白い世界
最近仕事でPC画面をずーーーっと見ているため、眼が辛い・・・視力が少し落ちたのかしら 遠くのモノに焦点が合わなくなり、頭痛・肩こりも頻繁に起きます。眼精疲労回復のドリンク剤、頭痛薬と湿布は常にバッグとロッカーに常備しています。
仕事以外の時間にiPadの画面をみるのが辛くて、noteもあまり開けませんでした。
先月の終わりには軽いギックリ腰に襲われ、二日間寝込んで・・・。私、大丈夫かしら(笑)。
加えて最近は真夏の太陽が眩しくて・・・。
昼休みに外出したら、目の前で突然フラッシュを焚かれたように真っ白。ビルも車も街路樹も信号も見えません。目を閉じても眩しくて気が遠くなりそうでした。
めまい?貧血?。我に帰り、慌てて手持ちのサングラスをかけるも、動けずにしばらくその場に立ちすくんでおりました。
ふと。
私が見たこの白い世界を絵に描くとどうなるのかなぁ、と考えました。閃光が走り突き刺さるような尖った白、そして視界から全てが失われた虚無感。
どんな絵になるのでしょうか。
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白いカンヴァスに真っ白の絵の具を塗って終わり?
いえいえ、白を基調にした作品ってたくさんあったはずです。
白い絵を描く画家と言ってまず思い出すのはユトリロでしょうか。
美しい母=画家のシュザンヌ・ヴァラドンに愛されることを望んだユトリロは、学生時代からアルコール依存症だったと言います。“白の時代” と呼ばれる頃のユトリロは、色鮮やかな世界が見えていなかったのかも知れません。心が閉ざされた悲しみの白・・・少し胸が痛みます。
私が見た白い景色とは全く異なる世界です。
白い絵、白い絵・・・。これが私の先週のテーマでした。
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日曜日の夕方、少しだけ時間と気持ちに余裕ができたので、白い絵を鑑賞したい!と本棚を眺めていました。
手に取ったのは『図解 はじめての絵画 (小学館の図鑑NEOアート) 大型本』。
昨年発売されたとき、本屋さんの店頭で何度も手に取り、
「子どもたちの探究心と創造力を育む絵画の鑑賞図鑑」「世界中の名画を約360点収録」「子どもが興味をもつテーマで鑑賞」というキャッチコピーを見てワクワクしていました。
購入の決め手は、掲載されている名画の画像がとにかく美しかったことです。
おっ!
“白いものをどう描くのか”…そんなページがありました!
塗り残し、マスキング、スクラッチ(削る)、拭き取り・洗い出し、不透明の白い絵の具・・・ふむふむ、白を描く手法はいろいろあるのですね。
図録には、眩しい白、日陰の白、ずっしり重たい白、冷たい白、温かみのある白。
いろいろな白い世界が紹介されています。
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画面左上から差す光を受けて雪が輝いています。眩しいばかりの反射光は、私が白い世界で見た「光」に近いものがあります。
拡大された画面(右)を見ると、グレー、グリーンにブルー…、いろいろな色の濃さを細かく変化させて光と影を表現しているのですね。
時の移ろいや光の変化をカンヴァスに写しとる天才=モネは、白い世界を描いてもピカイチ✨なのです。
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これは面白い!。白い紙の「形」をそのまま利用した作品です。
デコボコした女性の被り物や着物の模様は、ふんわりと立体感があります。まあるいフォルムから温かみが感じられます。降り積もった冷たい雪とは全く違う白をしていますね。
ホントに面白い!
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少し重みのある厚手のカーテン、軽やかなドレス、手に持つ可憐な白い花。
20代のホイッスラーは白色の明暗、濃淡を対比させることで “白のシンフォニー” を作り出しました。
拡大された画面(右)を見ていると、素材によって描き方を変えていることもよくわかります。いろいろな色調・技法が交じりあって美を演出しているのですね。
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いまだに信じられないのですが、白い雪の部分には何も塗られていのですよ!。
円山応挙は、素地が持つ白の明るさと、松を描いた墨の暗さとの対比によって、描かないことで「雪」を表現しました。
こちらに迫り出す生命力溢れる松の上に、ふんわりと乗っかった雪は繊細で掴めそうなほど柔らかく、そして触れると冷たいのです。
静かな展示室に置かれたこの屏風を前にして五感が震えたことを思い出しました。そして鑑賞後・・・心がいつも以上に穏やかになっているのです。
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もし、私がまたあの白い世界に遭遇したならば、円山応挙先生の力を借りて、柔らかい白の景色に描き直してもらいましょう。
目の前が真っ白になり意識が遠のくような中でも、
静寂の音を聴き、息を大きく吸い込んで血液の流れを感じ、手を伸ばして何かを掴みたくなるような、五感の全てで生きていることを実感できる、そんな白い世界に変えてみせるぞ!と誓うのでした。
<終わり>
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