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画家のサインを探せ!

国立西洋美術館の常設展で画家のサインをチェックした!前回の続きです。
今回は、よほど注意して見ないとサインに気がつけなかった…という作品です。

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オノエ・ドーミエ(1808-1879年)
『果物を取り合う二人の童子』(1845-50年頃)130 × 94 cm

全体的に暗い画面のため、展示室内で対面しても その全貌が分かりにくい作品です。タイトルから「二人の幼な子が高い所にある果物籠を相手に先んじて取ろうとしている」 と読み解くわけです。
近づいて目を凝らすと、カンヴァス表面は少し絵具が割れているような … 。
あら、幼な子にしてはお尻から太もも、ふくらはぎの筋肉が隆々としている☺️。
と視線を移していくと、おっ。足元にサインを発見!

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「h. Daumier」

フランス語では「H」を発音しないから オノエ・ドーミエ(Honoré Daumier)はHで始まるのですね。
この作品の主題が、既存の物語なのか それともドーミエの創作なのかは判明していないそうですが、『籠を運ぶ二人の童子』(個人蔵)という別の作品があるんですって!(画像下・右)。
二人は仲良く果物を分け合ったのですね。何だか嬉しくなりました。

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フランス【写実主義】のフランソワ・ミレー やクールベと同世代のドーミエは風刺画や劇画で有名となりますが、1872年頃から眼の病気を患い、やがて失明し隠居生活を送ったそうです。
そういえば以前、カミーユ・コローについて調べたとき、
コローは「パリの貧困層のために寄付を、盲目でホームレス状態にあった友人の画家ドーミエのために家を購入し、画家ミレーの未亡人の子供たちの育児を支援するために援助をした」と投稿しました。
風刺画家として有名になりすぎたため、ドーミエの絵画が生前に評価されることはなかったそうですよ。

国立西洋美術館のHPによると、ドーミエの風刺画を複数所蔵しているようです。
何だか面白そう。別の機会に勉強させていただきます。

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お次はコレ。私は最初、この作品の良さが全くわからない未熟者でした。
あるとき知人が「この作品からエネルギーをもらっている。不思議なパワー溢れる作品だよ」と話してくれてから、私も不思議なパワーを受け取れるようになりました。単純な性格なのです💦。

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アンリ・ファンタン=ラトゥール(1836-1904年)
『聖アントニウスの誘惑』 63.5 x 83.5cm

砂漠で修業中のアントニウスが悪魔の誘惑に耐える、というお話。
なので、中央で座り込んでいる聖アントニウスを囲んで 彼を誘惑しようとしているのは、美女に姿を変えた悪魔たち。意識朦朧としているアントニウスはこのままでは誘惑に負けてしまいそうです。

この作品、画面中央 ピンク色のドレスを纏った女性がアントニウスに飲ませようとしている赤ワインが何とも魅力的なのです。そのため、美女たちは悪魔の化身ではなく “ワインの精” に思えてなりません。魅惑の赤い飲み物から渦巻くように現れた美女たちは、私が目を逸らしたら最後、一瞬にしてカンヴァス中央のグラスに吸い込まれていなくなってしまうような気がして…目が離せなくなるのです。
展示室で、揺らめく木々と一緒になって画面全体に渦巻く風を感じていたら、右下部分にサインを発見しました。

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Fantin

見えますか?。
同系色で書かれているため見えにくいのですが、額縁ギリギリのところに。。。

ファンタン=ラトゥールといえば、なんといっても美しい花を描いた静物画、そしてオルセー美術館で見たグループ肖像画で知られています。

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左)『花と果物、ワイン容れのある静物』(1865年)国立西洋美術館
右)『ドラクロワ礼賛』(1864年)オルセー美術館

他のファンタン=ラトゥール作品と比べてみるのも楽しいのですが、私はいつも常設展に展示されている同じ主題『聖アントニウスの誘惑』(こちらは本館)との違いを楽しんでいます。

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ダフィット・テニールス(子)(1610-1690年)『聖アントニウスの誘惑』。

廃墟の前で祈りを捧げる聖アントニウスは、足元の小悪魔にマントを引っ張られたり美女にお酒を勧められたり…空想上の奇妙な魔物たちに取り囲まれています。映画『ファンタスティック・ビースト』の世界ですね。なんとも楽しそうなこと。
大丈夫、こんなことでは聖アントニウスは誘惑に負けませんよ

同じ主題なのにこの違い…。
常設展に展示されている二作品。どちらも大好きです。

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さて、次の作品。
作者名にファンタン=ラトゥールとあるので、アンリ・ファンタン=ラトゥールと同一人物かしら?と思っていました。

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ヴィクトリア・デュブール(ファンタン=ラトゥール)(1840-1926年)
『花』 42.5 x 50.5cm

実はこの作者は、先に紹介した アンリ・ファンタン=ラトゥールの奥様。
ともに画家である二人は、ルーヴル美術館で模写をしているとき出会ったそうです。素敵✨。
ヴィクトリアは自らも制作活動を続けましたが、アンリの助手をして、先に亡くなったアンリの回顧展に尽力するなど、内助の功を発揮しました。
ご夫婦揃って花の絵を得意としたようです。
旦那さんとの “筆さばきの違い” が、私にわかるかしら?。と目を凝らしていたらサインを発見しました!

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V. Dubourg 19??

はっきり読み取れない上に、この署名について言及している資料を見つけることができませんでした。機会があればまた探してみることにします。

国立西洋美術館が所蔵するヴィクトリア・デュブールの『花』2作品は、松方幸次郎氏が購入していたのですね。所蔵経緯に “松方コレクション” とありました。

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1959年にフランスから船に乗って来てくれたのです。ありがとう。

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最後の作品はコチラ。
常設展最後の部屋にドーーーンっと展示されている 縦200 × 200.7cm、 ほぼ正方形の大きな作品です。

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ジョアン・ミロ(1893-1983年)『絵画』(1953年)。

1953年に制作された本作を美術館が取得したのは1965年!現代を生きる我々に近い年代の作品ではないですか。
現代アートに関しては まだまだ、まだまだ、そしてまだまだ勉強不足・そして理解不足のため、作品についての感想は控えさせてもらいます💦。
何年後かには雄弁に語りたいものです。

少し離れて全体を捉えようとすることが多いため、この作品の署名もなかなか見つけられませんよ。

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予期せず “Miro” の文字を見つけたら、可愛い!と声を出すこと間違いなし(笑)。

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私のiPhoneには絵画作品の「部分写真」がたくさん眠っているので、また次の機会に 別の切り口で絵画鑑賞を試みたいと思います。

<終わり>

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