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他人から回収するコツ【あれ、どうなった?】

いつも提出してくれないあの人たち

毎月の精算は月初に出してほしいと伝えているのに、いつも出してくれない人がいる。
もう3回も催促しているのに、報告を上げてくれない。
決裁を得るのに必要な書類、ただハンコを押すだけなのに、一体いつになったらもらえるの?

そんな経験、誰しもあると思います。
こんなとき、どうしたらできるだけスムーズに回収すべきものを出してもらえるのか。成功率を上げる原則とコツをお伝えします。

本稿では、「回収したい人」と「提出すべき人」を前提において書きます。事例会話では社内書類を意識していますが、回収したいものは情報でも書類でもお金でも構いませんし、社内でも社外でも、上下関係でも友人関係でも、基本原則は同じです。ご自身の状況に合わせて応用してください。

NG事例:こんなこと言ってませんか?

まずはあちこちNGな架空の事例を出してみます。太字になっているところに注目。あなたも言ったことがありませんか?

(内線コール)
A「〇〇さんですか。先月分のあの書類、まだ出してないですよね。もう2週間も待ってるんですが」
B「え?出したよ、出した出した」
A「いつ出したんですか?」
B「そんな前のこと、もう覚えてないよ」
A「とにかくないものはないので、早く出してくださいよ」
B「用紙なんて失くしたよ」
A「〇〇のシステムからダウンロードできますから、自分でやってください
B「わかったよ…」

(数日後)
A「ちょっとBさん、あの書類まだなんですか?この前の書類も何日も遅れましたよね?
B「うるさいなあ、わかったわかった、今日じゅうに出すよ」
A(ほんとかなあ…)

催促の5原則

他人から何かを回収したいときに心がけたいポイントを、5つにまとめました。

  1. 放置しない

  2. 5W1Hを意識する

  3. 何につまずいているか考える

  4. 気持ちよく出してもらう

  5. 良い行動を促進する

こうすれば回収できる!原則の活用方法

①放置しない

回収しなければならないものがあるとき、最も避けるべき事態が「放置」です。

理由の1つは、出した・出さないの水掛け論になりやすくなるからです。時間が経つと記憶が薄れてしまいますし、郵便事故などの外部的要因があった場合も追及しにくくなります。

もう1つの理由は、放置されてしまうと、提出しなければならないはずの人が「その程度のものなんだ」と無意識に考えてしまうからです。「1か月も大丈夫だったのだから、あと1週間くらいは無視しても大丈夫だろう」というように、どんどん提出から遠のいていってしまいます。

また、「放置しない」には単に時間を空けないことだけでなく、「丸投げしない」という意味も含まれています。
たとえば「用紙をなくした」と言われたら「こちらで印刷してもう一度渡しますね!」、「今日こそ郵便を送ります」と言われたら「回収に伺いましょうか?」などと言ってみましょう。

もちろんできないことは言うべきではありませんが、実際にそうしなければならなくなる可能性はかなり低いので、安心してください。提出者のほうも罪悪感があるので、こちらがひと手間かける姿勢を見せさえすれば「そこまでさせるわけにはいかない」と思い、それまでの引き延ばしがウソのように素早く提出されてくることも多いものです。

②5W1Hを意識する

5W1Hの中でも、回収においては「いつ When」がもっとも重要だと思います。「早く出してください」の代わりに「いつ頃なら出せそうですか?」と相手に期限を切らせてみましょう。案外これ1つでうまくいくこともあります。
「用紙はまだお手元にありますか?保管場所を覚えていますか?」のWhereに関する質問や、「やり方が分からない点がありましたか?」のHowについての質問などは、状況に応じて利用していきましょう。これは③で役に立ちます。

過去を確認する5W1Hも大切です。
①を意識して早めに連絡していれば、「出した」と言われた際「それはいつ頃でしょうか?」「書留ですか、普通郵便ですか?」「どこに置きましたか?」などと聞いても不自然になりません。

なかなか提出できない人の中には「出した出した詐欺」の人たちがいます。本人に悪気がなくても、「出したつもり」や「何となく出したはず」で「出した」と言ってしまうパターンです。パターンの気配を感じたら、5W1Hの質問を使って、できるだけ詳細に「出したときの状況」を思い出してもらいましょう。あくまでも事実関係を明らかにするため、もしかしたら事故かもしれないので、という姿勢で突き詰めていくと、どこかにしまい込んだのを思い出したり、やっぱり出していなかったと言い出したりすることがあります。

③何につまずいているか考える

提出できない人は、どこかでつまずいていると言えます。

「ハンコを押して、渡すだけじゃないか」と思うような書類や報告でも、実はハンコを失くしているとか、しばらく出社の予定がなく在宅ワークであるとか、渡す相手が誰なのかよく分かっていないとか、色々な「つまずきポイント」があるものです。

また、こちらからすれば「何だと?」と思うような理由ですが、つまずきとは言っても、これらのどこかのポイントで「面倒」になってしまって止まっているというのが、実は最大多数だったりします。なので、そのポイントでちょっと背中を押してあげれば、すんなり出て来ることも多いです。

たとえば、「早く出してと言われた電話を切ってから用紙を失くしたことに気づいて言い出しにくく、つい、さらに放置してしまった」というパターン。数日後に「何でまだ出て来ないんですか」と言われてやっと「実は……」と告白。最初の電話の中で「手元に用紙があるか」を確認しておけば、または気がついたときに気軽に聞ける関係や自力で入手できる手法があれば、回避できた事例です。

その人がどこでつまずいているのか確認せず、ただただ「出して」とだけ言っていても、その人の問題や面倒な気持ち、後回し癖は解決しません。
大人なのだから自力でどうにかしろ、というのも一説ではあるものの、今の目標はあくまでも回収することです。回収できさえすれば、少しくらい手伝ってあげても損にならないのでは?

ということで、②の5W1Hも利用しながら、その人がどこでつまずいているかを意識して聞いてみましょう。情報が何もない場合は単に「現在どこまで進んでいますか?」といった質問でも効果はあります。つまずきポイントが見えただけで自分で気がついて取り組む人もいますが、できる範囲で手伝ってあげても良いでしょう。それこそ回収に出向くことや、記入項目について解説すること、自宅に郵送することやメールで再送することなどです。

④気持ちよく出してもらう

私たちのほとんどはおそらく、小学生マインドを持っています。
誰かが出すべきものを出していないなんて、私なんかより偉い人のくせに / 社会人歴が長いくせに / 年上なのに、だーめなんだ、だめなんだ♪ といった気持ちです。
そんな気持ちは、気を付けていないとつい言葉尻に出てしまいます。「出してないですよね、早くしてください」というように。

ところが、目的はあくまでも回収すべきものを回収することにあります。
そのためには、電話や会議が終わったあと、その人が一人になったときに、思い出してもらわなければなりません。

鬼のような怖い担当から矢のように催促がきて、電話を取るたびに怒られる。そんな状況では、人はそのことを忘れようとしてしまいます。「あ~今日は嫌なことがあった、酒でも飲んで忘れよう」では、元も子もありません。
むしろこちらとしては、「今日の担当さんはいい人だったなあ、こちらが悪いのに優しくて……あっそうだ、これ以上迷惑をかけないように、すぐに提出しなきゃ」と思い出してほしいですよね。

ですから下手に出ましょう。ありとあらゆる可能性を考えて、相手を一方的に責めないようにしましょう。

ほんの少し言葉を変えるだけで、印象はかなり変わります。たとえば、
・提出していない→到達していない、受け取れていない
・いつ提出したのか(どうせ出していないだろう、ウソだ)
 →(状況を確認したいので)いつ提出したか記憶していないか
・いつも遅れる→お忙しいこととは思いますが
・早く出して
 →いつなら可能ですか / 実はこちらも〇日には××しなければなりません
というような調子です。

できれば声の調子や表情もできるだけ柔らかく、明るくできるとベストです。
人間は本当に現金なもので、悪いと思っている時にちょっとでも責められると「何だとこのォ」と思ってしまいますが、逆に少し優しくされると「こちらが悪いのに申し訳ない」と思うものです。言葉は悪いですが、そこにうまくつけこんでいきたいものです。

⑤良い行動を促進する

さて、①~④を意識して行動していると、複数回の回収が発生する相手や特定の集団についてはある程度「この人はいつもウッカリで忘れる」「ここで分からなくなって止まっている人が多い」といった特徴が見えてくることがあります。

そこで、分かっていることに対しては先回りをしていきます。個別の支援をする代わりに、全体に対して行うことで、自発的に出したことになる率を上げるのです。
一斉メールや掲示板を使って締切の少し前に「もうすぐ締切ですよ」とリマインドしたり、詳細なやり方のファイルを作成して配布したり、誰でも失くした書類をバレずに再取得できる場所に置いたりすれば、それらが原因で提出しない人の一部は、締切を守って出してくれます。

そしてもし前回は守れなかった人が締切を守って出してくれたり、前よりも短い期間で出してくれたりしたときは、回収すべきものが手元に来た喜びをそのまま表してオーバー気味に肯定しましょう。

全体に対して「〇件の人が期限どおりに出してくれました / 前回よりも〇人多く期限を守ってくれました。ありがとうございました」などと報告するのも一案です。この方法だと未提出者が焦ってもくれますが、提出割合が少なすぎると逆効果なのでその点は気を付けましょう。

個別に伝える場合で、わざわざ「期限通り出してくれて」などと言うと嫌味になってしまうときは、ほんの少しオーバーなお礼でも、何となく伝わるものです。ともかく少しでも早かったことや期限を守ってくれたことに明るい気持ちを伝えていくことで、「ちゃんと出せば気持ちがいい」と思ってもらえれば、良い行動が促進されていきます。

私はこの①~⑤の方法で、最初は何度も督促していた人たちから、期限どおりに出してもらうのに成功したことがあります。
何でこちらが「教育」しなきゃならないんだ、とひねくれる気持ちにならなくもありませんが、何度でも言いますがすべては回収のため。ほんの少しの工夫でお互い気持ちよく期限どおりに回収できるならwin-winというものです。

模範的な事例

では、模範的な督促の事例を挙げてみましょう。

(社内掲示板)
「明日が〇〇の提出期限です。まだの人は早めに対応お願いします」

(内線コール)
A「〇〇さん、すれ違いだったら申し訳ないのですが、昨日が〇〇の提出期限だったんです。こちらに見当たらなくて、一応の確認なのですが
B「あっそうだった、掲示板に出てましたよね。すぐに出します!」
A「用紙はちゃんとお手元にありますか?」
B「あると思います、えーっと……あっ、ありました。まだ全然見られてないや、すみません」
A「年度の変わり目で、お忙しいですよね。いつ提出できそうですか?
B「今日……いや、すみません、これから会議なので、明日なら出せます」
A「書き方は大丈夫そうですか?」
B「大丈夫だと思います」
A「不明なことがあればいつでもお電話くださいね。では明日、お待ちしています」

(翌日)
B「Aさんすみません、これ、昨日の……」
A「あっ、お待ちしていました!すぐに対応してくださってありがとうございます!本当に助かります!

おわりに

①~⑤の方法を使えば、特にたくさんの人から、または頻繁に回収しなければならない場合の負担が大きく減っていきます。時間はかかりますが、期限を守る習慣も少しずつできていくことでしょう。

ただし、この方法は相手と連絡が取れることが前提です。
そもそも居留守を使われていたり、行方不明であったりする場合には、このような小手先の方法では歯が立ちません。様々な調査や足を運ぶなどの方法で対応していくしかなく、度が過ぎれば法的手段なども視野に入れることになります。そうなったらこちらも非常に面倒な思いをします。
居留守・行方不明は放置や相手に嫌われることによって起きやすくなるので、まずは①~⑤を常に意識して予防しておくことが大切です。

とはいえ、どんなに頑張ってものらりくらり、いつまでも出て来ない人や、気を付けていても気軽に「バックレる」人もいます。多くは、提出するのが当人にとってあまり都合が良くないか、利益にならない場合です。
また、あまりに多くの人から恒常的に回収できない場合は、根本的なしくみや設備にも問題があるかもしれません。

ここに記載したのはあくまでも小手先のワザです。小手先と呼ぶにはかなり効果の高い方法ではありますが、それだけですべてが解決する必殺技ではありません。手ごわい場合にはこの方法だけを過信するのではなく、広い視野を持ち、強い手段も使っていってほしいと思います。

明日、1つでも多くの「回収物」が、あなたの手に無事届きますように。

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