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アリシア・キーズと歌い続ける。

さて記事を書こうとパソコンの前に座り、イアフォンをはめてSpotifyを開いた。

日本語の文章を書くときは洋楽、英語の文章を書く時は邦楽を聴く。インストラメンタルも最強。

今日たまたま聴いたのは今月発表されたアリシア・キーズの新曲だった。タイトルは「Underdog」。

何度もリピートで聴いているうちにもともと書こうと思っていた内容は吹っ飛び、アリシアについて書きたくなった。

考えてみると私はかなり彼女の音楽に救われてきた。20代の頃、涙を流しながらリピートし続けたのに、最近はあまり聴いていない。

イアフォンを通して彼女の歌声を聴きながら、10数年前に置き去りにしてきたかもしれない自分のことを思い出す。

そこにはいつも彼女の歌声があった。

* * *

アリシア・キーズ。2001年に20歳でデビューしていきなり「Fallin」を大ヒットさせたアメリカ出身のR&Bシンガー。

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デビュー曲が爆発的にヒットするとその後が心配になるものだが、彼女は38歳の現在まで安定して大ヒットを飛ばし続けている。(安定してできることじゃない)

歌、ピアノ、作詞作曲をひとりでこなすキーズは、デビュー当時から「伝えたいこと」を強く持っていた。アメリカの芸能界に染まらず(染まらずに済む才能を持ち合わせていたからだが)メジャーになっても自分の音楽を作り続けている。

2016年の新アルバム「Here」のジャケット撮影の際に、彼女は「世の中に求められる女性像」ということに強い違和感を覚え、ノーメイクで撮影を行った。

「その瞬間の自由と言ったらなかった」と言う。

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それ以降もステージ、雑誌の表紙、アルバムのカバーはノーメイクで通している。メイクが嫌い、ということではなく。メイクをする選択肢を大切にしていると言う。

彼女は才能にも美貌にも恵まれている。自分が実践しなくては人は信じてくれないだろう、と思ったのかもしれない。そこで小さくなるのではなく、言うことは言う。言うだけじゃなく、やる。

20年経っても歌い続けていること、人々が彼女の歌を待ち望み、泣きながら、笑いながら大合唱するところに、ひとつの答えがある。

彼女の曲に合わせて歌い踊りまわったワンルームのアパートを思い出す。あの時は本当に「自分はひとりぼっち」と思っていた。

4階のエレベーターなしの綿飴のようにピンクな建物だった。

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私の中でのアリシアのトップ3を選んでみました。

彼女が2013に「VH1ストーリーテラーズ」というライブで、自ら行った曲紹介とともに。

No One (2007)

大、大、大ヒット曲。辛い時に聴きすぎて元気を取り戻したら聴けなくなったけれど、今聴くと頑張りすぎていた自分を思い出し応援したくなる。

アリシアはこの曲をこう紹介している。

「スタジオでアルバムを全て録り終えて、シングル曲も決まっていたし、スタッフと「もう帰ろうか」なんて話していた時に、ちょっと遊びでスタジオに入って歌い始めたのがこの曲。どこから来たのか、当時も今もわからなくて、曲が降りてくるなんて滅多にないことなんだけど、途中からアコースティックギターが入ってきて、ものすごい開放感を味わったのを覚えている」

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Girl on Fire (2012)

ランニングやジム中にリピートする曲。タイトルの「燃える女」の気持ちになり、自分の奥の方に(多分)眠っている情熱を信じてみたくなる。少なくても曲を聴いている4分30秒の間は。(ラップパートはニッキー・ミナージ)

アリシアの紹介:

「スタジオにいて「燃える女」ってどういう音なんだろう?と考えた。こういう音だった(弾き始める)。これはCP70と言って、すごく古いキーボード(エレクトリックグランドピアノ)です。曲の中でも使っています。」

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Try Sleeping with a Broken Heart(2009)

壊れた心では眠れない、というこの曲。「あなたがいなくなったベッドでも眠れるようになりたい」と失恋した女性の心を歌っているのだが、失恋じゃなくても眠れない夜、ありますよね。睡眠が全てです。

以下、アリシアの紹介。

「次は大好きな一曲で、この曲のおかげでこのキーボードと出会いました。ちょっと飛行機みたいな音でしょ?(弾き始める)」

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アリシアは呼吸をするように弾き、歌い、伝える人なんだと、すっかり彼女を卒業した気でいた自分は今日、新曲「Underdog」を聴いて思った。

スポーツでいうと弱いほうのチーム、誰もが負けると思っているチームをUnderdogと呼ぶ。

「人生には、できそうにないことに挑戦しなきゃいけない時がある。Underdogは周りに「できない」と言われても前へ進む人」とアリシア。

成功する確率は低くて、周りに「どうせ無理」と思われていて、誰も応援してくれていない時に、それでも前へ進む人。

それが、underdogです。


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