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一人前の子どもになる

先月の投稿で、ブリューゲルの絵画『ネーデルラントの諺』を紹介したところ、
“『ルーヴルの猫』の本に出てくる絵画『アモルの葬列』を思い出しました”
と正宗さんよりコメントいただきました。ありがとうございます!
『ルーヴルの猫』、以前から気になっていた本だったので早速入手して読みました。

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実はわたし。昔からひねくれた子どもで、みんなが「善し」とする事や「お勧め」する物には興味が湧きませんでした。誰もやったことがない、人が怖がる・嫌がることを平気な顔をしてやってみせることに喜びを感じて得意顔。天邪鬼…というより単なる目立ちたがり屋だったのですね。
そして その気になれば何でも出来ると思い上がっていました💦。
いろいろなことに恵まれて悩みもなく育ったので、幸せな環境は当たり前! 周囲への感謝など微塵も感じ取れない不良娘でした。

純真な心、心温まる話を「けっ」と思っていました。これ、本当です。
真面目な子、先生の言うことを聞く優等生に「けっ」。
恋愛もの、ハッピーエンドの小説や映画は観たくもない。好みはサイコサスペンス、猟奇殺人もの…。
『星の王子さま』『モモ』なんて絶対に理解できない…と思っていました。

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大人になって、辛い病気や悲しい別れを経験して「人生、思い通りにならないこともある」と思い知らされ、当たり前に生きていけることがどれだけ幸せなのか痛感しました。そしてやっと、他人の“思い”や苦しみががわかるようになったのです。

いま。純真な気持ちに触れたり 心温まる話を見聞きすると胸が熱くなり涙を流すこともあります。
一生懸命頑張る人を見ると、心から拍手を送って応援したくなります。
ほのぼのした映画に癒されたりハッピーエンドの小説も手に取るようになりました。成長しました(笑)。

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そして今回お勧めしてもらった『ルーヴルの猫』。
とても面白く読めました。素直な気持ちで物事を受け取り、真っ直ぐに感情を表現できるようになれてよかったです。

何といっても舞台がルーヴル美術館!。そしてテーマが絵画であること。
同じ理由で楽しんでいたのが、少し前まで放映されていた『アート・オブ・クライム』、フランス🇫🇷のドラマです。

▶︎ 美術作品・芸術家たちに関する知識が 事件を解くカギとなっている
▶︎ 字幕放送のため、フランス語のリズムを楽しめる
そして何よりルーヴル美術館やオルセー美術館が舞台となっていることが一番のお気に入り。毎回、美術館の外観や展示室、そしてパリの街並みが映し出されるだけでワクワクしていました。

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『ルーヴルの猫』には、絵と会話できる少女 そして白猫が出てきます。
『アート・オブ・クライム』に出てくる女性美術史家もモネ、ゴッホ、クールベなど画家たちと会話することができるのです。
少女と白猫そして女性美術史家は、世間に馴染めず仲間たちからも少し浮いた存在なのですが、自分の純粋な心を大切にしています。両作品の共通点ですね。

私はよく絵画作品に「お久しぶり!」などと話しかけるのですが、残念ながら絵が私に語りかけてくれることはありません。まだまだ勉強不足で、私が持ち合わせている相手についての情報が少なすぎるのが原因かも知れません。

しかし、一枚の絵について理解を深めようとするとき、
作品が描かれた “背景”、展示された “場所”、作品に込めた作家の “思い”、その作品を見て影響を受けた後世の芸術家たち、論文を書いてきた研究家の “視点”
などなど、いろいろなことに思いを馳せ、想像力を膨らませ、私だけの “空間”を感じ取るようにしています。
なので、作品に近づきたい!と純粋な気持ちを持って、もっともっと理解を深めていったならば、いつか絵画作品の中に入り込んだり、作家と対話したり出来るような気がします。もちろん自分の想像の世界ですが。

今は『星の王子さま』や『モモ』を読んで楽しめそうです。
だって絵画鑑賞にハマってから、
現実の自分には限界があっても、頭の中で自由に想像を広げて楽しむことで、どこまでも空想の旅に出る事ができることを知ったから。
経験を積んで精神的に成長して、やっと一人前の子どもになれたのですね。

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そして『ルーヴルの猫』に出てくる絵画『アモルの葬列』、作者はアンリ・ルランベールと考えられています。

画像1

アモル(=キューピッド)の遺体を仲間たちがどこかに運んでいるのでしょう。悲しいはずの葬列ですが、黒い頭巾を被った仲間のアモルたちや 彼らを見守る周囲の大人たちは何だか楽しそうですね。
資料が少なくて主題や作者の意図はよくわからないのですが、その不思議な世界観から、最初画像を見たときはてっきり近代絵画だと思っていました。
制作年はなんと1580年頃⁈。エル・グレコやアルチンボルトの活躍した時代だと考えると、とても奇抜な気がします。
他にはない独特の世界観に想像を膨らませ、アモルたちの笑い声に連れられて作品の中に引き込まれてしまう気持ち、わかるような気がします。

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とても楽しませてもらいました。
正宗さん、ありがとうございました!

<終わり>

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