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画壇の明星⑨・ロートレックとタイムリーな話題

古本屋さんで見つけた1951-1954年の月刊誌『国際文化画報』。
特集記事【画壇の明星】で毎月一人ずつピックアップされる世界の巨匠たちは、70年前の日本でどのように紹介されていたのでしょうか。

今回は1952年(昭和27年)4月号です。

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内外【画壇の明星】9回目は、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(1864年 - 1901年)。36歳で亡くなったフランスの画家です。

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新印象主義のスーラやシニャックと同世代なのですが、ロートレックはドガや日本の浮世絵に強く影響を受けたと言われています。

由緒ある伯爵家に生まれたロートレックは、二度に渡る骨折で両足の成長が止まってしまいます。上半身だけ成長を続けて152cmとなった彼は、多くの「他者」と比べるとアンバランスな身体を持った大人になったのでした。

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完璧でない自分、コンプレックス、挫折、屈折感…。そんな苦悩を抱えた彼の ‘まなざし’ は、人間の内面に踏み込んだ鋭いものとなっていったのでしょうか。ロートレックの作品は、弱さを抱えた人間の魅力を描き出しているように感じます。

下の3作品は同じ女性=彼を魅了した踊り子の一人であるジャヌ・アヴリル(下・左の写真)、1890年代にムーラン・ルージュで大変人気を博したダンサーです。
ロートレックを一躍有名にしたのが、ジャヌを描いた(下・中の作品)『ジャヌ・アヴリル』(1893年)です。写真と同じポーズだ!。作品右下の部分がコントラバスのシルエットになっているのがオシャレですね。

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そして、私が2019年9月に<コートールド美術館展>(東京都美術館)で観たのが右の作品『ジャヌ・アヴリル、ムーラン・ルージュの入り口にて』(1892年)。
展示室で「少し疲れた地味な中年女性なのかしら?」と思ったのを覚えています。まさか舞台を終えた人気ダンサーだとは⁈。 ジャヌ・アヴリルは当時20代前半だったというのですから、ちょっとビックリです。
ロートレックは、華やかなパリの街で 必死に生きる人々の弱さ、ゆがみ、醜さをありのまま描き出すことができる数少ない画家だったのかも知れません。

社会の光と影、人生の華と闇、そして人間の表と裏といった二面性を捉えたロートレックの作品の中で、私が気になったのがこちらの2枚。

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左『The streetwalker(娼婦)』
右『鏡の前の女性』
これらの作品は全く別の時期に描かれ、モデルの女性も別人なのですが、勝手に結びつけて目に焼き付けました。
とても哀しいのだけれど、なぜかやさしい気持ちになる2つの作品は、共にメトロポリタン美術館の所蔵。私が今 大注目している美術館です、タイムリー✨。
iPad上の画像ではなく、実際に並んで展示しているのを観たい!と強く願います。いつの日か…。

ロートレック … 。また機会を見つけてもう少し資料を読んでみたいです。

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さて【今月の言葉】は “十二才的文化国家”。

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さぞかし大勢の人が花見を楽しんだのでしょう。これは70年前の上野公園です。
何ともマナーの悪いこと。。。
戦後GHQ最高司令官として日本を占領していたマッカーサー元帥が帰国するときに、日本は「十二才的文化国家」と言い残したそうですよ。文化的レベルは 12歳!と言うことでしょう。お恥ずかしい(涙)。

「文化」とは、
人間の知的洗練や精神的進歩とその成果(ブリタニカ国際大百科事典)。
「マナー」とは、
人と人との関わりで 当然その場面でしかるべきとされる行儀・作法のこと(Wikipediaより)だそうです。なるほど。

さて2022年 現代。日本がいろいろな分野で成長を続け、情報社会、グローバル社会へと変化する中、日本人も「精神的進歩」を重ねて来ているでしょうか。
そしてここに来て感染症蔓延と戦争。。。70年前に比べて希薄にならざるを得ない「人と人との関わり」が何よりも大切である、そしてそのために不可欠なのが「思いやり」であると、痛感している今日この頃です。

今週末は高い気温が予想されており、いよいよ桜🌸の開花時期が迫ってきています。「思いやり」を持った花見を考えたいと思います。

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次はこの記事、“国際五輪冬期大会画信”。1952年オスローで開催された冬季オリンピックの様子が写真と共に掲載されています。

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スキー発祥の地ノルウェーで開催された 冬季オリンピックに参加したのは30カ国の694人。日本からは13人の選手が参加して、スピードスケート500mで高林清高選手が6位に入賞したそうです。おめでとうございます!

やはりオリンピックはいいですね。スポーツを通じて競い合い、語り合う選手たちは美しいです✨。ちょうど現在開催している北京パラリンピック。この舞台のために努力を惜しまず全てをかけて臨む選手の姿に、日々胸が熱くなるのです。

さて見開きページで特に興味深いのが下の二枚。
左は、審判が屋上に立って得点を出している写真。大変ですね💦。
右は、日本の吉沢選手のスキージャンプ写真。記事には “美事なフォーム” とあります。70年前はこのフォームが一番美しく、距離が延びるとされていたのでしょうね。面白いです。一緒に両手を挙げて「やーっ!」と叫びたくなりました。

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そしてそして【世界の奇跡】に掲載されていたのが “ポンペイの過去と現在”。

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うわーーーっ!ポンペイだっ!!タイムリー✨。
本日、東京国立博物館で開催中の<ポンペイ展>に行ってまいりました!!!。
楽しかったですよー。大いに心動かされたので、<ポンペイ展>については後日投稿したいと思います。

<終わり>

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