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〜丁寧な暮らしを描く・シャルダン〜

日めくりルーヴル 2020年5月26日(火)
  シャルダン『食前の祈り』(1740年)

本日の日めくりカレンダーは、18世紀 ロココ様式時代のフランス絵画を代表する画家・シャルダン(1699−1779年)の<風俗画>です。
美術鑑賞にあまり興味がなかった頃から、シャルダンの作品は好きでした。
何も考えず ただ見ているだけで穏やかな気持ちになれるのです。

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決して蒐集家とはいえない ルイ15世が購入し、フランス革命まで王室コレクションで保管していた一枚『食前の祈り』。
シャルダンは自らヴェルサイユ宮殿へ参内してこの作品を献上したそうです。

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まず惹かれるのは その色彩描写。
画面の大部分が茶褐色で覆われている落ち着いた色調の中で、近しい色が繰り返し使われています。
食前の祈りを唱える(女の子の格好をした)手前の幼い少年は、洋服と同じ朱色の帽子をかぶっています。母親のエプロンとドレスの色は、奥に座る女の子が頭に巻いたリボン、そしてテーブルクロスのラインと同じ色をしていますね。椅子の背に張られた縦縞模様の更紗の色合いも調和が取れています。

そして柔らかな光と室内に流れる物静かで優しい空気感が何とも言えません。
「そこに注ぐのは “空気と光“ である。シャルダンの世界では、全てが繊細で優しい」(美術評論家ドゥニ・ディドロ)。ふむふむ🤔。
親子3人の視線、画面に散りばめられた日常の道具など安定した構図はさすがです。シャルダンの描いた風俗画には、静かで控えめながら 質実で丁寧な暮らしがそこにあります。“丁寧な暮らし“って素敵ですよね。

シャルダンはイタリアにも行かずパリからも離れず、その大半を独学で完成させたというのですから驚きです。
「絵は絵具で書くのではない。心で描くのだ」(シャルダン)。

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さて、冒頭で シャルダンは “ロココ様式時代の” 代表、とサラッと書きましたが、“ロココ“ と知った時は驚きました。ロココ…。

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  左:『ブランコ』フラゴナール
  右:『シテール島の巡礼』ヴァトー
私には まだ “ロココ“ の良さが理解できないだろう!と思っているので、今は少し遠巻きに見ています。あの華やかで優雅な作品、何だかフワフワして落ち着かないのです。

そうか!美術館でロココ作品の中にある、ちょっと異質なシャルダン作品を観て、ホッと落ち着いた気持ちになれたのかも知れません。

私が好きなシャルダンの<静物画>については、長くなりそうなのでまた次の機会に投稿します。

  <終わり>

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