人生のピーク

何気ないひと言だったのかもしれない。

こんなにも素晴らしい世界は他にないのだから今を思い切り生きなさい

OGさんがぽろりとこぼされた激励の言葉には説得力があった。
キラキラと笑いながら語る先輩のその瞬間だけに何か特別なリアルが宿っていて、他の言葉とは温度の違う重みがある様に感じたからだ。

この言葉の意味について時間をかけて何周と考えさせられる事となる

初めに
当時下級生だった私は［素晴らしい］という言葉の表面上の意味しか理解出来なかったが、
それで充分であった。

そうか。やっぱり宝塚は最高なんだ。
幼い頃からの夢を仕事に出来て、
尊敬する仲間もいる。
卒業してから新たな夢を見つけるのって大変な事なんだな、戻れない一瞬一瞬を頑張ろう！

そして宝塚で過ごす「今」に夢中になった。
ひたすらに、脇目も振らずに、14年だ。
思い切り生きた結果、
ただ楽しいとか、やりがいがあるとか、
そんな簡単な［素晴らしい］ではなく、
もっと自分の芯となる部分を知る事が出来たのではないかと思う。

自分を知るということ
努力すればどうにかなる事と、
努力してもどうにもならない事がある事を知った。

どんな役を演じるかなどは夢に値しないということ
そんな夢叶えたところで幸せではないと知った。夢はどんな生き方をしたいかなのだ。

前へ進むタイミングを見極めるということ
終わりのない芸の道で全てをやり切る事などないのであろう、
辞めるのではなく進むのだ
この先どんな新しい事を始めようと折れない自分を知っている。

宝塚が素晴らしい世界だから思い切り生きるべきなのではなく、
思い切り生きたから、私にとって宝塚が素晴らしい世界になったのだ。
思い切り生きたから、次へ進むべきタイミングがやってきた。


2周目に
あの時感じた重みを自分に置き換えては不安を感じていた。

もしかしたら、今宝塚の舞台に立っている自分が人生のピークで、卒業した先の人生は下り坂なのではないだろうか
こんなに好きで入った宝塚だ
第二の人生、宝塚を越えるやりたい事など見つけられる訳がないのでは

そんなことを考えたらいつか来るであろう卒業が怖くてたまらなく、未来から逃げるかの様に今と向かい合った時期もあったが、
自分で想像した仮定の話に怯えること程バカバカしい事はない。そして、
素晴らしいという意味について、もう少し幅のある考え方を自分の中で持てた時、不安は怖くなくなった。見えない未来を不安に感じるのではなく、どうにでも変わる未来にわくわくする。不安を楽しむのだ。

そもそも人生のピークって何だろう

そんなものがもしあるとするならば、
人から判断されるものではなく、
ふと自分で感じるだけのものであるはずだ。
自分に挑戦し続ける限り、ピークは更新し続ける事が出来るのではないだろうか。
おばあちゃんになった時、今日が1番最高な私と言いながら硬いステーキにかぶりつく自分でいたい
始める前から自分の可能性に限界を決めてどうする
今の自分に満足するな、挑戦をやめるな、

宝塚で重ねた時間に、
そんな風に考える自分へと育てられた今。
私にとっての幸せの意味、素晴らしいの意味は「挑戦し続けること」と結びつく。

拍手が頂けたから、
ファンの方と出会えたから、
大好きな宝塚の舞台に立てていたから私は幸せだったのではなく、

挑戦し続けたから拍手を頂ける様になった
挑戦し続けたから応援して下さる方に出会えた
挑戦し続けないと存在出来ない宝塚という舞台に課題を与え続けてもらえていたから幸せだったという事を忘れない

3周目に
こんなにも素晴らしい世界は他にもきっとあるという事。

でも今もし私が宝塚の後輩達に何か声をかけるとしたらやはり、
同じ事を言うのではないかと思う。

宝塚を卒業してからの人生は最高に楽しいよ!
宝塚で幸せを見つけられなくても、次の仕事で見つけられるよ！とは言わないのだろう。

日々色んな葛藤と闘いながら舞台に立つ彼女達が、思い切り宝塚で生き尽くして
自分にとっての幸せの意味
自分の生き方を
自分の力で見つけた時、
きっと見える世界が変わると思うからだ。

今私はNYにいて
この先どうなるかも分からない
将来になんの保証もない時間を過ごしているが、最高に楽しい。
泣いても、笑っても、不安でも、
出来ない事がある事が楽しい。嬉しい。

何を始めるにも遅すぎる事なんてない。
第二の人生も思い切り生きられる自分である為に、私は私のペースで頑張るだけだ

うまく出来ない、不安を感じるのは、
もっと上にいこうという気持ちがあるという事。
今自分に出来る限りのベストを尽くし挑戦し続ける事が大切なのだ。

そうすれば、この場所が素晴らしいものになる事を知っている。
自分の力で素晴らしい場所へと変えるのだ。
場所が素晴らしいのではなく、
挑戦するあなたが素晴らしいのだ。


こんなにも素晴らしい世界は他にないのだから、今を思い切り生きなさい

私が見つけたこの言葉の意味は

挑戦を楽しみ、今を思い切り生きるあなたはこんなにも美しく、どんな道を歩んだとしても未来を素晴らしいものへ変える力を持っている

であった。