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アウトバウンド商談で目標達成させるための7箇条

こんにちは。すべての経済活動をデジタル化したい中村です。LayerXではセールス部のマネージャーをしています。

今回は、バクラクのセールス部で取り組んだアウトバウンド商談の受注増加に向けた取り組みを紹介します。

バクラクにおけるアウトバウンド立ち上げの背景

LayerXが提供するバクラクでは、2024年の初頭までは法対応の駆け込み需要に支えられてインバウンド商談が中心でした。しかし、現在はその需要が落ち着き、アウトバウンドによる受注金額の増加が必要となっています。そのため、インバウンドとは異なる営業手法や顧客へのアプローチが必要になりました。

アウトバウンド商談はなぜ難易度が高いのか?

アウトバウンド商談は難易度が高い理由として、顧客の関心が薄い段階でアプローチする必要がある点が挙げられます。インバウンドに比べ、顧客のニーズが顕在化していないため、興味を引き出すためのスキルが求められます。また、アプローチを拒否される可能性も高く、商談までつなげるためには適切なタイミングや顧客理解が不可欠です。商談化〜受注までのハードルが高いため、長期的なプロセス管理と的確な施策が重要となります。

IS~FSの連携を前提としたアウトバウンドの事例は少ない

この記事の特徴は、THE MODELのIS~FSの連携を前提にしている点です。

自分自身がアウトバウンドのプロジェクトをスタートさせる際に色々な情報を検索したのですが、IS~FSを跨った取り組みの事例を探しきれませんでした。アウトバウンド(やBDR)に関して調べていると、体感で8割がISのBDR体制構築に関するもの、2割程度はFSに関してですがエンプラ商談に特化した商談のコツやノウハウでした。

僕はSMB~MMB領域でのアウトバウンドを担っていますので、商談数も多いことから、初めからIS~FSの連携が勝負になると思っていました。ただ外部からはミートする情報が得られなかった。であれば自分たちで試行錯誤して成果を上げよう、ということで様々な取り組みを行いまして、9月末時点で一定の成果を出すことができました。

僕と同じようなプロジェクトを抱えている人もいると思うので、自分自身の経験を言語化することで、SaaSでアウトバウンドに取り組んでいる方の参考になれば幸いです。

はじめに:記事で使用する用語の補足

アウトバウンド商談・・・企業が自発的に見込み顧客にアプローチし、ニーズを喚起して商談を進める営業手法を指します。インバウンド商談とは異なり、顧客が自発的に興味を示すのではなく、こちらから接触を図るため、潜在的な課題やニーズを引き出す力が求められます。
IS・・・インサイドセールス。当社では有効商談の獲得が目標。
FS・・・フィールドセールス。当社では受注MRRの獲得が目標。

それでは、アウトバウンド商談で成果を上げるための重要なポイントを7つに分けて解説します。各項目にチェックリストを設けました。ぜひご自身の施策と照らし合わせながら参考にしてみてください。

IS~FSの連携を前提として執筆しました

1. ISとFSで連携してチームをつくる

アウトバウンド営業で成果を出すためには、ISとFSが少人数でもしっかりと連携したチームを作ることが鍵となります。ISが初期のリードジェネレーションや商談獲得を担当し、FSが商談を進めて受注につなげるという流れですが、それぞれの役割を最大限に活かすには、連携が欠かせません。

また、KPIは率ではなく数にフォーカスすることが重要です。例えば、商談の成約率というような遅行指標よりも「何件の商談を獲得したか」「商談のうち何件の受注見込みをつくれたか」などの手前の指標を設定することで、具体的かつコントローラブルな目標管理ができます。IS-FSで一蓮托生になることができるKPIにすることで、チーム全体がより具体的な目標に向かって動けるようになります。

さらに、ISとFSの間で共通言語を持つことも非常に重要です。よく使われる「リード」「課題」「失注」「案件化」などの言葉の定義を明確にし、誤解やミスコミュニケーションが発生しないように注意します。これにより、商談の各フェーズでスムーズに情報を共有でき、チーム全体で効率的に動くことが可能となります。

チェックリスト

IS-FSの連携チームを作る(少人数でOK)
KPI(先行指標)の目線合わせを徹底する
言葉の定義を合わせる(共通言語を設定)

2. IS-FSで商談獲得基準を明確にする

商談を獲得するための基準を明確にすることは、アウトバウンド営業では非常に重要です。商談獲得基準は7〜10項目に絞ることが理想的です。基準が多すぎるとISに過度な負担がかかり、商談獲得までのプロセスが煩雑になります。少ないほど効率的で、ISが無理なく実行できるものを設定しましょう。

商談の基準はあらかじめ設定しておくことが重要ですが、日々の商談結果を基に基準をブラッシュアップしていくことも不可欠です。顧客のニーズや市場の状況に応じて基準を柔軟に変えることで、商談獲得の質を高めることが可能です。

社内資料。獲得基準の項目ごとにOKパターン・NGパターンを明記します。変更履歴を記載しておくと後から振り返られるので便利です。

チェックリスト

商談獲得基準を5〜10項目に設定(項目数は商材による)
日々の商談の結果に応じて基準をブラッシュアップ

3. 商談の結果共有を"毎日"実施する

アウトバウンド営業で成果を上げるには、商談結果をISとFSで共有し、フィードバックを行うことが必要です。これを毎日行います。

短時間の朝会を設けて商談の進捗や課題を共有することが効果的です。毎朝30分程度の朝会を通じて、前日の商談結果やそのフィードバックを確認し、その日のアプローチに反映させます。この朝会で商談獲得の可否を擦り合わせることで、ISとFSが商談進行の方向性を統一し、質の高い商談を進めることが可能となります。

主に以下のようなアジェンダで実施しています。

  1. 商談の結果共有(着地したフェーズ)

  2. お客様の問題及び課題は何か

  3. 商談獲得基準に合致していたか

  4. その商談が次のフェーズに進むためには何が必要か

特に4つ目が大切で本質的な部分です。目的を次のフェーズに進めること、としたときに、あらゆる手段が考えられます。僕たちの場合は、ナーチャリングのためのセミナーを企画したり、フェーズ滞留している商談にISからフォローコールを行う(セールスのサポート)などの取り組みが、自然発生的に行われていました。

チェックリスト

朝会を設ける(30分で良い)
商談獲得の可否について擦り合わせる
次のフェーズに進むためには何が必要か、を全員で考える

4. 商談の構成を変える

ここからはFS側の比重が大きくなります。

アウトバウンド商談では、初回商談を一度に詰め込みすぎないことがポイントです。初回商談であれこれと説明しても、アウトバウンドのお客様からすると情報過多になってしまいます。初回商談は2回に分けてデモは2回目の商談に回してもOKです。

商談を2回に分けて行うことで、買い手目線・売り手目線の両者にメリットがあります。

買い手目線
「どのようなサービスなのかをまず知りたい」という要望に応えてもらえるので、そのベンダー側との効率的なコミュニケーションが可能です。(ストレートに言うと、ベンダーとの余計に関わる時間を省くことができる。)

売り手目線
初回はヒアリングに集中し、次回に提案やデモンストレーションを行うことが可能です。特にアウトバウンドの商談においては潜在的な課題が中心のため、当てずっぽうにデモをしても買い手の求める情報からズレることもあります。ヒアリングに時間をかけて適切な提案をする方が次のフェーズに上がりやすくなります。

一点注意点として、ISの商談獲得の段階でデモをフックにするのではなくディスカッションや課題の整理をフックにしましょう。この点はIS~FSの情報連携が必要になります。なお当社においてはお客様から商談の進め方やお打ち合わせアジェンダに関して違和感を伝えられたことはありません。

また、初回商談でのデモの実施可否は0か100かの話ではありません。顧客からデモを求められた場合には、状況に応じて柔軟に対応し、デモを行うことも検討すべきです。重要なのは、顧客のニーズに合わせた商談を行うことです。

なお、アウトバウンド商談を担当するFS自身が提案のポイントを掴んできたら、初回商談を1回にまとめてヒアリング〜デモまで実施しても良いと思います。当社でも実際に成果を出せて慣れてきたメンバーについては1回にまとめて良質な提案を行えています。

この辺りは人による濃淡がある部分ですが、まだアウトバウンド商談の経験が少ない人は、2回に分けてみることをお勧めします。

慣れてくれば1回にまとめてしまって問題ありません

チェックリスト

商談の構成を見直す(ヒアリング〜デモを1回の商談に詰めすぎない)
ISの商談獲得時のフックを調整する

5. 商談資料をインバウンドと分ける

顧客属性ごとに営業資料を作成することは、営業の王道ですが、インバウンドとアウトバウンドの資料を分けることまで徹底できているでしょうか。

アウトバウンド商談では、顧客と一緒に課題を合意できるワークショップ的な形式のスライドを準備することが有効です。インバウンド商談では、顧客がある程度の情報を持っているため、サービスレベルの詳細な説明が必要ですが、アウトバウンドではお客様のニーズを喚起するため、まずは潜在的な課題にフォーカスした資料が必要です。

顧客と対話しながら解決策を模索する「ワークショップ形式」のスライドを使用することで、商談に対する顧客の理解が深まり、共感を得ることができます。

「問題」と「課題」は異なりますので、お客様とご一緒に整理をする形で進めます

チェックリスト

営業資料をインバウンドと別にする(ワークショップ的な形式)

6. フェーズ2の課題の合意に最も力を入れる

商談の成功は、顧客の課題を正確に捉え、その解決策を提示することが必要です。特に、フェーズ2では、顧客と課題を合意し、それをもとに商談を進めることが最も重要です。

また、フェーズ2での合意形成は、ISがセールスサポートを行う際の追客の参考情報にもなるため、商談進捗だけでなく顧客との信頼関係を深めるためにも重要です。顧客が「自分の課題を正しく理解されている」と感じると、ISやFSからのフォローアップにも応じやすくなり、最終的な契約に繋がる可能性が高まります。

下記の項目7にも繋がるのですが、当社では課題の合意が完了した商談の数をKPIとしてモニタリングをしています。加えて商談ごとに課題が何なのか?は前述の朝会で発表もしますので、より強度を上げたヒアリングを行っています。

チェックリスト

商談では課題を合意することに注力する
課題は何だったかを前述の朝会で確認する

7. 先行指標を決めてモニタリングをする

アウトバウンド営業では、進捗を追跡するために先行指標(KPI)を設定し、継続的にモニタリングを行うことが成功の秘訣です。

すでに「KPIはできるだけ率ではなく数で」と前述しましたが、先行指標を達成するために必要なプロセスとして率を見るケースはあると思います。

例えば、有効な商談の数を先行指標とするならば、そのためのプロセスとして「フェーズ1の商談獲得率」や「フェーズ2の課題合意率」などをベンチマークしても良いかもしれません。

遅行指標ではなく先行指標を持つこと、更にそのステップを分解して可視化することを徹底します。

もし先行指標が未達であれば、その原因を迅速に分析し、改善策を講じることが必要です。分解したステップも含めてモニタリングが出来ないと先行指標すら形骸化した目標となってしまいます。

チェックリスト

先行指標を設定したか(できれば数で)
SFAなどで適切にモニタリングできるか


このように、バクラクにおけるアウトバウンド商談では、各フェーズでの連携とプロセス管理を徹底し、IS~FSで一蓮托生になって商談を一つ一つ前身させることに取り組んでいます。

この記事をご覧の皆さんにおいても、ISとFSの連携強化・KPIのモニタリング・商談の基準設定・毎日のフィードバックを駆使して成果達成を目指しましょう!


なお、今回の記事では文字数の関係で割愛しましたが以下の点も重要です。

  • IS架電の際のスクリーニングを実施する方法(いかに商談の質を高めるか)

  • どのような性質のリードを確保するか

  • 社内リソースと外注する業務のバランス

などなど。まだまだ書ききれないことがたくさんあります。SaaSのアウトバウンドに取り組んでいる・取り組む予定の方のお役に立てればと思いますので、下記リンクのX(Twitter)でDMお待ちしております。
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