犯罪被害者向けの弁護士費用援助制度

はじめに

 この記事の概要
・ 弁護士に依頼するお金について、一定の資力以下の方の費用を援助する制度があります。
・ 刑事手続き(加害者に刑罰を求めたりするもの)と民事手続き(主にお金を請求するもの)に別れています。
・ 迷ったり、制度を利用したい場合に電話する窓口があります。

 こんにちは、弁護士の高田です。別記事で被害に遭った方向けの窓口をご紹介しました。今回は、実際に弁護士に相談してみたい、弁護士にお願いしたいけどお金が心配、という方が利用できるかもしれない主な弁護士費用の援助制度をご紹介します。
 実際に制度が利用できるかどうかについては、記事の内容以外にも条件が細かくあります。また、ご相談内容によっては他の制度が使えることもあります。気になったら最後の方に書いてある電話窓口へご相談ください。

刑事関係手続きについて①
(事件直後から使える制度)

 事件後すぐから使える制度に、犯罪被害者法律援助制度があります。
 ・ 被害を警察に届ける被害届や告訴のお手伝い
 ・ マスコミの人との間に入って窓口になる
 ・ 加害者側からの連絡を代わりに受ける、示談の対応をする
 ・ 警察や検察の方との連絡をお手伝いする
 ・ 裁判を傍聴するときご一緒する
 といった、事件直後から裁判が終わるまでの色々なご依頼に利用できます

 傷害、人身事故、性被害など、身体、命、自由又は性的自由について被害に遭った場合を対象にしています。

 法律援助制度は、原則として、お手持ちの預貯金等が300万円以下の方が対象ですが、被害にあった治療費などを控除できることがあります。

 この制度を使う場合、原則的には被害者やご遺族の方は弁護士費用を負担しません。ただ、費用を負担することが相当と判断された場合には、費用を負担するときもあります(例:加害者から示談金を受け取れた時にその一部を負担する)。

 この制度、利用する時の窓口は法テラスですが、実は、日本弁護士連合会が窓口を法テラスに委託している制度です。弁護士でお金を出し合って、弁護士費用を援助する制度を運営しています。
 次に説明する国選制度のように、国できちんと援助してくれる制度に変えて欲しいと思っています。

刑事関係手続きについて②
(裁判になったら使える制度)

 加害者(正確には、有罪の裁判が確定するまでは「加害者と疑われている者」ですが、ここでは説明の便宜のために加害者と表記しています)に対する刑事裁判が始まった後に使える制度に、被害者参加人のための国選弁護制度があります。

 傷害、人身事故、性被害など一定の事件の被害者やご遺族は、加害者の刑事裁判に参加することができます(刑事訴訟法第316条の33)。

 加害者の刑事裁判は、国が加害者の有罪無罪や、有罪の場合にはどれくらいの重さの刑罰を課すかを決めるものですので、「加害者対国」の裁判です。被害者は事件の当事者ですが、刑事裁判の当事者ではありません
 刑事裁判の当事者ではないけれど、事件の当事者である被害者が刑事裁判に関与できるよう、現在は被害者参加制度が法律に定められています。

 刑事裁判に被害者やご遺族が参加するといっても、裁判に馴染みのある方はそうそういらっしゃいません。また、加害者で一定の資力以下の人には国が弁護士を就ける制度があります(国選弁護人)。
 そこで、刑事裁判に参加した被害者やご遺族にも、一定の資力以下の方は国の費用で弁護士を就けられる制度ができました。それが、被害者参加人のための国選弁護制度です。

 被害者側が被害者参加制度を適切十分に利用するための制度ですので、国選弁護士が出来る業務は、基本的に被害者参加制度に係る手続きのみとなります。
 それ以外の業務については、先に書いた犯罪被害者法律援助制度を利用することになります(それぞれの利用条件を満たせば併用が可能です)。

 国選弁護制度は、原則として、お手持ちの預貯金等が200万円未満の方が対象ですが、治療費など一定の費用は控除することができます。

 国選制度は国が費用を負担しますので、被害者側の負担はありません。

民事関係手続について
(お金を請求するときに使える制度)

 被害者側から加害者に賠償を求めたい、お金を請求したいというときは、刑罰ではなく、被害者側と加害者との間の法律関係の問題になります。
 こうした、私人と私人の関係については民事手続きによります。

 民事手続きについては、依頼する弁護士の費用が無くなる援助制度はありませんが、弁護士費用を立て替えてもらい、分割払いにできる民事法律扶助制度があります。

 民事法律扶助制度については、現在の預貯金等の金額だけでなく、月々の収入も一定以下の方でないと利用できません。条件が複雑なので、リンク先の法テラスの表やシュミレーターでご確認ください。

電話窓口、電話相談

 援助制度を利用したい、相談できる弁護士に繋いでほしいという方向けに、法テラスにサポートダイヤルが用意されています。
 また、各地の弁護士会で法律相談や、犯罪被害に遭った方向けの無料電話相談を常時実施しています。最寄りの弁護士会にお電話いただくと良いかと思います。
 繰り返しになりますが、制度の利用にあたっては記事の記載以外にも細かく条件があります。まずはサポートダイヤルか弁護士会の電話相談で確認いただくことをオススメします。

以上

#犯罪被害 #被害者支援 #弁護士費用