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自由を生む場所

初めてのNYは
なんて事はなかった
僕だけの女神
もうとっくに出会ってたから

自由って何だろう

英語には
libertyとfreedom
2つの自由がある  

libertyは奴隷解放
無くてもいい束縛からの解放を意味し

freedomは自分で出来るという事
反対語に値するkingdomは王様が全ての決定権を持つという事に対し、
freedomは自分達で決めるという事を意味する、法律と結びつく考え方なのだそうだ。

そもそも日本人にとって[自由]は
勝手。わがまま。という意味の言葉で、
あまりよくないものとして扱われていた。

自由は求めるべきもの。といった様な
いい意味として使う[自由]は
明治時代からと歴史も浅く、海外からの借り物の言葉であるとされていて、そう言われると
いまだに自由についてうまく説明出来ない事も、何となく自由に不安を感じる事も腑に落ちる。

ここ最近で最も自由を感じた瞬間はいつだったか思い出してみる事とする

NYへ来た時でも
宝塚を卒業した時でもない

2021年、星組公演[ロミオ&ジュリエット]
コロナウイルスの影響から緊急事態宣言を受け明日からの休演が決まったあの日。
「世界の王」のナンバー中ではないだろうか。

朝から夜まで全ての時間を
生きてる今感じ愛し合いたい
大人の力に負けたりしない
俺たちの王は俺たちなんだ

明日から公演が出来ない事に
今自分が悲しんでいるのか腹をたてているのかもよく分からない。
少しでも気を緩めたらばらばらになってしまいそうな自分に、さも気がついていない様なふりをして、早くも開演前から仮面をつける。
そんな気分であった。

今にも壊れそうな状態になった事で
今までで1番ヴェローナの子供達の気持ちに近づけた様にも思う。
中央で歌うロミオの眼差しの強さに
今。ロミオが見ているものだけが信じられる
心からそう感じたものだ。
力が強いわけでも
学級委員キャラなわけでも
特別お金持ちなわけでもない彼の元に
ヒビの入ったガラスの様な子供達が集まる理由はそこにあった。
ロミオの瞳の輝きだけが希望であった。
ロミオといる時だけは自由を感じる事が出来た。

歌いながら激しく踊るこのナンバーは日々自分の限界との挑戦で、苦しくて、
身体も喉もちぎれそうなのだが、
この日はその感覚さえもが心地よく、
このまま倒れて動けなくなるまで、この場所で仲間と共に歌っていたい、踊っていたいと
本物の感覚を楽しんだ。

そして
そこまで気持ちを底上げしてくれたのは
お客様の拍手であった事を忘れない。
いつも以上に緊張感のある空間を作り、
ピンと張った糸電話の様に気持ちを伝えやすくしてくれたのもお客様であった。
どんな言葉よりも説得力のあるあたたかい心を
拍手から受け取り、
どれほど勇気づけられた事か。
全ての不安を取り除いてくれた。
言葉など必要なく心で繋がっている事を確信させてくれた。
必ずこの場所で再会する事を約束してくれた。

出来ない事などひとつもない
どこまでも飛んでゆける
世界の王にだってなれる
自由だ。
そう思わせてくれる女神は
ロミオであり、お客様であり、劇場であった。

自由を感じられるのは
抑制する全てのものがなくなった時ではないという事を知った。
困難な状況に身を置いたとしても
支え、助け合う仲間がいれば
何だって叶えられる様な自由を
心が感じるという事を知った。
自由の意味のひとつに
[仲間がいる]という事が加わった。

今、
相次ぐ公演中止の発表に言葉が見つからない。

改めて芸術というものは、本当の危機において奇跡の様な力を持つけれど、
基本的には無くても困らない物とされていて、吹けば飛ぶ様な儚いものなのだと感じている。

公演する事が出来なかったあの時
いつまた歌えるかも分からない譜面と向き合いながら、
こんなにも美しいメロディーなのに、
今は白い紙を汚す点と線、ただのシミでしかない事、演者がいなければ音楽にならない事を申し訳なく思っていた。

心に影を落とす点や、
気持ちを曇らせる線の様な出来事も
感じられる私でいなければ、ただの辛い思い出になってしまう。
必要なものとして視線を投げかけ、
繋ぎ合わせ、立ち上がらせた時、
謳歌すべき人生になるのだという事を感じた。

立ち止まる事も、休む事も人生には必要で、
それがなければ音楽にはならないだろう。

この休止符でしっかり息を吸う事で、また次のメロディーも歌うことが出来るはずだ。

劇場で再会出来る日は必ず来る
会えない時間に育てた想いを持ち寄って、
一緒に自由を歌うんだ
心に自由を生む場所、劇場がある限り
私たちの絆は永遠なのだから

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