怪文書(2022/05/14)

 この最初で最後の人生で、私がすべきことはなんだろうか?できることなら、この社会を改善するための能動的な活動に従事したい。共栄的な活動こそ長期的な幸福が望めることはもう知っているから、利他的でありながらも利己的な生き方がしたい。酷く利己的な生き方は危険だからしたくない。
 未来を見据えて、進歩の見込めることがしたい。ほとんど進歩しない機械的な循環に流されたくはない。過去とほとんど変わらない未来を見続ける悪夢にうなされたくはない。したいこと、したくないこと、と挙げてみても、私がすべきことはなんだろうか。

 恐らく、私がすべきことは、したいことと、したくないことの両方を含んでいる。周りの殆どの人間を観察したことによる帰納的な推測に過ぎないが、多分私もほかの人と同様にそうなるはずだ。自分が例外であることより、例外でないことの方が多いのは当たり前だ。
 とにかく私は最初から抽象的に過ぎる考え方をしてしまった。具体から抽象を見出した方が、後から納得する形になるが、実はこの方が合理化しやすいのではないだろうか。

 専門家になれるほど熱中できない私は、資質のない私は、いつまでもディレッタントのままだ。それでもなお、私は私の最善を完成させるために生き続けるのだろう。心の底の声を拾えば、納得なんて絶対に出来ないけど、どしようも出来ないことは、仕方ないからと諦めるのが合理的だと知っている。
 私は時々、本当に何の才能も見出せていない人を見ると恐ろしくなる。私は、客観的に考えて記憶力や洞察力などは人より優れているから、マシな人生を送ることが出来ている。しかし、それすらも無かったらどうだろうか。人間の価値を測る物差しは様々な種類があるが、どの物差しを使っても平均未満、どころかほとんど全ての価値基準で偏差値30未満みたいな、そんな人間もいる。
 それ以外の人間だったら誰でも代替可能だなんて状況に置かれたら、私は今の私のような精神で生きられる自信がない。そう考えると、私は誰に対しても私の考えを押し付けるべきではない。人には人の、その人に合った生きるための哲学があるのだと、そう思う。

 今日、NHKのニュースで定時制高校のことを扱っているのを見た。そこに登場した男子は、勉強と仕事の両立が大変だと言っていた。彼は懸命に分数を勉強していた。分母と分子が同じだと1になるのだと教えられていた。彼は吉野家で働いていた。朝の8時から、夕方の16時までフルタイムのアルバイトだ。彼は専門学校に行こうとしていた。「就職という選択肢だけではなく、進学という選択肢を知ることができたので、視野が広がった」といった趣旨のことを語っていた。
 みなさんはどう思われるだろうか。彼に比べたらかなり幸運な人生を送っている方たちだとお見受けしますが、どうでしょうか。もしあなたが彼だったら、どのように生きるでしょうか。彼の頭では、どのように生きるかということすら、自分で調べて、自分の頭で考えることすら難しいというのに。

 私は彼らに何か出来るのだろうか。そもそも、何かすべきなのだろうか。貧しいだけでなく、能力まで乏しい人の生活を、平均的な水準まで引き上げることが、本当に社会を改善することだと思いますか。私は直感的にそれは違うと考えています。もっとも、ボトムアップ的に彼らをより改善された状態にすることは正しいと思います。
 公平を求める心は、人間の根底にある感情です。それぞれの能力に、それぞれの働きに見合った報酬が与えられるようにすべきでしょう。勿論、機会は均等にあるべきです。試してみなければ、能力があるかどうかすら分かりません。誰でも自分の能力を高められる環境、その能力を以って挑戦出来る環境の整備は必要です。

 話が脱線してましたね。私が言いたいのは、社会的弱者を見て見ぬふりして、自分の道を歩くのは気が引けるなということですね。一応、格差が拡大して民主主義の維持が最早出来ない状態になる前に手を打つ必要があることだなとは考えています。それでも、本当に底辺で生きている人たちを放っておくことは、治安の悪化を招きますから、早めにどうにかしないとなんでしょうね。
 …これは社会的な秩序を守るための理由であって、感情的には人間一人一人がそういった過酷な状況に置かれて生きているのを見るのは、それ自体全くいい気がしないってことを言いたいんですが、これも言い出したらきりがない、果てしないものなので仕方ないんでしょうね…。

 仕方ない、仕方ないって、諦念ばっかりですよ。ダメですねこれでは。現実ばっかり見てないで、崇高な理想を持たないと。「それでもなお」の精神で、未来志向で人間社会の発展を拠り所に生きる。実現可能なことを段階的に実現する。実現するための能力を絶えず漸進的に修練する。人間には友好的に接する。享楽的に過ぎないよう、禁欲的に過ぎないよう、中庸を尊ぶ。人生を楽しむ。茅野愛衣と結婚する。以上のことが大切ですね。

あれ、結局俺は何をすべきなんだ!?進路とかもっと考えなければ…。

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