見出し画像

コローが描く世界

Agenda 2020 <2月・②>

『Paysage』(風景) 1872年頃
今週は19世紀フランスの画家、ジャン=バティスト・カミーユ・コロー(1796−1875)の作品。

画像1

美しい情景を描いたコロー晩年の一枚。
モヤが大地や木々に溶け込みながら消えていくと そこに光が少しずつ広がっていきます。そんな瞬間の森に立ち、色の変化、音の変化、温度の変化、匂いの変化を全身で感じることができるような作品です。
そしてコローの言葉がこちら↓

Pour bien entrer dans mes paysages, il faut avoir au moins la patience de laisser le brouillard se lever; on n’y pénètre que peu à peu, et, quand on y est, on doit s’y plaire.

この言葉は単なる制作秘話でなく、コローという作家の人生をあらわしているように思えます。

パリのサンジェルマン・デ・プレの裕福な家に生まれたコロー。
晩年になるまで作品が売れず不遇の時代を送っていた頃「今日もまたあなたは 永遠の下描きをするために出かけるのね…」と言われるほど同じ場所で写生に没頭したと言います。
50代半ばにブレイクしたのが “銀灰色” のモヤに包まれた詩的な風景画。
最初に絵を教えてもらった自身の師匠に ‘アトリエの外で描くように’ と指導されてから、移り変わりゆく太陽の光や影を詩情豊かに描き出したコロー。その手法が後の印象派の画家たちに大きな影響を与えたと言われています。
大器晩成したコローが 弟子のピサロ、ブータン、モリゾたちに「忍耐が必要であり、その状況を楽しむことも重要だ」と説く今週の言葉には、重みがあります。

また、晩年は自身が築いた財産を周囲の友人たちや社会へ分かち合う慈善家でもあったとか。
パリの貧困層のために寄付を、盲目でホームレス状態にあった友人の画家ドーミエのために家を購入し、画家ミレーの未亡人の子供たちの育児を支援するために援助をしたそうです。
ふむふむ🤔
コローの描く女性や子供たちが愛おしいのは、彼が優しさに溢れていたからなのですね。
(↓↓↓ ルーヴル美術館に並ぶ コローの描いた人物画。少し光って見えにくいことをお許しください)

画像2

画家の言葉を通して 作品やエピソードを辿っていくと、画家の人生に少しだけ近づけるような気がします。この手帳を通して一年間、少しずつ勉強できるのが嬉しいです。

実はこの手帳には、別のコローの風景画が紹介されています(7月)。
コローの代名詞とも言える “銀灰色” については、奥が深いのでその時に投稿したいと思います。
・       <終わり>

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?