増加し、8月に入ってから増加速度が上がったが、8月20日前後でピークに達して減少した。もっとも現時点でも8月の死亡が遅れて報告されているため、死亡数のピーク自体は年始にものに匹敵する可能性も否定はできない(あくまでも記録としての話であり、だから何だと言う話ではないが)。また、死亡者の報告数は直近の1週間では74名と、まだ高い値とは言える。
・年代別感染の推移を見ると70代、80代は増加のペースが鈍かったのと同様に減少も緩慢な動きとなっている。
・Google Mobility の観測によると、お盆で下がった人流は徐々に増え、7月の連休前のレベルに戻った。これに対して実行再生算数は7月の連休前をピークに9月12日の週まで下がり続けた。
・第4波までと第5波を比較すると、感染数・死亡数共に70代以上の占める比率が大きく低下した(ただし、あくまでも比率の話であり、累積数では陽性者、死亡者ともに第4波を超えている)。これは高齢層に対するワクチン接推進の効果とも言えるが、逆にワクチンの接種が遅れている50代の感染・重症化が急増し、また数としては多くはないが30代・40代の死亡も急増した。ただし、現状では重症者数、死亡数ともにピークを超えて減少はしている。
・9月30日をもって緊急事態宣言が解除された。今後人流の増加に伴い、現在0.7前後と低い値にあるRtも増加に転じる可能性が高い。陽性者が増加に転じるRt=1.0との間には十分なマージンがあると言えるが、今後の人流ならびにRtの推移に注視が必要である。
感染者数の全体推移
10月11日の東京都の感染数は49名と前日(10月10日)から11名の減である。内訳は濃厚接触者15名(前日比-15)、経路調査中34名 (同+6)である。経路調査中の34名は1週間前の10月4日に比べて24名の減である。
経路不明者の7日間平均は63名と前日より3名の減、1週間前から59名の減である。
この7日間平均を1週間毎に遡って比較すると
直近 63 前週比 52%
1週間前 121 前週比 60%
2週間前 202 前週比 47%
3週間前 429 前週比 59%
4週間前 725 前週比 55%
5週間前 1,329 前週比 61%
6週間前 2,172 前週比 77%
7週間前 2,810 前週比 106%
と減少はしているが、その幅は上下している。
また、各日の7日間移動平均値を、その1週間前の7日間移動平均値と比較すると
10/11より遡る7日間 前週比 -48%
10/10より遡る7日間 前週比 -48%
10/9より遡る7日間 前週比 -44%
10/8より遡る7日間 前週比 -42%
10/7より遡る7日間 前週比 -40%
10/6より遡る7日間 前週比 -45%
10/5より遡る7日間 前週比 -44%
10/4より遡る7日間 前週比 -40%
とこちらも減少は続いているが、その幅は上下動をしている。
検査者数(最新10月10日) : 陰性者が遅れて報告・集計されるため直近の数値は日々追加修正され、基本的にグラフの右端は右下がりになる。移動平均では8月下旬には17,000名近くまで上昇した以降は減少し、直近では7,000を割っている。陽性率の7日間移動平均は6月11日に3.9%まで下がった後上昇に転じ8月15日(お盆期間中)に23.8%まで増加した後は減少を続けている。直近では1.2%まで下がり、検査数の減と絡めて感染が一旦は収まったと言える。
発症者数(最新10月10日)
発症者グラフは発症日と報告日の時間差があるためグラフに示すように直近の1週間前後の報告数は順次追加されている。このため過去データに準拠して作成した表を利用して補正している(薄色の部分が補正値)。あくまでも参考程度で有り、特に終端に行くほど精度が落ちる。
補正値は発症日から報告日までの時差の分布を過去のデータから推定しているため、参照時点よりも時差が短ければ予測数は過大となり、時差が長ければ過少となる。このため、補正係数は適宜見直しを行っている。
なお過去の推移では、発症者は5日程遅れて報告日別感染数(経路調査中)に反映されている。
・8月1日に3,248名のピークを持った後に一旦は減少したが、その後増加し、8月10日には3,800名を超えた。その後頭打ちから減少に転じ直近では100名未満まで減って来ている。補正値は減少状態では過大に出る傾向があるため、計算上は減少のスピードは鈍りつつ様に出るが、実際にどこまで下がるかに注視が必要と言える。
実効再生産数
・5月25日前後から上昇し7月下旬の1.6をピークに減少に転じ8月10日前後に1.0を割った。その後8月末の0.7を底に一時期上昇に転じたが、その後9月の中旬には0.6を割るまで下がっている。直近の値は緩やかな上昇傾向に見えるが、値が安定しないため推移に注視が必要である。
東京都発熱相談センターにおける相談件数(最新10月10日)
・10月10日は769件であった。
・7日間平均は645件と700件を割って下がり続けているが、陽性者の大幅減に比較すると減少のペースは鈍いと言える。
重症者推移
重症者数は62名と前日より5名の減。年代別、男女別の重症者数は下表の通りであり、50代を中心に減少している。
・若年層の重症者数は20代1名、30代1名と減少が続いている。
・40代から60代は40代が9名、30名、60代14名と重症者の中心を占めているが減少が続いている。
・重症者の中心であった70代は5名で、9月2日に43名と1月20日に記録した過去の最大値59名の70%に達したが、その後緩やかに減少している。
40代から70代の重症者の推移を下図に示す。
感染者・死亡者累計
報告日別の陽性者累積カーブを見ると8月上旬に変曲点が出来て増加は鈍って来ている。死亡者数は8月中旬から増加幅が増えたが、直近では直線に戻っている。
10月11日付で6名の死亡報告があった。お亡くなりになった方のご冥福をお祈り申し上げます。報告される死亡者数を1週間単位で比較すると、2021年の2月の上旬に1週間で140名(1日平均20名)を超えた。今回は9月18日には136名まで上がったが、直近は74名(1日平均11名)と減少している。
年代別推移
・陽性者の減少に伴い減少速度が低下しているが、特に70代以上の陽性者の減少速度が低下している。
・10月11日時点の65歳以上の感染数の移動平均は12名で、8月26日に203名と年始(265名)の80%近い値に達した後緩やかに減少している。
・10月9日の65歳以上の感染数は4名(前日比-6)、全感染者に占める割合は8.2%である。
グーグルモビリティ(最新10月6日) との相関
グーグルモビリティに10月6日までのデータが追加された(グーグルモビリティレポートについては
https://support.google.com/covid19-mobility/answer/9824897?hl=ja&ref_topic=9822927
または、2020年10月3日のノート参照)。
・9月30日の緊急事態宣言解除後の10月3日の週の前半は7月の連休前に戻っている、今後の推移に注視が必要と言える。
・グラフ上のRtは7月の連休以降一貫して低下が見られたが、直近では再増加している。
第1波、第2波、第3波、第4波との比較
2020年の5月23日以前を第1波、5月23日から営業時間短縮要請が解除される前日の9月14日までを第2波、9月15日から緊急事態宣言が全面解除される2021年3月21日までを第3波、3月22日から6月16日までを第4波、それ以降を第5波として、各期間の感染数・死亡数を年代別に表にまとめて、発症日別陽性者数、重症者数、高齢層の新規発生数(報告日ベース)の各トレンドと併記した。
第1波から第4波までは、多少の相違はあるが、概ね同様な傾向が見られた。第4波と第5波を比較すると、10月11日で第5波の期間日数が115日間となり、第4波の86日間の135%となった。この間の総感染数は第4波の308%に達したのに対して死亡者数は775名と第4波の184%に留まっている。ただし、この比率の差は死亡に繋がらない若年層の感染が増えたためであり、死亡数としては第4波の2倍近い数に達していることに注意が必要である。また70代以上については、感染数は129%死亡数は131%と共に全体に比べれば抑えられていると言えるが、陽性者数や死亡数を1日あたりで見ると第4波とほぼ同じとなっており、ワクチン推進の効果と手放しで喜べる状態とは言えない。
年代別の構成比では高齢層が減って、替わりに40代から60代が増加した。これは『ワクチン接種の推進で高齢層の感染が抑えられている』効果と言えるが、若年・中年層の感染の増加に引き連られる形で総数は増加した。また50代以下の死亡者が増えた点も含めて、高齢層への重点配分の功罪については今後の評価が待たれると言える。
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