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<TORIO 展> からの・・・

職場から頑張れば歩ける距離にある東京国立近代美術館。
金曜日の仕事を終えて <TORIO展> に行ってきました。

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パリ、東京、大阪。個性的な3都市を代表する3つの美術館による共同企画、「TRIO(トリオ)」展。34のテーマに沿って、それぞれのコレクションからぴったりの作品をセレクト。「モデルたちのパワー」「空想の庭」「日常生活とアート」など、本展のためだけに特別なトリオを組みました。3つの美術館を代表する作品たちの一期一会がモダンアートの新しい魅力を開きます。

<TORIO展>公式HPより

TO」kyo(東京)、Pa「R I」s(パリ)、「O」saka(大阪)
の文字を組み合わせた<TORIO>なのですね。

左)パリ市立近代美術館
中)東京国立近代美術館
右)大阪中之島美術館

超目玉作品があったわけではないのですが、
「なるほど」「そう来ましたか」「おーーっ、これはイイですねぇ」
など、三つの作品をセットで鑑賞しながら、展示室で一人つぶやいておりました。

今回は鑑賞時間が限られていたこと、図録を購入しなかったこともあり、復習を兼ねて全体をザーーッとご紹介するだけの乱暴な投稿をお許しくださいませ。
現地に行けない方は美術展を見た気持ちになって下さい。すでに観た方はご一緒に復習のためにご覧いただけると幸いです。

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では順不同にご紹介します。

◉テーマ:自画像

左)恩地孝四郎『自画像』1915年
中)シャイム・スーティン『グロテスク』1922-25年
右)丸木俊(赤松俊子)『自画像』1947年

・中)スーティンの激しいデフォルメと大胆なタッチが威力を発揮しています。

・左)恩地孝四郎(1891-1955年)の自画像(1915年)は、サイズと構図からして東京美術学校(東京藝術大学の前身)の制作課題でしょうか・・・。ちょっと青木繁の自画像を思わせるような力強さがあったので、見入ってしまいました。
恩地孝四郎=素敵な装幀作家・・・と思っていたのですが、ちょっと気になったので、装幀以外の作品を調べてみました。

注:<TORIO展>には展示されていません
上段左から『新東京百景』『白い花』『あるヴァイオリニストの印象』『五月の風景』
下段左から『四月』『失題』『Weisse Blume』『葉っぱと雲』

あらまぁ。なんとも素敵な木版作品ではないですか。
恩地孝四郎・・・メモしておきましょう。

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◉テーマ:女性たちのまなざし

左)シュザンヌ・ヴァラドン『自画像』1918年
中)ピエール・ボナール『昼食』1932年頃
右)藤島武二『匂い』1915年

・左)ユトリロの母、シュザンヌ・ヴァラドンは、ブレない強さがいいですねぇ。

・右)藤島武二作品の題名は『匂い』。
美しい薄紫色をまとった女性の誘うような視線から、気品と自信を感じます。テーブルに少し寄りかかるポーズと画家に見せつけるような仕草の手にドキッとしました。
彼女から放たれた高貴な香りが、画家だけでなく周囲の空気や花を美しい薄紫色に染めているに違いない!その『匂い』なんだ!と勝手に興奮していました。
よく見ると、テーブルに小さな瓶がありました。
単に彼女が香の匂い楽しんでいることから付けられた題名なのかもしれません。

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◉テーマ:こどもの肖像

左)原勝四郎『少女像』1937年
中)岸田劉生『麗子五歳之像』1918年
右)藤田嗣治(レオナール・フジタ)『少女』1917年

いやいや、麗子像のインパクトは相当ですね。ずっしり重みがあります。

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◉テーマ:広告とモダンガール

左)早川良雄『第11回秋の秀彩会』1953年
中)パブロ・ガルガーリョ『モンパルナスのキキ』1928年
右)杉浦非水『銀座三越 四月十日開店』1930年

・中)ガルガーリョの作品がとても “モダン” で素敵だったので、いろいろな角度から覗き見をしました。写真では魅力を伝え切れないのが残念です。
タイトルは『モンパルナスのキキ』⁈。キスリングや藤田嗣治、そしてマン・レイのモデルとして有名なあのキキ(アリス・プラン)なのですね。

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◉テーマ:プリミティヴな線

左)パウル・クレー『黄色の中の思考』1937年
中)カレル・アペル『村の上の動物たち』1951年
右)菅井汲『風の神』1954年頃

以前は全く良さがわからなかった【プリミティヴ・アート】。今もその良さはわからないのですが、<キュビスム展>を観てから、少しだけ興味が湧いています。

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◉テーマ:差異と反復

左)アンリ・ミショー『コンポジション』1975年
中)中西夏之『紫・むらさき XIV』1982年
右)草間彌生『No. H. Red』1961年

強烈に惹かれるのはルネサンス前後の絵画であったとしても、我が家のリビングを飾るなら、やはり現代絵画を選ぶかも知れません。

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◉テーマ;色彩の生命

左)辰野登恵子『UNTITLED 95-9』1995年
中)セルジュ・ポリアコフ『抽象のコンポジション』1968年
右)マーク・ロスコ『ボトル・グリーンと深い赤』1958年

・右)マーク・ロスコの作品は本当に不思議な魅力があります。

・左)辰野登恵子さんの作品は、その独特の色彩に吸い込まれそうになります。
辰野さんのことは、<ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?>展で初めて知りました。

注:<TORIO展>には展示されていません
左)辰野登恵子『WORK 89 -P-13』1989年
右)クロード・モネ『睡蓮』1916年

国立西洋美術館の至宝 モネの『睡蓮』と並んで展示されていたのですが、力強さの点においては、辰野さんに軍配をあげました。
描かれた深い色彩を探るためにじっと観ていると、この時も吸い込まれそうでした。

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◉テーマ:戦争の影

左)ジャン・フォートリエ『森』1943年
中)北脇昇『空港』1937年
右)吉原治良『菊(口)』1942年

ひとり一人が感じ取る不安、見えない恐怖、悲しみ・・・。観ていると胸が苦しくなります。

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◉テーマ:空想の庭

左)辻永『椿と仔山羊』1916年
中)ラウル・デュフィ『家と庭』1915年
右)アンドレ・ボーシャン『果物棚』1950年

今回のチラシ・メインビジュアルにもなっているTORIOトリオ。色鮮やかな庭を観ていると、華やかで軽やかな気持ちになります。
「空想の庭」というテーマはいいですね。子どもたちにも描いてほしいです。

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と、挙げていったらキリがないのです。

テーマ設定の面白さや、横に並ぶ作品との相乗効果から思わぬパワーを発揮している作品もあれば、イヤイヤこれは単独で鑑賞させてくれた方が絶対に素敵だよ、といった作品など様々。
もっと時間に余裕を持って臨めば良かったです。

最後にご紹介するのがこちら。
◉テーマ:モデルたちのパワー

左)アンリ・マティス『椅子にもたれるオダリスク』1928年
中)萬鉄五郎『裸体美人』1912年
右)アメデオ・モディリアーニ『髪をほどいた横たわる裸婦』1917年

・中)萬鉄五郎は、カンヴァスを縦長に使ったところがすごいですね。
草原に横たわっているのだと思うのですが、モデルの女性から見下ろされているようで圧倒されるのです。

三者三様の横たわる女性、素敵です。
テーマを絞って複数の作品をセットで鑑賞するのって、楽しいですね。

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そういえば…。
この ‘横たわる裸婦’ の代表作品を並べてnoteに投稿したことがあります。

上)ティツィアーノ『ウルビーノのヴィーナス』1538年頃
下)エドゥアール・マネ『オランピア』1863年

最高傑作の並びなのですが、「作品のチョイス」という点ではありきたりで面白味が少ないかも知れません。
確か、このテーマで作品を比較していた本があったな。。。と思い巡らせていると、思い出しました!
3年ほど前、古本屋さんで見つけた一冊の本『二枚の絵』。

各界の著名人が古今東西の名画の中から二枚の絵を選び、比較しながら絵に隠された物語を読み解いてゆく。見慣れた名画に新鮮な驚きを与える、知的な美術鑑賞法。『毎日新聞日曜版』連載を元に編集・再構成したもの。

『二枚の絵』紹介文より

購入した3年前は、聞いたことがない画家や知らない作品がほとんどだったので、「もっと勉強してからしっかり読もう!」と思って本棚の隅に積み上げていました。

‘横たわる裸婦’ が並べられたページを探してみると、ありました。そしてなんとも面白いチョイス!!!

左)ルーカス・クラナッハ『横たわる泉のニンフ』1518年
右)小出楢重『横たわる裸女』1928年

これは・・・。
そろそろ私にも『二枚の絵』の面白さがわかるかも知れません。
この3年で私も少しは成長したのかしら。。。嬉しいのです。

というわけで、<TORIO展>からのバトンを『二枚の絵』に渡すことにします。
次回は『二枚の絵』から素敵な2作品をセットでご紹介したいと思います。

<終わり>

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