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勝手に愉しむ❗️<その9>  〜志は同じ …. ターナーとコンスタブル〜


〜 志は同じ … ターナーとコンスタブル 〜
The NATIONAL GALLERY, LONDON 
           <ロンドン・ナショナル・ギャラリー展> 

開催が延期されている<ロンドン・ナショナル・ギャラリー展>。
入手できる情報をもとに予習しながら一人で勝手に愉しんでいます!

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【第6章 風景画とピクチャレスク】ー Landscape and the Picturesque ー

前回はクロード・ロランの作品をご紹介しました。
第6章で私が注目するのは、
クロード・ロランの後継者である」と自任するターナーと、
クロード・ロランを「世界で最も完璧な風景画家」と絶賛するコンスタブルの2人です。

イギリスを代表する風景画家の2人は 年の差わずか1歳、同じ時代を生きました。
しかし、性格も画家人生も大いに異なっていたそうですよ。
二人の話は有名らしく ご存知の方も多いかも知れませんが、初心者の私にとっては興味深いです。

🟥ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775−1851年)
下町の理髪店の長男に生まれたターナーは、溢れるほどの才能に恵まれ若いうちに成功を収めます。
27歳の若さでロイヤル・アカデミーの正会員になり、生涯を通じてイギリスやヨーロッパ各地を広く旅行。さまざまな題材、作風すべてを吸収し咀嚼するだけの好奇心と天分が備わっていました、羨ましい!
仕事が早く、膨大な数の作品を残したそうです。
作風は年を重ねるにつれて大いに変貌を遂げ、モネら印象派の画家に大きな影響を与えました。

イギリスの風景画の歴史上、最も独創的で想像力豊かな画家と称されたターナーですが、私生活は謎めいています。母親が精神病院で亡くなるという不幸に見舞われ、その後は父親以外に心を許した人は少なかったようです。
極端な秘密主義で、内縁の女性に看取られてひっそりとこの世を去ったそうです。

🟥ジョン・コンスタブル(1776−1837年)
美しい田園地帯の裕福な製粉業者の家に生まれたコンスタブルは、画家としても私生活でも純粋一途で頑固な性格だったようです。
一歩も国外にでなかったどころか、国内すらもろくに見て回らずに身近な風景ばかりを描き続けたため「ただの田舎の風景画」と 評価が得られませんでした。
愛妻との間に7人の子供に恵まれましたが、絵は売れなかったそうです。また、1つの作品に数ヶ月をかけることもあったようです。
そのため遅咲きで、ジェリコーやドラクロワらが評価したことによりイギリスではなくフランスで有名になったのがきっかけだそうです。ロイヤル・アカデミーの正会員になれたのは52歳のときでした。

このように正反対とも思われる二人ですが、芸術後進国とみなされていた母国イギリスへの熱い思いは同じだったようです。
ターナーは「科学におけるように、芸術においてもイギリス人が外国人を凌ぐこと」が終生の希望だったといい、コンスタブルもイギリスの風景も芸術に値することを確信していたようです。

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さて、二人の出展作品です。
◉出展番号「49」ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー『ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス』(1829年)

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風景画の中に神話の主題を描き込む試み、そして水平線の近くから黄金色の光が船を照らし出すという構図は、クロード・ロランに由来しているそうです。
この作品は1828年8月から翌年2月までの二度目のローマ訪問中に構想されたもの … なるほど🤔
ゲーテの色彩論も研究していたというターナーは、光と色彩の効果や空気感をどう描いていくかを追求していたようです。光の効果…。モネをはじめとする印象派の画家たちに直接影響を与えた訳ですね。

低い水平線から放たれる光は「まぶしい✨」というより、光と色と形が一体となって溶け込んでいるような気がします。展示会場でターナーの描いた光を浴びてみたいものです。

◉出展番号「48」ジョン・コンスタブル『コルオートン・ホールのレノルズ記念碑』(1833−36年)

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コンスタブルの描いた面白い一枚です。
政治家ジョージ・ボーモントの邸宅(コルオートン・ホール)の庭を描いた作品。正面奥には、ボーモントが崇拝していた画家でロイヤル・アカデミー初代会長 ジョシュア・レノルズ(第3章に作品が展示されています)の記念碑があります。その手前の両脇にある胸像は、ルネサンスの巨匠ミケランジェロ(左)とラファエロ(右)❗️
ボーモントはロンドン・ナショナル・ギャラリー設立の立役者というのですから今回の展示にふさわしいですね。
コンスタブルは、ボーモント、レノルズ、ミケランジェロ、ラファエロを描いたことになります。

季節は秋、うす暗い林の中で一頭の鹿がこちらを振り返っています。展示会場でカンヴァスに目を凝らしていると、ドンドン画面奥に引き込まれていってしまうのでは…。楽しみです。

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第6章には他にもプッサン、ロイスダール、ウィルソン、ゲインズバラなどの風景画が展示されているようです。<その8>から2回にわたってご紹介した風景画の “理想郷”、” 海景“。その他の “廃墟”、“家畜” も見てみたいですね。

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            <その9・終わり>

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